メディアグランプリ

情報に追われるあなたへ


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記事:松永 恵(ライティング・ゼミ平日コース)
 
午後11時。会社には私1人が残っている。
パソコンのキーボードを叩く音だけが部屋に響いている。
集中力はとっくに切れ、メールの文章はさっきから先に進まない。
ふと、スマートフォンがブーブーと振動した。
Twitterから更新通知が届いた。
好きなアーティストのつぶやきを確認するため、Twitterを開く。
つぶやきを確認すると、今のトレンドが目に飛び込んできた。
「金曜ロードSHOW」とある。
(そうだ今日は金曜日、放送される映画はなんだろう)
金曜ロードショーとGoogleで検索すると、となりのトトロと分かった。
監督は何という名前だったっけ、宮崎……分からなくて、さらにGoogleで検索してみる。
と、ふいに我に返り、スマホを机にガタン、と投げ出した。
こんなことをしている時間は今の私には、ない。
 
ある会社員の、とある一場面だ。
スマートフォンからの与えられた通知という情報をきっかけに、気になったことを次々に調べる行為は、好奇心を満たしているように思うが、時間はあっという間に過ぎていく。
なんてことはないニュースでも、夢中で関連ニュースを見ているうちに、時間を大きく消費していることに気づき、疲労感で覆い尽くされる。
情報は今、私達にとって疲労をもたらすものになってはいないだろうか。
 
冒頭の「私」は、もちろん私自身のことを指している。
私はかれこれ10年程、web業界で仕事をしている。
パソコンやスマートフォンのサイト運営がメインだけれど、求められるスキルはwebの知識に留まらない。
写真撮影、画像加工、テキスト作成、営業、予算管理、スケジュール管理etc……。
目まぐるしく変わるweb業界に乗り遅れないように、情報には常に敏感でなければならない。
気になる情報は片っ端から検索してチェックするし、Googleのおすすめ記事が、自分の興味ありそうな内容を自動でニュース表示して、色んな事をインプットさせてくれる。
 
仕事は情報のインプットの連続だ。
メールでも資料作成でも、何気ない会話でも、自分でインプットした情報から言葉に、図に、絵にして自分を通じて外の世界に発信、アウトプットしていくことを繰り返す。
知らなかったことは、より深く理解したいし、知る過程で生まれた疑問は、さらに知りたいという欲求にかられる。
 
情報をインプットしていくことは、多くの感情にも接する。
子犬や子猫の動画を見て、あまりの可愛さに心が癒される。
新しいiPhoneが発表となったら、どんな機能があるんだろうとワクワクする。
悲惨なニュースが飛び込んでくると、途端に心は曇る。
情報を追ううちに、喜怒哀楽の感情が自分の中に押し寄せる。
目まぐるしく変わる感情に、自分の感情が分からなくなり、ぐったり疲れきってしまう瞬間があることに、私はいつの頃からか気づいていた。
 
ご飯を食べても何も感じない。
音楽も耳に入ってこない。
本も文字が頭に入ってこない。
 
感情が何も生まれて来ず、ただべったりと、貼り付くような疲れだけが残る。
この正体も、もう分かっている。
インプットが溜まりすぎ、感情が疲労して死んでしまった状態だ。
 
私はそうなったら、インプットを断つようにしている。
一番手っ取り早いのは、スマートフォンの電源を切ることだ。
ここ最近は、土日になるとスマートフォンの電源を切る。
仕事のメールも見ないし、SNSもwebも見ない。
更新通知もニュースも、私の意思とは関係なくやってくるので、こちらから距離を置く。
 
そして外に出て映画館へ出かける。
暗い空間の中で目と耳だけを澄まし、映像に入り込み、主人公に感情移入する。
感情に引っ張られて、いつの間にか自分も感情を取り戻していたりする。
そうして引っ張ってくれた感情が、私の感情を呼び起こす。
 
正しく笑い、正しく泣けるようになっている。
映画館を出るころには、喜怒哀楽を思い出し、疲れはなくなるのだ。
 
私達は日々、インプットしている。
情報が溢れる世界で意識しなくても、メールや更新通知で情報の方から、自分を追いかけてくる。
 
感動することや悲しいと思うことが少なくなった。
それは情報に追われ、感情が疲れてしまっている合図かもしれない。
そんな時はスマートフォンと距離を置いて、外に出かけよう。
映画でなくてもいい。
山に行って新鮮な空気を吸うのでもいい。
公園でぼーっと空を眺めるのでもいい。
 
情報に追われない世界で、深呼吸して、ゆっくりと自分の感情に向き合ってみよう。
画面の向こうではなく、いつもの日常には、もっと驚きも発見も溢れているはずだ。
 
 
 
 
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2019-11-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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