発酵食品を仕込むことは未来を創ること
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記事:にしもとまり(ライティング・ゼミ平日コース)
『発酵食品』と聞いて、どんなことを思うだろうか。
納豆や味噌やヨーグルトなどの、発酵食品の代名詞のような食べ物を思い浮かべる人もいれば、身体にいいものという効果や働きを思い浮かべる人もいるだろう。
私にとっての発酵食品は、育てるものであり、未来を創ることだ。
初めて発酵食品を作ったのは3年くらい前。
米糀と塩で、塩糀(まろやかな塩味の調味料)を作った。
気温にもよるが、塩糀は4日から1週間くらいでできあがる。
その間、毎日仕込んだタッパーを開けてはかき混ぜるのだが、少しずつ発酵が進んで様子が変わっていくことに、楽しさを感じた。
その後、初心者ばかりが習いに行く教室で教えてもらいながら、初めて3キロの味噌を仕込んだ。
料理というより、粘土遊びに近いような作業が思いのほか楽しくて癒された。
仕込んだ味噌を自宅に持ち帰り、発酵の様子を見守るのだが、少しずつ、本当に少しずつ様子がかわっていく。
これがまた、毎日楽しみで仕方なかった。
しばらくして私は、自分一人でも作ってみようと、味噌作りに必要なものを買い集めた。
教室でもらった、作り方のプリントとにらめっこしながら、また3キロの味噌を仕込むことに成功した。
そして、その味噌を教室で作った味噌の隣に並べたときに、「あっ!」と驚いた。
全く色が違うのだ。
もちろん毎日楽しみに眺めていたので、少しずつ発酵が進んで色が濃くなってきていることには気づいていた。
でも、仕込みたての味噌を隣に並べると、「こんなにも変化していたのか!」と、これまで以上の驚きと喜びでいっぱいになった。
そして、味噌ができあがって食べたときのおいしさも含めて、私は発酵食品を仕込むのが大好きになった。
あるときは納豆を、またある時はヨーグルトを、いつしかポン酢も自分で仕込むようになった。
発酵食品を仕込んでできあがりを待つことは、ペットを育てることと似ている。
仕込んでから、だんだん発酵して変化していく様子が、仕込んだものが育っていく感じがして、かわいくなってくる。
おとなになるまで(できあがるまで)、ちょっとしたトラブルが起きることもあるが(カビが発生する等)、その時はまたしっかりお世話をして元気に過ごせるようにする。
できあがったときは、それまでの時間を振り返ったり、仕上がりを比べてそれぞれの良さを感じたりするのも楽しみだ。
いろいろなものを仕込んできたが、その大体が数ヶ月でできあがるものだった。
そんな時、ラッキョウの漬け方を教えてもらう機会に恵まれた。
ラッキョウ漬けといっても、甘酢漬けではない。
塩だけで漬ける、本来の日本伝統のラッキョウ漬けだ。
その時、「漬ける期間は5年です」と言われた。
これまでとは単位が違いすぎる発酵期間に、思わず笑ってしまいそうになった。
甘酢漬けとは違って、できあがるのに1年、3年でまろやかでおいしくなり、5年たてば漢方薬並みに身体に働いてくれるラッキョウ漬けができるらしい。
今仕込んでいるものを口にするのは5年後。
自分は5歳年齢を重ねているわけだし、きっと毎日の過ごし方も今とは変わってきているだろう。
夫婦仲良く暮らしているかな?
飼っている犬たちも、おばあちゃんになっているな。
そんなことを想像していると、とても不思議な感じがする。
発酵食品を仕込むときは、1か月後でも5年後でも、自分も家族も元気にそれを食べるという未来が約束されているかのように仕込んでいる。
できあがる頃にも元気で、大切な人と一緒に過ごせていることの願いが、知らず知らずのうちに、仕込むという作業の中にはあるのではないかと思う。
今は何でも手軽に買える時代だから、発酵食品を仕込むなんて時間もかかるし面倒だと思うかもしれない。
でも、大切な人とそれを一緒に食べることを想像しながら、ときには面倒な作業をあえてしてみるのも悪くない。
発酵食品を仕込むことは未来を創ること。
未来を創る楽しみを、たくさんの人に知ってほしい。
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