メディアグランプリ

孤独からの解放


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
 
記事:鈴木ゆうみ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
日曜夕方16:30。
 
床がざらついている。
もうこのお煎餅の封を切るのは何個目だろうか。
「パリンっ」
という、お煎餅を齧る軽快な音、落ちるお煎餅のかけら。束の間の静寂。しかし、この静寂も長くは続かず、すぐに泣き声に変わる。そしてまたお煎餅の封を切る。
 
おもちゃは部屋中に散乱し、流し台にはお昼の洗い物が残っている。
お風呂も沸かしてないし、夕飯の献立も何も頭に思い浮かばない。
 
ただただ子供たちが寝付いて一緒に横たわる自分にタイムスリップできないか。
もしくは時間よ、止まってくれないか。10分だけでもいいから、私をママから解放してください。
 
……
 
「じゃあ、行ってくるよ! 子供たちをよろしく頼むね。」
土曜日の朝、夫はそう言って家を出た。
我が家は、私、夫、3歳の息子、1歳の娘の4人暮らし。
平日子供たちは保育園に預けており、夫婦共働きである。平日の夫は比較的早く帰宅してくれており、夕飯を4人揃って食べられることも多い。保育園の送り迎えも積極的にやってくれているし、家庭内の家事もほぼ平等にやってくれている。ただ訳あって、週末に留守にすることも多い。
 
冒頭の私は、まさに夫が留守の週末、日曜の夕方である。
 
私は孤独だった。
 
「マーマ、ママってば! 話し聞いてる?」
「ママー、抱っこして〜」
「ママー、ゼリー食べたい〜」
「ママー、粘土してもいい?」
 
もうなんでもやってくれ。勝手にやってくれ。
 
「ママ、ママ言わないで。」
 
……
 
「ママ、ママ言ってくれる時期なんて、あっという間に終わっちゃうわよ! 特に男の子はすぐに、おかんうざい。とか言い出しちゃうんだから! こんなにママっこであなたは幸せね!」
 
前日のスーパーのレジでおばさんに言われたこの言葉がふと蘇る。
言われた時は笑って「そうですねー」 なんて返答したのに、今はそんな風に全く思えない。
ただただ、「ママ」という自分から逃げたかった。一人になりたかった。
 
ワンオペママなんて世の中にたくさんいるのに私はたった土日さえも子供達と楽しく過ごせないのか。
主婦の人は1日中子供と一緒にいて、自分の時間なんてもてないっていうのに、私は平日好きな仕事をしているじゃないか。
0歳児から保育園に入れて働くなんて子供たちに寂しい思いをさせているのに。
 
次々と溢れてくる思い……
こんな風に思う私は「ママ失格」に違いない。
 
そうして私はまた自分を孤独にした。
 
そうは言っていていても、時間は刻一刻と進んでいく。時間がたてば子供たちはお腹がすき、眠くなる。そうなってからでは収拾がつかないことは分かっている。
時計が17:00に変わった瞬間に、自分の気持ちに蓋をして、怠い身体にムチを打ち、夕方〜夜の家事育児を済ませ子供と一緒に布団に入った。
 
どうして私はこんなにも孤独なんだろうか……
 
そんなことを考えながら、次に気がついた時、携帯の時計は深夜2:00だった。
知らない間に帰ってきた夫も同じベッドに寝ていてやっと終わったワンオペの時間にふと我を取り戻した瞬間、自然と涙が頬を流れた。
 
「わたし、頑張ったなあ……」
 
この言葉が私を救う。
 
開き直ると、私は完全ワンオペはできない。だから、全国転勤の夫が単身赴任をするという選択肢は我が家には無いし、持ち家も持たない賃貸生活を選択する。帰宅が遅くなって家族揃ってご飯が食べられないような仕事の選択もしないし、その自分たちが選んだ仕事で得られた収入の中で出来る生活をする。
 
これが私たち夫婦の選択であり、私の選択である。
何がいい、悪いではなく、自分と家族の為にそういう選択をとっているだけのこと。何が言いたいかというと、選択をするのは自分であり、その選択は人と比べるものでは無いということ。選択は私を孤独から解放してくれるのである。
 
だから私は、ワンオペをできる限りしない、という一つの選択の中で、ワンオペをした日の自分は最上級に褒めることにする。それがどんな時間であろうと、まずは頑張った自分を褒める。そして出来るなら夫からの「お疲れさま」の言葉に期待もしたい。
 
世の中には数えきれない数の仕事があり、世のお父さん方は一家の主人として一生懸命働いてくれているだろう。上司とも得意先とも上手くいかなかった日、帰宅後の奥さんの機嫌まで悪いと「いい加減にしてくれよ……」と思うかもしれない。でも仕事には評価がある。上手くいかないを乗り越えると、お給料が手に入り、ボーナスもある。そして、毎日帰宅すると「おかえり、お疲れ様。」と言ってくれる家族がいる。
「主婦業も仕事だ」と言われることも増えた現代であるが、誰にも評価されることがなく、もちろんお給料だってもらえない。人を育てるという、尊く責任のある重要任務であるにも関わらず……
だから、せめてお父さん、ママにも一言「お疲れ様、ありがとう」の言葉をお願いします。
 
世界中の「ママ」へ
あなたの選択はあなたを孤独から解放してくれていますか?
今日の自分を褒めてあげていますか?
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 
http://tenro-in.com/zemi/102023
 

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2019-11-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事