メディアグランプリ

この世界では演技しないと生きられない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:伊藤 千里(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
この世界では演技しないと生きられない。
私はかつてそう思っていた。
 
私はいままでいろんな役を演じたことがあるが、優等生役が多かったように思う。
 
学年で成績が一番の優秀な生徒の役
学校の先生に対して、大人しく従順な生徒の役
親の言うことをよく聞く子供の役
頼まれたことを断れない友達の役
嫌なことを嫌だと言えない女の子の役
「人の役に立つ素晴らしい仕事をしている」と思われるための警察官の役
 
演技から解放されるのは、自宅の中でも自分の部屋だけだった。
学校や職場、人と会うイベントから帰ってきて、自分の部屋に入ると、ものすごく疲れていることに気がつく。私はその原因を「体力がないから」だと思っていたのだが、あるとき「体力の問題じゃなくて、ずっと『演技している』から疲れてしまうのだ」ということに気がついた。
 
だから、できれば一生、自分の部屋にいたいと思ったこともあったのだけれど、「ちゃんとした社会人」を演じなければいけないので、それは一度もしたことがない。
 
思い返せば小学生の頃から演技ばかりして生きてきた。お金がもらえるわけでもないし、何かの賞にノミネートされる可能性もないのにだ。
毎日、自分の部屋にいるとき以外はずっと演技して生きてきた。
 
なぜ演技していたかというと、そうしないと誰も自分のことを好きになってくれないと思っていたからだ。自分の部屋にいるときの私のままでは、私は誰にも愛されない。
だから、この世界では演技しないと生きられない。
私はそんな世界に住んでいた。
 
1年半前、私はある女の子に出会った。
そして、その出会いは「演技しないと生きられない世界」から脱出するきっかけになった。
 
彼女との出会いは、メガネだった。
私は目が悪いので、今までメガネをいくつも買い替えてきたのだが、それまで自分に似合うメガネに出会ったことは一度もなかった。
だから一度、プロに頼んでみようと思ったのだ。
 
知人の紹介でやってきたファッションコーディネータは、同じ年の女の子だった。私は彼女といくつかのメガネ屋をまわり、とてもステキなメガネを選んでもらった。メガネのこと以外にも彼女とはいろいろな話をしたのだが、私はそれで彼女のことがとても好きになった。
 
彼女は、ある「能力」を持っていた。
 
買い物が終わったあと、彼女の能力で私を変えるためのレッスンをしたいとの提案を受けた。彼女の目にうつる私が、とても疲れていて、辛そうに見えるから……というのだ。
とても怪しい話に聞こえるが、彼女をとても好きになっていた私は、ふたつ返事で彼女のレッスンをお願いすることにした。
 
彼女がレッスンで教えてくれたことは、びっくりするくらいシンプルなことばかりだった。
 
自分を一番大切にする
嫌いなこと、なんとなくやっていることをどんどんやめる
好きなことだけする
自分の心に正直になる
そして、もう演技はしなくていいのだと教えてくれた。
 
初めはとても怖かった。すべて、今まで私が生きてきた世界の常識ではありえないことだったから。この世界は演技しなければ生きられないと思っていたのに、それをするなと言われたのだから、「死ね」と言われているようなものだった。
 
でも、私は彼女を信じ、教えてもらったことを素直に実行していった。
 
そしたら世界が、変わり始めた。
 
「このままでいいのかな……」という漠然としたもやもやがなくなった
人に心を許せて、そのままの自分でいられることが多くなった
演技しなくても、生きられるんだと実感した
人と会って疲れるということがなくなった
そして、毎日いい気分が続いて、なんでもない日々が幸せだと感じるようになっていった
 
いままで私はこんな世界に住んだことはなかった。
 
彼女が持っていた能力、それは「コーチング」の能力だった。
コーチングは、ビジネスにおいて目標達成を支援するためのものというイメージがあるが、なにもビジネスだけに限らない。だって私の悩みは、ビジネスとは全く興味がなかったのだから。でも、彼女はコーチングの能力で私の世界を変えてくれた。
 
彼女が私を今の世界に連れてきてくれた。
きっかけは「メガネ」だった。それはまるで「1Q84」の首都高速、池尻大橋の非常階段のように、私を違う世界に連れてきてくれた。
 
私が以前にいた世界では演技しないと生きられなかった。
でも、今、私がいる世界では、私は私のままで生きられる。
自分を受け容れている正直な私で、私は世界を生きている。
 
最近、私もコーチングの勉強をはじめた。
その能力を使ってビジネスをしている人もいるそうだが、いまのところ、私はそのつもりはない。
ただ、私がこれから関わる人に、世界を変える「メガネ」を渡せるようになりたいと決めている。
 
 
 
 
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2019-11-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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