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あなたに期待しているよ


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【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:つちやなおこ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「お弁当出しといて!」
「お箸と水筒出して!」
 
もう、毎日、毎日、何度言えばいいのだろう。
放っておきたいのだが、それだと、結局、自分にかえって来てしまう。そう思うと10回のうち、1回でも響けば御の字だと、結局、言ってしまう。
 
仕事が終わってからの第2ラウンドは、とにかくストレスフルだ。
 
こちらの都合では、子供はなかなか動かない。
「ガミガミ言うのも疲れるわ」
「じゃあ、言わないで」
一蹴される。
 
もっと効果的に声かけしたい。
そう思いながら、なかなか立ち止まれない。
日々、流されている。
 
そして、今、仕事の方でも苦戦している
 
この春から上司が変わった。
とにかく全部管理したいタイプで、先方に直接、連絡を取らせてもらえない。
任せてもらえない。
私はどんどんやる気を失ってきている。
 
思えば、前任の上司とは仕事をしていて、嫌な思いをしたことがない。約15年下にいて、すごいことだと今更ながら思う。
 
当時はそれが普通で、全く気づいていなかったが、今、こんな状況になって一番思い当たるのは、部下を対等に扱い、敬意を払ってくれていたなという事だ。
 
「やっといてくれる?」
「任せていい?」
そんな言葉に乗せられて、気持ちよく仕事していた。
任せてもらえるなら完璧にやろうと意欲をもって仕事をしていた。
 
私は秘書なので、部下がもってくる企画を検討する場面にいつも同席するが、絶対に内容を全否定しない。意図を述べさせて、必要ならこうしてみるとどうだろうと方向性を変える提案をする。反発された場合は無理強いしない。じゃあ、まあそれでやってみようかと後押しする。
 
いい結果の報告には、
「すごいじゃない、さすがだね」
「面白い!」
うまく事が運ばなければ、また議論する。
ものすごく根気がいる。
 
でも、最初は、書類が書けない、意見がまとまらない、やる気のない部下たちが、3年目には、驚くほど成長する。
当たり前の流れのようで、うちだけ成果がでていたのは、きっと偶然ではないのだろう。
 
前任の上司はまるでスイミングスクールのコーチのようだ。
最初に泳ぎ方を説明する。
その後は何度も泳がせる。
コースから外れたり、フォームがまずい場合は、プールの中でその都度、修正する。
頭に入ったかどうかはまた泳いでみないとわからない。
また違えば、根気強く修正する。
その繰り返しだ。
 
そして、できていれば、わかりやすく伝える。
今度はヘルパーなしにしようか。
次回から2組だよ。
 
この言葉に自信をつけていく。
泳ぎを好きになり、のびのびと自由に泳ぐようになっていく。
 
心理学用語では、「勇気づけ」というらしい。
しなければならないという義務を負わせるのではなく、期待しているよと勇気づける。
 
子育てに生かすなら、これだろう。
 
子供に期待をかける。
「任せていいかな?」「お願いしていい?」
「ありがとう、助かったよ」
 
いざ、意識して過ごしてみると、うまくいく時と行かない時がある。早くやってほしいと焦って言葉をかけるとその気持ちを見透かすように反発される。子供にも子供のタイミングがあるんだろう。私達の都合も尊重して!と全力で訴えるかのように反発する。でもこちらが少しでも、相手を尊重して、まずはおやつを一緒に食べたり、話しを聞いたりしたあとに声をかけるとうまくいく。機嫌がよくなるというよりは、まずは自分たちのことを考えてくれたということに、子供が応えてくれているような感じだ。
ただ、子供たちとかなりしっかり向き合って見ていないとできない。思いの外、時間を取られる。でも、その分、手応えはある。
 
そういえば、前任の上司はとても業務量が多かったが、決断が早く、メールでの問い合わせは即、返信するので、外からは意外がられるが、結構ひまな時間があった。そして、その時間は職場内を散歩するように、ぐるぐると歩き回っていた。業務時間の1/3くらいは散歩していた気がする。特に声をかけるという訳ではない。ただ、見ていた。
 
よく相手を見ている。
だから、信頼することができたのかもしれない。
だから、尊重してくれていたのかもしれないと思う。
 
ある本に、ビル・ゲイツの寄付活動について書かれていたものを読んだことがある。
彼の母親が彼に子供の頃から常にかけていた、
『多くの物を与えられている人には、多くのことが期待される』という言葉。
彼は、この言葉通り、多くの物を与えられている人の1人となり、寄付活動を通じて多くの期待に応えた。
 
人は期待されて、能力を発揮する。
それには、まず、相手をよく見ることが大事だ。
その相手の立場に立って、何を考えているのかを見る。
そして、声掛けは効果的に、根気強く。
 
「あなたに期待しているよ」
 
 
 
 
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2019-11-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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