メディアグランプリ

螺旋を渡す 〜逓増する人類のために〜


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:鵜木 重幸(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
「これは、シンクロニシティ(意味のある偶然一致)か?」
 
何故こんなことが起こるのだろうか? 本当に不思議だ。
全く関連の無い、業界も業種も異なる二人から、同じタイミングで、同じ様な内容の話を聞く、そんな機会があった。
 
その二人とは、第一線でご活躍中の超一流人。 既に多くの実績を残している。
 
一人は、外科医師。
「私は自分自身では医師と言うより、職人だと思ってやってきた。
だから、医師よりも、様々な分野の職人や匠が好きでした。
でも、今年で65歳。
今は、自分の技術をどの様にして、正しく伝えていくか……
その伝承方法に興味関心が移っている」
 
もう一人は、多角化経営で大成功している経営者。
「会社を大きくしようとガムシャラにやってきた。
従業員も増え、その従業員からも感謝され、良い会社に育ったと自負している。
ただ、60歳をとうに超え、いつまでもこのままで良いのかと悩んでいる。
息子への継承を考えているが、どの様に伝えたら良いか……」
 
二人の共通の悩みは、今まで培ってきた技術やノウハウの継承であった。
将来にわたって、生成発展し続けるために……
 
私は50代前半のサラリーマンである。
特別な資格がある訳でもなければ、会社経営者でも無い。
こんな私が、何故このタイミングで、この話に反応したのか?
自問自答してみた。
 
反応した点は二つある。
一つ目は、自分の現状を客観視し、
「自分が属している組織の、自分がいなくなった後の将来」
を見据えている点である。
 
「自分がいなくなった後」 これを考えている人は、意外と少ないのではないだろうか。
特に、サラリーマンの世界では……
 
人生100年時代、年金2000万円問題、70歳雇用延長など
まるで、いつまでも現役で有り続けることを要求されているサラリーマンの世界。
これでは、技術やノウハウの伝承を考える余裕はないであろう。
 
伝承している場合ではない。 むしろ、自分が現役で活躍しなければならない。
伝承することによって、自分のポジションを奪われては、何をしているか分からない。
これが、サラリーマンの本音では無いだろうか。
 
とは言え、人間には、誰にでも、衰えというものがやって来る。
何も身体的影響で引退するスポーツの世界だけではない。
サラリーマンの世界でも、若手に譲るべき時が必ず来る。
ただ、スポーツの世界より遅いだけである。
 
自分のことは、自分が一番良く知っている。
ベテランになれば、組織全体を見渡す眼力もついている。
組織は、その成長度合いにより、求める人材が異なってくる。
今の組織に必要な人材はどの様な人か、実は、全体俯瞰できるベテランは一番わかっている、自分がそこに必要なのか、と言うことも含めて……
 
もはや自分よりも若手の方が相応しい。
そう判断した時が、継承のタイミングであろう。
 
二人の言葉に反応したということは、私が潜在的に思っていた事が、顕在化したからかもしれない。
 
二つ目は、「技術、ノウハウの伝承」についての課題認識に反応した。
 
ある程度のことは、言語化、文章化、マニュアル化できたとしても、微妙なニュアンスまでは有形資産として残すことは難しい。
何も職人、匠の世界だけでは無く、この事は、どの世界のも存在するだろう。
有形、無形含め、どう伝承したら良いか?
 
私は、山本五十六さんの言葉を思い出した。
 
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、誉めてやらねば、人は動かじ
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」
 
先ずは自らが実践する必要がある。
という事は、自らが衰える前までに、継承を完了させよ、とのことだ。
衰えてからでは、継承したいレベルで、「やって見せる」事ができない。
 
誰でも初めから上手くする事はできない。
任せた時のバックアップも、自らが衰えてからではしんどいであろう。
バックアップは、自分でやるよりも多くの労力が要るものだ。
 
外科医、経営者、二人の言葉に反応したという事は、私自身も、「技術、ノウハウの継承」を真剣に考える時が来たのかも知れない……
 
人類の歴史を鑑みれば、その成長の軌跡は、バトンリレーの様なものであろう。
 
私が、現在の技術レベル、ノウハウを所有しているのは、私にバトンを渡してくれた、多くの先輩たちのおかげである事に疑いの余地はない。
しかも、客観的に見ても、その技術レベルは、受け継いだものより確実に上がっている。
先輩は、同じことをしている様で、実はレベルが上がっている、「螺旋のバトン」を渡してくれたのだ。
 
如何なる分野でも、時代とともに、そのレベルは確実に向上している。
それは、歴代の先輩たちが「螺旋のバトン」を手渡してくれたおかげであろう。
 
自分が今、握りしめているこのバトンを、いつの日か、誰かへ、渡さなければならない時が必ず来る。
その時は、「螺旋のバトン」として渡したいものである。
そのことが、歴史に爪痕を残す、生きていた証、と言うことになりはしないか。
二人の言葉に反応した、私自身の総括である。
 
 
 
 
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2019-11-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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