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メディアグランプリ

AMラジオに恋して


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:エトミワ(ライティングゼミ平日コース)
 
 
「気持ち悪い」と思われること覚悟で書くのだが、私に長年彼氏がいないことの理由のひとつは、ラジオが好きすぎることなのではないかと思う。
 
さすがにラジオ=彼氏とまではいかない(と思いたい)けれど、ラジオは私にとってもはや生活の一部となっていることは確かで、豊かで知的で楽しい、めくるめく世界を提供してくれる大きな存在であることは確かだ。今日はその魅力について話をしたいと思う。
 
そもそも、ラジオを聴くようになったのは、2011年ごろ。皮肉にも当時好きだった男性が放送局の方で、AMラジオの営業マンをしていたことによる。彼が私に、ラジオの魅力を滔々と語ってくれたことから、私は少しずつ聴く習慣を持つようになった。
 
最初に教えてもらったのは、TBSラジオの「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」という伝説的カルチャー系音楽番組。映画や本、ヒップホップ、お菓子、文房具などありとあらゆるカルチャーがとんでもない情報量で語られながらも、テイストは軽やかでユーモアたっぷり。その出会いは本当に衝撃的で、この番組をきっかけに映画や本をたくさん知るようになった。
 
特に面白かった企画の一つは「ブルボン総選挙」で、ルマンドやアルフォートなど、お馴染みのブルボン製品にリスナーが投票するものだったが、ロングセラーだけにリスナーのブルボンへの熱の入れようはすさまじく、たかがお菓子とは思えないスリリングな展開が巻き起こっていた。
 
これまで大学受験の時に深夜にオールナイトニッポンを聴く程度で、ラジオとはほぼ無縁だった私にとって、こういった趣向を凝らした企画の数々は刺激いっぱいで、ラジオを教えてくれたその男性とはあっけなく関係が終わったにも関わらず、ラジオとの関係は日に日に増して本格的に続いていくのだった。
 
そして8年後の今、私が現在ルーティンで聴いているラジオは「アフター6ジャンクション」「安住紳一郎の日曜天国」「荻上チキセッション22」「たまむすび」「伊集院光とらじおと」「爆笑問題の日曜サンデー」「オードリーのオールナイトニッポン」「問わず語りの松之丞」「Action」「生活は踊る」「佐久間宜之のオールナイトニッポン」など10番組以上で、ほかのことにはてんでルーズな私だが、ラジオだけは律儀に毎日・毎週欠かさず聴いている。ちょっと異常かも……と思うけれど、私自身「彼氏がいない理由のひとつなのでは……」と思っているくらいなので、そこはご容赦願えればと思う。
 
実際、朝起きて最初につけるのはラジオ(厳密に言うとスマホのradiko)で、仕事をしているときも、車で運転しているときも、料理をしているときも、寝るときも、お風呂に入っているときさえ聴いているのはちょっと異常だと思うが、それほどまでに熱量が変わらないものは私にとってほかにはない。
 
そして、ラジオを聴くことで得るものはとても大きい。一つはもちろん情報であり、以前、会社を辞めて病んでいたとき、神田松之丞がラジオで、新婚旅行スペイン巡礼をしたという話を聴いた私はとても興味を持ち、その半年後、実際にスペインまで800㎞の巡礼に出かけたこともある。
 
また、番組タイトルを見ておわかりのように、それぞれのパーソナリティは、「喋りのプロ中のプロ」であり、彼らの話を聴くことは、プロの瞬発力や、他者への受け答え、言葉選びのセンス、ひらめきなどを「日常会話」に近いトーンで聴けることでもある。これは私にとってすごく大事なポイントだ。つまり、知識だけでなく、人とのコミュニケーションについてもラジオは教えてくれるのである。
 
だが、すべての事象と同様、ラジオを聴くという幸せな行為にもまた、悲しい側面も含まれており、長年聴いていると時折ショッキングな出来事にも少なからず出会う。一番ショックなのはやはり大好きな番組が終了するときで、最も悲しかったのはジャズプレーヤーの菊池成孔がパースナリティを務める「粋な夜電波」が1年前に終わってしまったときだ。
 
この番組から教えてもらったことは数知れずなのだが、菊池氏が放送で語った「フレッシュでいる限り、人間は自滅しない」という言葉は長らく私の支えになったもののひとつであり、最終回は明け方にもかかわらずリアルタイムで聴いて、しみじみ涙がでた。毎週欠かさず声を聴いていたひとがいなくなってしまうというのは、とても寂しいことだった。
 
最近もショッキングな出来事は起こっている。ちょうどおとつい、夜中に家での仕事が終わり、お風呂で大好きな「オードリーのオールナイトニッポン」をリアルタイムで聴いていたところ、急に若林さんが「入籍した」と言い出し、私はそのまま湯舟に沈んでしまいそうになった。
 
TVだけ見ていたらこうはならなかったかもしれない。しかし、ラジオはパーソナリティとの距離が近いメディアなので、なんだか「気心知れた存在」のように思ってしまいがちな分、一瞬だが失恋に似た感情もラジオによって味わうこととなったのだろう。
 
マクルーハンの有名な「メディア論」でも、ラジオはTVや新聞よりも「ホットなメディア」つまり、受け手との距離が近いメディアに分類されているが、これは私自身すごく実感することだ。見えない電波はとても頼りないけれど、そこで築かれる関係性はわりにホットで、ラジオは今日も、つながる喜びと刺激的なスパイス、そして多少のほろ苦さをもって私のなんの変哲もない暮らしを、彩ってくれるのである。
 
 
 
 
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2019-11-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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