メディアグランプリ

謎すぎる「壺蒸しスープ」を飲んだら!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:川島智賀(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「若返る薬膳スープがあるらしいよ!」
 
こう聞いて私は、中国の山奥の斜面にひっそりと生える、それはそれは取りに行くのも命がけの、皆がどんなことをしても手に入れようとする、そんな薬草で作った不老不死のようなものを想像した。
ちょっと大げさに言ってしまったが、不老不死でなくても「若返り」という言葉には反応してしまう年頃なのだ。若くしていたい、若くなりたい、若く見られたい、そんな年頃なのだ。
 
そのスープを飲もうと、薬膳料理の店に出かけた。
薬膳というと、アンチエイジングや身体を中から整える養正食と言ったところだが、仕事の疲れやストレス、更年期障害と日々の戦いに心をすり減らしている自分を、ちょっと癒してあげたかった。そして若返られるなら尚いいなと思っていた。
 
そのお店に連れて行ってくれた人は確か「王妃のスープ」と言っていた。なんて魅惑的なネーミングなのだろうと思い、すっかり自分も王妃になれるような気持ちでいたら、それは通販で販売している「若返りスープ」で今日これから飲むのは、「壺蒸しスープ」と言うアンチエイジングではあるが、若返りを謳っているわけではないらしい。
 
「なんだ~!」
 
どうしても若さにこだわる自分と、早とちりの自分が嫌になる。
いっそこの早とちりが治るスープならいいのに……
 
運ばれてきた料理は、冬に向かって滋養強壮と免疫力を上げるためのコースとなっていて、「壺蒸しスープ」はそのメインだった。本当に小さな壺に入った謎めいた様相だった。
何が入っているのかというと、豚肉・金華ハム・干し貝柱・白キクラゲ・茶樹茸・紅参・ナマコ・フカヒレ・牛アキレス腱・鶏肉、と宝のような具たくさん。
 
レンゲで奥深い壺の中を掘り起こしていく、
紅参は高麗人参で「肺」を強化する。薬膳キノコは白キクラゲと茶樹茸で豚肉・フカヒレとともに「腎」を強化する。ナマコは粘膜を強化して病気に負けない身体へと導く。
 
熱々のスープを一口飲んだ。
それぞれの具材からしみ出たエキスが壺の中で一体化して、まるで小宇宙のような薬膳の融合が成立している。調味料は一切使っていないという素材の持つ味が身体のなかの邪気を沈めてくれそうな、まろやかで深い味わいだった。
また「衛気(えき)」という、人体の表面にバリアを張って病気から身を守る「気」のパワーを強くするとも言われている。
 
そんな薬膳料理を今回食べてみて、薬膳は美術館のようだと感じた。
一つ一つの食材が持つ栄養や効能が、美術館に飾られている絵画のように、描かれるタッチによって印象や感じ方が変わる。癒されたりエネルギーを貰えたりする。画家の歴史による、その持ち味を感じることで、一片のストーリーが見えてくことがある。そんな時、自分も頑張らなきゃ! と素直に思えることがある。
印象派の代表、ゴッホやルノアールには華やかさや力強さがあり、日本画家の横山大観には、繊細さが感じられる。もちろん見る人により捉え方が変わるが、心を豊かにしてくれる絵画鑑賞は、身体にも良い働きをしてくれそうで、薬膳と非常に近い気がする。
 
ストレス社会と言われる現代において、自分の身は自分で守らなければいけない。上手な気分転換、ストレス発散法が必要不可欠となってくる。「未病」という言葉にもあるように、まだ具体的な症状が出ていなくても、身体に溜め込んでいる老廃物やイライラまでも外に排出することが大切になってくる。
薬膳は、栄養・効果・色・香り・味・形、によって必要なものを補給したり、要らないものを排出する。
 
それから食事は本当に大切で、わざわざ薬膳料理店に行かなくても、豆腐にショウガを乗せたものや、お刺身に大葉とワサビで薬膳になる。疲れていて、ついつい簡単に済ませられるインスタント食品や加工食品に頼っていた自分を猛省した。これからは、なるべく旬の食材や素材そのものを食べるようにしたい。食品添加物まみれのものを食べていると、身体の機能に異変が起きるだけでなく、心の動きや脳にまで支障をきたすようになるからだ。未来の自分のために今の食生活をちょっと見直して、どんなものを食べているのか意識していこうと、改めて思った。
 
「壺蒸しスープ」を飲んだら、身体がポカポカして額に薄っすら汗が滲む感覚があった。身体の中で代謝が進み、細胞が入れ替わっている気がした。一緒に出かけた仲間たちと会話が弾み、楽しい時間を過ごせた。美味しくて身体に良いものは、こんなにも人を幸せにする。
 
 
 
 
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2019-12-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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