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昔ながらの小さな家具店が全国からお客様が来るインテリアショップになった理由

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事: 椿(ライティング・ゼミ 特講)
 
 
「うちの子は普通の家具が使えません」
 
1997年の初春、我が子のために新入学の机を探しているというその女性は新潟の小さな家具店にいた。
2人のお子さんは小さい頃からアレルギーで、市販されている新品の家具を使うと目がチカチカしたり、喉が痛くなったりして、使い続けられない。
 
「でも、せっかく一年生になる時にどうしても机を買ってあげたいのです。他の子どもたちと同じように」
 
安心して子どもに使わせることができる机をあちこち探したが、どこにも見つからなかったという。
 
私は8年もインテリア業界に携わってきた。
でも「アレルギー」と「家具」の関係が今ひとつ結びつかなかった。
新しい家具が使えない? どういうことだろう。
 
しばらくその事が頭から離れなかった。
そんなある日、「普通のタンス」と「育児用タンス」の違いを思い出した。
インテリア業界の先輩が教えてくれたことだ。
「育児用タンスは鋭い角がない、そこが普通のタンスと違う。でもそれだけじゃない。接着剤や塗料なども小さい子どもの安全性に配慮したものが使われているんだ。」
 
接着材や塗料……?
 
あるチェストの取扱説明書にはこう書かれていた。
「整理たんす等に衣類や肌着、下着類を収納する場合は必ずポリ袋等にいれて収納してください」と。
 
自分自身も低価格の家具をたくさん置いている場所に行くと、目がチカチカする感覚を覚えたことがある。
 
それから、アトピーやアレルギーの原因について調べはじめた。
健康に害をもたらす揮発性有機化合物についても。
 
色々調べていくと、家具に使用されている塗装材や接着剤にはホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物などが含まれていることを知った。すべての家具とは言わないが、当時はそれが一般的だった。
これまでの記憶や疑問に思っていたこと……
それらが突然、点と点が線で繋がるように理解できた。
 
ホルムアルデヒドは、シックハウス症候群の原因物質の一つとしても知られている。
家具や建築資材の接着剤などに含まれる物質の一つで、揮発性の化学物質だ。少しずつ室内に放散され、健康に害をもたらす。
目がチカチカして涙が出たり、のどが痛くなったり、頭痛などの症状が出る人もいる。
2003年には建築基準法が改正され、ホルムアルデヒドを発散する建材や内装仕上げ材の使用制限が設けられたが、当時まだ基準はなかった。
 
「本当に安心して使える家具、インテリアとはどんなものだろう?」
ひとりのお客様からお聞きした話から、この想いはスタートした。
 
大切な家族のことを思い家具を選ぶということ。
お客様の言葉を思い出しながら、ひとつひとつ考えた。
 
なぜ安心して使う事ができない家具がたくさん作られているのか?
なぜ昔のようにお手入れしながら大切に使い、次の世代に受け継がれていくモノが減っているのか?
本当に心地よい空間ってどんなものだろう?
愛着を持って、永く使い続けることは家族にどんな変化をもたらすだろう?
人にどんな影響があるのだろう?
なぜ? なぜ? なぜ?
 
たくさん考えた。 答えはすぐには出なかったけれど……
 
日本の家具業界は快適に安心して使える家具の提案が遅れていた。価格やデザイン性優先の商品の増加が進み、商品の品質や安全性が把握できず、どのような製造工程を経て造られているか販売店側も把握しきれない。
販売店側の意識の薄さも原因となっていた。
 
次の年、子どもの気を引きやすいキャラクター机を展示から外した。すべての学習机を健康に配慮した商品に変更したのだ。
 
「商品の背景を伝えられる家具だけにしよう!」
 
そう決めて、展示を徐々に入れ替えていった。
つくり手の顔が見える家具にこだわり、材質、接着剤、塗装剤には健康に配慮したものだけを使用した学習デスク。
手間をかけてつくる家具は、その分価格が高くなる。
最初の1年、目に見えてお客様が減った。
 
それでも「安心して子どもに使わせることができます!」というお客様の嬉しそうな笑顔を見ることが少しずつ増えていった。
自分たちの選択は間違っていなかった! そう思えて嬉しかった。
 
それから、「安心して使える家具を探していました」、「良い物を永く使いたいです」というお客様のご来店はどんどん増えていった。
 
1999年、「造り」「健康」「環境」を統一コンセプトに、『高級ではなく上質』を提案する「インテリアショップ」として、町の小さな家具店は生まれ変わった。
どこで作られていて、誰がどんな風に造っているのか、自分たちでできる限り確認して、商品の背景を伝えられる家具を提案している。
同じ思いで、オリジナルの絨毯やカーテンの開発もしている。
今では、「ロハスなインテリアショップ」の草分けとして、全国からお客様にお越しいただいている。
 
お客様に提案するときに心がけていることがある。
安心して長く愛用していただくために、シンプルナチュラル、シンプルモダンで、飽きのこない、いつの時代もデザインが色褪せることがないインテリアを提案することだ。
今時点のライフスタイルだけではなく5年後、10年後のライフサイクルも考えながら。
 
私たちの原点は学習机を探しに来られた女性の言葉だ。
そして子供たちに本当に安心・安全な家具を使ってもらいたいと思ったあの時の思い。
 
丁寧なモノづくり、人の手が作り出す「しごと」の素晴らしさを知ってもらいたい。
子どもたちに本物を知ってもらい、感じてもらい、触れさせてあげたい。
そこから育まれる未来はどんなに楽しみなものだろう。
 
そんな思いを胸に、今日もインテリアを提案している。
 
 
 
 
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2019-12-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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