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私が大腸癌検診を進める理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事: 熊元 啓一郎(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「先生、結果はどうでしたか?」
診察室に入ってきた40歳過ぎの若い女性が恐る恐る私に結果を聞く。
「……、えっと、田中さん。少し待ってくださいね」
私はパソコン上のカルテを開いて説明を始める。田中さんは大腸癌検診で異常を指摘されて、精密検査のため2週間前に大腸カメラを受けていた
「ではまず、この前の大腸カメラの画像をお見せしますね」
検画像をモニター上に出すと、撮影された順に田中さんに見せていく。
「この部分は特に異常は無いんですが……」
やや遠回しな説明、田中さんは真剣に聞いていたが、徐々に顔がこわばっていくように見えた。
「この真っ赤なポリープなんですが……」
私は目的の画像を田中さんに見せる。
「このポリープ、少し形が歪な感じに見えませんか? なんというか、ちょっと悪く見えるというか」
「そ、そうなんでしょうか?」
その言葉を聞いた田中さんは、私には良く分からない、といいつつも何かを感づいたようだった。
「ええ、見かけが怪しかったので、ポリープの組織を取って検査に出しました。その結果なんですが……」
私は検査結果のレポートを開く。
レポートは英語で書いてあって、医学英語を知らなければ分からない。分からないけど、英語で長々と書いてある文字からは不穏な印象しか受けないと思う。
そのレポートを見た後、田中さんは怯えるような目でこちらを見る。結果を説明しなくて良ければどれだけ楽だろうかと思いつつ、私は少し深呼吸してその言葉を口にした。
その言葉を聞いたとき田中さんは、ああ、と言ってこうべを垂れた。
 
検査の結果、田中さんは大腸癌だった。
 
大腸癌。
私は消化器内科医として大学病院に勤務しており、この癌を診ることは多い。
近年、運動不足や食生活の変化ともに増加傾向であり、罹患数は全ての癌の中で最も高い。一生のうち男性で11人に1人、女性では15人に1人が大腸癌と診断されている。もしかしたら、この文章を読んでいる方やその家族がすでに大腸癌になっていたり、将来大腸癌になるかもしれない。それほど身近なものになっている。そして死亡数も全ての癌で第2位と高い。
近年増え続け私たちの健康を害する大腸癌。これに対して現在都道府県の自治体で大腸癌検診を推進している。
「大腸癌検診って、どんな検査するの? 大腸カメラ?」
検診を受けたことがない人がまず抱く疑問だと思う。
大腸癌検診=大腸カメラを受ける=大変なイメージを持っている方もいるかもしれない。
しかし、実際はそうではない。
大腸癌検診は、問診と便に血が混じっているかを検査する非常に簡単なものだ。
「こんな検査で、本当に大腸癌があるかなんて分かるの?」
そんな疑問もあるかもしれない。
しかし、実際に分かるのだ。
大腸に癌など病気があると、病気の部分から出血して便に血が混じるので、この検査は癌やポリープなどの病気を見つけるのにきわめて有用とされている。
そして便に血が混じっていたり、問診で便が細いなどがわかったときに病院で精密検査、主に大腸カメラを受けてもらうのである。
ただ、大腸カメラは少し大変だ。
検査を受ける前に1Lの下剤を飲んだり、お尻に太いカメラを入れないといけないので躊躇される方も多いかもしれない。
けれど、その大変さを大きく上回るメリットがある。
なぜなら、早期の大腸癌や大腸癌になるかもしれないポリープ(いわゆる癌もどき)は大腸カメラで簡単に取り除くことができるからだ。
 
癌だったという説明を受けて呆然としていた田中さん。私は少し間を置いてゆっくりと穏やかなトーンで話しかける。
「そんなに心配しなくて大丈夫ですよ。早い段階で見つけることができたので治療できると思います」
田中さんのポリープは、癌であることには違いなかったが、早期の癌だったので内視鏡で切除することができた。
大腸癌検診で早期に異常が発見できれば、大腸カメラで早期に切除できる。
これは、健康面だけでなく、治療費の面からもメリットがある。なぜなら進行して見つかった場合は、手術や抗がん剤が必要になるからだ。また発見が遅ければ最悪の場合治療ができないことだってある。
田中さんの癌の治療から数年が経ったが再発な経過良好だ。
「あのとき大腸癌検診を受けてなかったらと思うとゾッとします」
先生の説明の時も血の気が引きましたけどね、と冗談っぽく笑う田中さん。
2児の母で育児も仕事も頑張らなければいけない、そんな彼女が今元気に過ごしているのは、癌を早期に発見し早期に治療できたからに他ならない。
大腸癌検診は40歳以上の男女が検診の対象となっている。まだ受けていない方は是非受けてほしい。早期に発見し早期に治療する、これがあなたにとって健康だけでなく様々なメリットがあると私は信じている。
 
 
 
 
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2019-12-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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