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メディアグランプリ

佃煮は人類を救う……。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事: Masa (ライティング・ゼミ平日コース)
 
「あれ、珍しい!」
年末にたまたま通りかかった神社の参道に屋台が並んでいるのを見かけた。誘われるように入ると、ある屋台で「それ」は売られていた。
「さっき、年配の方が懐かしい、と言って2パック買っていかれましたよ」店番の女性は答えた。
 
そこは佃煮を扱っているお店だった。
「アサリ」や「小魚」、「エビ」などの定番の佃煮が並んでいた。
私は佃煮の醤油と砂糖が混じり合った甘じょっぱいところが好きだ。白いご飯にも合うし、お茶請けにもぴったりだ。
特に、こたつに入って正月番組をみながらつまむのは、最高だと思っている。
 
なので、佃煮パックが沢山置かれていたその屋台に心惹かれた。たまたま客足が減ったところで、佃煮を物欲しそうに見ていた私に店番の女性は味見として、アサリやエビを出してくれた。
 
そして脇の方に隠れるように置いてあった「それ」を私は見つけたのだ。
 
それは「イナゴの佃煮」だ。
 
「イナゴの佃煮」を知っている方はどのくらいいるだろうか?また口にしたことがある方はどのくらいだろう?噂には聞いたことがある方もいるかもしれない。
 
「イナゴ」ってあの昆虫のイナゴ。ビジュアルはほぼバッタとほぼ同じ。バッタといえば、仮面ライダー。イナゴの顔も仮面ライダーに似ている。身体は前後の足が4本で発達した後ろ足が2本。
この後ろ足で思いっきりジャンプして羽を広げて飛ぶ、3センチほどの昆虫だ。
 
小学校低学年の夏休みだったと記憶している。私は長野の母の実家に遊びに行っていた。ある日、祖母が「さぁ、これからイナゴを取りに行こう」と言った。
大好きな祖母が誘ってくれたことが嬉しくて、それほど昆虫に触れていない、都会育ちの私だったが、祖母の様子を見よう見まねで一緒にイナゴを素手で捕まえて、布袋に入れた。
イナゴは、元気がよくバタバタしていたが、容赦なく羽を捕まえて袋に入れるのだ。
 
「どのくらい獲れたかな?」祖母は私の布袋を覗き込んだ。
「ねぇ、おばあちゃん、このイナゴ、どうするの?」私は聞いた。ただの昆虫取り遊びだと思っていたからだ。
祖母は「これから美味しいものを作ってあげるからね」と嬉しそうに言った。
ここで、「イナゴって、食べるものなんだ」とインプットされた。
 
当時の私はそれを聞いても「虫が可哀そう」とか「昆虫なんて食べられない」とか、そんなことは微塵も思わず、料理上手の祖母が作るものは間違いないと思っていた。
 
捕まえたイナゴは、一匹だけ虫かごに入れられ、すぐさま袋のまま水に漬けられた。
そして翌日、袋から出したイナゴを祖母が選別をしているのを何となく覚えている。そして記憶違いかもしれないがコオロギやカマキリなども交じっていたような気がしている。
選別が終わると祖母は大きなアルミ鍋を出してきて、お湯を沸かして、その中に選別したモノを入れた。
緑色だった「イナゴ」はみるみるうちに、茶色になっていく。
「これを煮たら、今夜は食べられるからね」祖母はニコニコしながらそう言った。
その夜、そのままのビジュアルのイナゴがあめ色の佃煮になって食卓に並んだ。
叔父さんも、叔母さんも従妹たちも躊躇なく、イナゴを箸でつまむ。
私もつられるようにイナゴを口に運んだ。
エビの佃煮みたいな味がした。
 
そこは長野県伊那市。大人になってから、長野県南部地方にある伊那市では昔から昆虫をたんぱく源にしていた事を知った。
伊那市には何軒かイナゴの佃煮を販売している店がある。
そして、「イナゴ」のほかには「蜂の子」「ざざむし」「蚕のさなぎ」という4種類の昆虫が食べられていて、いまでは「信州4大珍味」として佃煮にして、ネットや観光案内のような所で販売しているらしい。
 
「蜂の子」は地バチ(じばち)と言って、木の根付近や崖になっている地中に巣を作るクロスズメバチだ。
大人達がその蜂の巣を取ってきて、1センチ弱の幼虫を巣から取り出し、佃煮にしていた。この「蜂の子」の佃煮は、ごはんに炊き込んで「蜂の子ごはん」としても食卓に上がる。また、蜂の巣は綺麗に修復され、しばらく家に飾られている。
 
「ざざむし」は川に生息している。ビジュアルは小さなムカデという感じ。
「蚕のさなぎ」は、「蚕のまゆ」の中に残っている「さなぎ」だ。
この2つも佃煮になって、田舎の食卓にあったのを覚えている。
「ざざむし」は川エビのような触感。「蚕のさなぎ」は小ぶりのアーモンドといった大きさで卵の黄身がぎっちり詰まったような感じ。いかにも栄養がありそうだった。
 
大人になってからは、「昆虫を食べた事がある」などと言うと気味悪がられそうなので、あまり周りに積極的には言わなかった。
一昔前のバラエティ番組なら、完璧な罰ゲームだったのかもしれない。
 
ところが調べてみると、最近は「昆虫を食べること」が話題になっていて、国連食糧農業機関(FAO)が2013年に出した報告書によると「昆虫食は、これからの世界の食料難を救う」という事らしい。
 
佃煮の屋台の女性に、「これも1つください」イナゴの佃煮を指さし、他の佃煮と一緒に袋に入れてもらった。
家に帰って、海老、小魚、アサリ、イナゴの佃煮を皿に並べて、熱いお茶をすすった。
佃煮はどれも、黄金色に輝き、口に入れると甘じょっぱい味が広がる。
「もしかすると、佃煮にしてしまうと、なんでも美味しくなるのかしら?」私はフトそう思った。
 
この「信州四大珍味」、ご興味を持った方は、長野の物産展や佃煮屋さんで試してみて欲しい気もする。
世界の食料難を救うかもしれない昆虫は、佃煮にしてしまえば、割とイケてるかもしれないから。
 
 
 
 
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2019-12-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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