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共感ゼロ 700km自転車旅で得たものは?

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小林 和之(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「あ~、うらやましい」
サッカー選手や好きなことを仕事にしている人を見る度に、「好きなことをして暮らしていけるなんて最高だ、うらやましい」中学生の頃は、そんな風に思っていた。
そんな思いを抱いていた人は、少なくないと思う。
別にサッカーをしていたわけではないし、何かに努力をしていたわけではないくせに、そんな風に考えていた。
 
社会人になってからは、そんなことを考えることもなくなっていた。
あることをきっかけに、当時のことを思い出した。
 
2012年に仕事を辞めて、当時住んでいた東京から実家のある新潟に帰った。
せっかくなので新幹線ではなく、自転車で帰ってみようと思いついた。
その時の理由は、①購入した自転車(ロードレーサー)が楽しい、②一人でゆっくり考えたい、そして③仙台の司で牛タンが食べたい。
 
どうでもいいが、仙台には「司」という、地元の人も通う牛タン屋があるらしい。
そんな情報だけで、仙台経由を決めた。
実際にかなりの遠回りだった。
すごくムダだと思う。
 
今でも飲んだ時にこの話をしても、誰からも共感されない。
 
この旅自体は、ただの自己満足、今でもそれでもいいと思っている。
総走行距離は700km以上、1週間以上かかる行程だけれど、①~③は自分でやりたいことを寄せ集めたので、楽しみでしょうがなかった。
細かな計画は立てず、出発するときに、明るいうちに到着できる次の宿泊地を目指す。
1日100km進めばオッケー。
本気で自転車乗っている人からは、鼻で笑われそうな余裕ペースで出発した。
 
1日目は、夕方に出発した直後に、いきなりの大雨で早めの宿泊。
2日目は、天気が回復し気持ちよく移動ができた。
ほぼ平坦な道で、自転車はスイスイ進し、1日の走行距離は余裕でクリアした。
 
3日目で早くも嫌になってしまった。
足がパンパンになるし、お尻は痛いし、鞄で肩が痛いし。
早くも家に帰りたくなった。
ちなみにロードレーサーは、輪行袋に入れれば電車に乗せることができる。
ただ今回は持ってきていなかったので、電車で帰る選択肢は無くなった。
 
あきらめて走り始めたが、そこからはひたすら、苦行だった。
 
ただただ、明るいうちに宿泊場所へ無事に到着できるか、だけを考えていた。
東京から福島経由で仙台、そして新潟へは多くの山を越える。
かなり細い道もあり、トラックがすぐ横を通り過ぎていくので、暗い山道を走るのは自殺行為だった。
街中では自動販売機がいたるところにあるが、山にはない。
山で脱水症状になると、相当まずい。
助けてくれる人がいる保証もない。
 
日中は休憩以外ひたすら移動するので、色々な考えが頭を通り過ぎた。
旅の前半は「なぜこんなことをしているのだろう」と、ほとんど後悔しかなかった。
中盤になりそれにも飽きてくると、その日決めたゴール地点にどうやって到着するか、どこで休憩するか。今のペースで大丈夫か、とか。
 
後半には「楽しいことを始めたはずなのに、なんで自分から、つらい思いをしているのか」何だったらこの状況を楽しみ始めていた。
 
無事、新潟に到着した時は、名残惜しかった。
もう少し遠回りすればよかったとさえ思った。
 
ホテルが取れずマンガ喫茶で丸まって寝たり、転んで自転車が壊れかけたり、自転車屋で助けてもらったり、牛タン食べたり……
色々あったけど、一番は自分の新しい発見があったことだ。
 
発見は2つあった。
 
発見1つ目の、なぜ楽しいことを寄せ集めた、自転車旅を早々に後悔したのか、がヒントになった。
どうやら私の中では「楽しい」と「ラク」を、ゴッチャに考えるクセがあるようだった。
「楽しい」と始めた今回の旅を、いつの間にか「ラク」かどうかの物差しで測っていたのだ。
自転車で700kmは、どう考えても「ラク」ではない。
そう考えると、これまで自分でも気が付かないうちに「ラク」かどうかで判断することが多かったように思う。
質が悪いのは、「楽しい」と区別ができていないことだった。
 
発見2つ目は、「ラク」じゃなくても、何とかなる、ってこと。
大変でも意外と大丈夫。
目的と途中の目印、たまのご褒美(牛タンのように)があれば、やり切れる。
 
旅以来、好きなことを仕事にしている人を見ると、うらやましさよりも、そこに立つまでの「ラク」ではない方で見るようにしている。
そうすれば「あ~、うらやましい」とは、間違っても思わない。
 
あれから「ラク」な方を選んで、後悔したことは数えきれない程ある。
一方で「楽しい」を選んで、大満足したこともある。
 
他人から見たら「自転車で1週間なんて、ムダ」と思われるだろう。
実際にそう思う。
でも新しい自分を発見できるなら、悪くはないと思う。
 
今でも機会があれば、自転車で一週間くらいフラフラしたい。
多分2日目で嫌になって、後悔するだろうけど。
終わりごろになって、どんな発見があるのか?
楽しみでしょうがない。
 
 
 
 
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2019-12-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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