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メディアグランプリ

なぜ自分をヤジロベエだと思うことにしたか


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ただくま みほ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「私はヤジロベエってことか」
 
夕暮れ時、家路を急ぐ車の中でハンドルを握りながら呟いた。暗くなった空の端が名残惜しそうにうっすら紫のようなピンク色をしている。
 
その日は出先での打ち合わせが長引いて、保育園のお迎えの時間に間に合わず、父に子どもを迎えにいってもらっていた。本当ならもっと時間に余裕を持って迎えにいってやり、降園後の子どもと一緒に遊んだり、ゆったりと夕食を一緒に作ったりしたいのだ。でもここのところ何度かこんなことが続いている。今日もこの時間では、帰宅後息つく間もなく夕食を準備して、ありあわせの簡単なもので何とかしなければいけない。
 
「味噌汁の残りを温めて、魚が買ってあったのがあるからあれを焼けば良くて……」
 
超スピード簡単夕食の献立を取り急ぎ考えたところでため息をつく。子どもに全部食べさせるのに苦労するパターンのメニューだ。正直なところ、この献立では私自身も心ときめくメニューではないのだ。
 
「こんなんでいいのかな」「こんなんじゃ、あかんよね」ふーっと息を吐き出すとともに言葉が漏れる。
 
私は子どもが生まれてからファイナンシャルプランナーとなり起業した。自分が楽しく仕事をする姿を見せることを通して「人生って楽しいよ!」と子どもに伝えたいと思って走ってきた。子どもとの時間をできるだけ自由に設計できたらいいと思ってこの働き方を選んだ。でもこんな風に思うようにいかない時もある。それが続いたりすると「何のためにやってんだか」という気分になる。
 
会社員でフルタイムの仕事復帰にあたり「子育てと仕事のバランスがね〜」とこぼしていたママ友の顔が浮かんだ。私だってやっぱり同じことを思ってしまう。
 
今日はどうしてこの流れになってしまったんだろう。やっぱりあそこでこうすれば良かった……。次からはどうしたらいいか……。考えが巡る。
 
交差点の手前まで来た。いつもなら右折して保育園に向かう分岐点だ。今日は直接家に帰るのでウインカーを左に出す。カッチ、カッチ、カッチ。ライトが点滅する。
 
ふと「揺れるのはいけないの?」という問いが浮かんだ。仕事が押してしまった時は、子育ての時間が削られてしまった! と思う。でもそもそも去年までは子どもは一時保育に預け月に10日働いていて「もっと働く時間がほしい」と思うこともあった。今でも「もっと働く時間がほしい」と思うこともある。
 
仕事でいっぱいになっていると「こんなことでは子育てに支障が……」なんて気持ちになることもあるが、そもそも起業する前も完璧な母親であったわけでもないのだ。いや、今後も仕事をしてもしなくても、自分の思い描く理想的な母親に近付こうと努力することはできたとしても完璧な母親になれることはないのだろう。
 
「揺れたらあかんの? 別にいいやん」誰に言うわけでもないのに強い口調で言葉が出た。子育てと仕事のバランスで揺れること自体は別にいけないことでもなんでもないのではないか。揺れるということはより良い安定したバランスを求めているということだ。「より良くありたい」という心の働きなのだと思う。つまり、もっと良く、理想的に生きたいという意欲的な動きだと捉えることもできるのではないか。
 
揺れることによって、具体的にもっとどうしたらいいか今までにない発想で物事を考えたり行動していくことができるのではないか。事実、以前仕事がキャパオーバーになったときに見つけた新しいやり方で、この一年半すごく仕事が進化したのだ。そうやって少しずつ「できる」を増やしてきたではないか。だとしたら、揺れた時はチャンスなのだ。
 
揺れたっていいじゃないか。揺れることがいけないんじゃなくて、揺れた時に「私は揺れてる。もっと良くありたいって思ってるんだ」と思えればいいのではないか。
 
さらに、同じ時間を過ごすなら、揺れること自体を楽しめたらもっといい。揺れることを楽しむために、この状況や自分自身を揺れることが楽しいものに例えたくなった。揺れることが楽しい物って何だろう。バランスを求めて揺れるオモチャは……
 
「ヤジロベエだ! そうか、私はヤジロベエってことか。それでいいんだね」一人、呟く。
 
自分をヤジロベエに例えると楽しい気持ちになってきた。「この辺かな? こうしたらいいかな?」と重心ややり方を探ること。探ることによって一番いいバランス、やり方がきっと見つかる。
 
子育てと仕事のバランス。子どもの成長に応じても、今後またいろんなバランスがあることだろう。家族の変化、仕事の変化に応じてもまた揺れることだろう。
 
揺れていいじゃないか。正直、揺れる時はしんどい時であるけど、そこであえてチャンスだと思うことにしよう。ヤジロベエみたいに、揺れることを楽しもう!
 
家に着いて車を降りると、見上げた空に一番星が輝いていた。
 
 
 
 
***
 
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2019-12-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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