将来の夢を決められない今の子供たちはダメなのか?
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記事:堀居邦彦(ライティング・ゼミ日曜日コース)
「キミの将来就きたい職業は何ですか?」
以前は生徒たちにこういった質問をよくしていた。この世にたくさん存在する高校から志望校や受験校を決定していく上で、将来の夢から逆算して決めていった方が、決めやすい。将来の夢が決まっているのであれば、あとは自分の描いている夢に近づくために最短距離を走り切ればいい。だから、私は生徒たちに将来の夢についてはしばしば確認をしていた。
しかし、その質問に対する答えはというと、こちらの想いに反して「まだわかりません」という答えが大半を占めていた。あくまで私の感覚でしかないが、その数は年々増えていったような気がする。高校の志望校や受験校は決められるが、将来付きたい職業に関しては決めきれない子がどんどん増えていった。
『本当に夢がないのか?』
将来の夢について私が問いかけると、目の前で固まってしまう生徒たち。具体的な話がなかなか進まない生徒たちの様子を見て、時に私はヤキモキした。なぜ、自分の将来のことを真剣に考えないのだろう? 生徒たちは何のために受験をするのだろう?そもそも受験する意味なんてあるのか? こんなことまで考えることもあった。
子どもの頃、私には明確な将来の夢があった。男の子であれば、サッカー選手、女の子であれば花屋さん、という風に。私の夢は警察官になることだった。いつから警察官になりたかったかというと、覚えている限りさかのぼれば、おそらく幼稚園の頃だったように思う。
なぜ私が警察官という職業に就くことを目標としていたのか。それは本当に単純なものだった。私の父は警察官だったからだ。さらには、叔父も警察官で、いとこも警察官、そして祖父も警察官という代々警察一家だったのだ。私の周辺には幼いころから警察に関する様々なもので溢れていた。私の将来の夢は自然の流れで警察官だったのだ。『環境が人を創る』とはよくいうがその典型例だったように思える。
ちなみに、父からは警察官になりなさいと強要されたことは一度もない。むしろ、大変な仕事だということをよく聞かされていた。業務内容は決して教えてくれなかったが、自宅に帰ったら書斎に入り夜遅くまで昇任試験の勉強に励んでいたことを私は今でも鮮明に覚えている。また、時には深夜に携帯電話が鳴り、今から職場に向かうということもあった。
「父は警察官です」
こう言うと「立派なお父さんだね」と周囲の人たちから言ってもらえた。私が警察官という訳ではないのにどこか胸を張っている誇らしげな自分がいたように思う。
小さな頃から父を通じて警察官という仕事を目の当たりにしてきた。当然のように、自分も警察官になりたい。いや、ならなければならないという使命感に駆られていたように思う。
高校も大学も警察官になる最短ルートを考えた上で進学した。将来の夢で迷うことなどなかった。
私だけでなく、周りの友達も似たように職業選択をしていたように思う。きっと『20世紀』がそのような時代だったのだろう。親を筆頭に、自分の周囲にいる『大人』が引いたレールの上を脱線せずに誰よりも速く駆け抜ける。そして就職というゴールに飛び込む。次は就職先の会社いう電車に乗り換える。この電車は指定席付きだ。指定席さえ確保できれば、あとは定年というゴールまで行儀良く乗車しておくだけ。もちろん、この電車には途中停車駅などない特急車両だ。そして終着駅の定年退職というわけだ。
しかし、今の時代はどうか? 5年単位では止まらず、目まぐるしいスピードで変化していく社会。昨日出来なかったことが、明日出来るようになっているのではないか。そんな風に思わせるくらい世の中は日々変化している。
職業に関しても同じことが言えるだろう。私がまだ小さかったころにApple社もGoogle社も存在していなかった。スマートフォンも電子マネーも自動運転で走る自動車などもすべてスクリーンの中のものだった。それが現実に存在している。
『最近の子供たちは将来の夢を決めていないのではない』
あまりにも職業選択に関して選択肢が多すぎる。また社会が流動的すぎて、今職業を決めたところでその職業が10年後には無くなっているかもしれない。小さなころから将来の夢を決めたところで仕方ないのではないだろうか?最近ではそのように考えるようになってきた。
まだ世の中に存在しない職に就く可能性がある子供たち。日々目まぐるしく変化する社会に出るまでに広い視野で物事を観る力を身につけさせたい。たくさんの知識を習得させて社会に送り出してやりたい。さまざまな学習を通じて何事も最後までやり抜く大切さを身につけさせたい。それらを一つずつ成し遂げていった先に、理想とする職業が見えてくるのではないだろうか。
「ウチの子、まだ将来の夢が見つからないんですよ」と親御さんからよくご相談いただく。
「将来の夢なんて、この目まぐるしく変化していく中では決められなくて当然なのではないですか?しかるべきときに決定できるだけの力を養っておけば自分で見つけられるようになっていますよ」と私は答えるようにしている。そう、親御さんは我が子の人生を失敗させたくないのだ。また、将来の夢を明確にしている我が子の姿を見て、自分が安心したいのかもしれない。それらは紛れもなく我が子に対する愛なのだ。子供へ職業選択を求めるのは、親心くる最高の愛情表現なのだ。私は我が子を思うように生徒たちを指導している。生徒たちに将来の夢を聞いていたころは、その想いが少し強すぎてしまったのだろう。社会は変化しても生徒たちに対する想いは今も昔も変わらない。
ここまで読んでいただけるとご存知のとおり、私は警察官にはならなかった。大学時代に全ての情熱を注いでやり遂げた塾講師としてこの人生を生きていくと決めた。今はこの仕事につけて本当に幸せだと思っている。
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