メディアグランプリ

カンボジアで出会った少年たちが教えてくれたこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:坂下佳奈(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
いわゆる、バックパッカーのような旅が好きで、何カ国かをフラフラしてきたことがある。雑多で生命力のある雰囲気が好きで、アジアの発展途上国を中心に旅をしてきた。
 
 
旅に出会いというものは付き物。みなさんにも旅行中の記憶に残る出会いというものがあるのではないだろうか。私にも、旅先で出会った忘れらない人というのが数人いる。
 
 
そのなかでも、一番心に残っているのが、カンボジアの少年たちだ。
人生でもう一度会いたいと7年経った今でも思う少年たち。その子たちと出会ったとき、私は就活を終えて卒業旅行を楽しむ大学4年生だった。ほんの数ヶ月前に行ったカンボジアを気に入って、仲の良い友人と二人での再訪を決めた。
 
 
1週間ほどの慌ただしい滞在だったと思う。カンボジアの首都プノンペンで数泊したのち、私たちは、アンコール・ワット遺跡などが人気のシェムリアップに向かった。カンボジア旅行の鉄板的な場所だ。
 
 
このシェムリアップで、私たちは1日だけ別行動をすることにした。
アンコール・ワット遺跡群には、小回りコースと大回りコースという2つのコースがある。カンボジアを初めて訪れる友人は、ゆっくりと遺跡を見てまわることができる小回りコースを、数ヶ月前にすでに小回りコースを周っていた私は、自転車を借りて大回りコースを行くことにした。
 
 
宿で借りた自転車を漕いでいくと、アンコールワットなどの遺跡のある敷地に入っていき、少しずつ雰囲気も変わっていく。大回りコースでは、アンコールワットのほかに、プリアカンやニャック・ポアンなどの遺跡を見て回ることができる。
 
 
少年たちとどこの遺跡で出会ったのかは忘れたが、大回りコースを回り始めて、かなり序盤の方だったと思う。もしかしたら、自転車に乗って遺跡から遺跡へ移動するときだったのかもしれない。まだあどけなさの残る少年二人が、私に話しかけてきた「一緒に回らない?」と。
 
 
海外を旅していると、勝手にガイドをしてきて別れ際にお金を要求するというのはよくあるパターンだ。一瞬そういう人たちなのかなとためらったが、話を聞いていると、下心がある感じではなさそうだった。地元の学校に通っているという少年二人は、16才くらいだったと思う。
 
 
少年たちは、将来ガイドになることが夢だという。休日を使っては遺跡群を訪れて、プロのガイドが説明している内容を聞いたり、海外から来ている観光客に話しかけてガイドの練習をしたりしているそうだ。
 
 
この時点で私には衝撃的だった。16才のときの私は、将来のために何かしたことがあっただろうか。あのとき将来の夢は、大学生活の先にあって、机に向かって勉強をすることしかしたことがなかった。大学生活の先に待ち受けていたのが、就職活動。エントリーシートを書いて、スーツをきて面接を受ける。
 
 
幸いなことに就職先は決まったが、少年らの「自ら未来を切り開こう」とする姿勢に少し恥ずかしさを感じたのを覚えている。
 
 

彼らは、私と遺跡をまわりながらも、いろいろな観光客に英語で話しかけてコミュニケーションをとろうとしていた。相手にしてくれない人がいても気にせず、次の人に話しかける。簡単なことで心は折れない、何より楽しそうなのだ。
 
 
ガイドになるために、学校でも遺跡の勉強をしているという。本当にガイドになりたいのだろうなと思った。そしてガイドになるという未来は、勝手にやってくるものではなく、自分たちで作り出すものなのだ。作り出すことができる未来なのだ。
 
 
環境や将来の夢もそれぞれ違うのだから、一概には言えないのかもしれないが、年齢や立ち位置に関わらず、誰でも夢のために学ぶことができる。それは、机上の話ではなく、社会の中で実践的に学ぶという意味で。
 
 
遺跡の中では、未来のガイドたちが丁寧に案内をしてくれた。ただ、残念なことに、私の英語力は中学生並み。分からない単語も多く理解できずにいると、彼らは優しい単語を使って、私がわかるまで噛み砕いて教えてくれた。3人で頭を付き合わせて、携帯にインストールされた簡易の英語辞書でわからない単語を調べることもあった。
 
 
彼らは、私が意味を理解するととても喜んでくれた。あまりにも理解しない私に、苦笑いしつつも、ちゃんと理解するまで付き合ってくれる優しいガイドだった。
 
 
途中、優しいガイドたちは、一緒に遺跡を回る仲間を2人見つけた。私たちのグループは、5人になった。新しく仲間になったのは、カナダから旅行に来ている親子で、息子さんは高校生のころに1年間日本に留学したことがあった。少しカタコトではあるが日本語を話すことができ、英語が苦手な私とは、日本語で話をしてくれた。英語と日本語が混ざり合いながら、年齢も国籍も異なる5人の自転車旅は、あっという間に終わってしまった。
 
 
楽しくて時間を忘れていた私が、待ち合わせ時間に1時間以上も遅れて友人に大目玉を食らったのはいうまでもない。ただ、そのくらい2人の少年がガイドをしてくれて、新しい出会いまでもたらしてくれた時間が楽しかった。
 
 
7年間で、私は何度も彼らとの出会いを思い出している。
 
 
ほしい未来は、自分たちでつくっていく。
普段生活する社会の中に、チャレンジすることのできる場所はごまんとあるのだから。

 
 
 
 
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2019-12-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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