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ヘナチョコ男子がスーパーサイヤ人になった理由

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:高木信幸(ライティング・ゼミ 冬休み集中コース)
 
 
「それでは、隣の人の絵を描きましょう」
 
僕の身体は固まった。
 
これは、いじめだ。
 
僕は心の中で叫んだ
「俺は、女子が苦手なんだよ。目を見て話すこともできないのに、隣の人を描くだって ?そしたら直視しないといけないじゃないか。しかも、ただでさえ絵心がないのに。絵なんて得意なやつだけ描いてれば良いのに」
 
中学校に入学して一番最初の美術の授業での出来事だった。
 
牛乳瓶の底みたいなメガネをかけて、ベートベンみたいなモシャモシャの髪をした女性教師がそう言ったのだ。
 
本当に嫌だった。
 
僕は自分でも嫌気が差すほど絵が苦手だ。
 
そして、それ以上に、女子も苦手。
 
こんなことってある!?
 
教室から逃げ出したくなった。
 
隣の女子生徒はちえちゃんという。
 
髪が長くて、背が高い。
 
目は細いけど、笑うと可愛らしい印象の子だった。
 
僕は、
「そんなことやってられっかよ」と授業をボイコットし教室を出ていく。
ほどの勇気はなく、仕方なくスケッチブックと鉛筆を手にした。
 
鉛のように重たい。
 
終始真っ白なスケッチブックだけを見つめる。
 
ちえちゃんから、「ねぇ、書けないからこっち見てよ」と言われる。
 
渋々、顔をあげてチラッとだけ見る。
 
そして、また顔を伏せる。
 
そんなことの繰り返しだった。
 
彼女は絵が上手で、僕のことをそれなりに描いてくれた。
 
僕はといえば、幼稚園生が母の日とかに描いてスーパーに飾ってあるようなレベルの出来だった。
 
ちえちゃんからは、「ヒドイ」と悲しい顔をされた。
 
「ほら、だから言ったんだよ、嫌だって」
 
僕はますます女子が苦手になった。
 
いうまでもないが、美術の時間も瓶底ベートベンも大嫌いになった。
 
僕は女の子と話すのが苦手だった。
 
なぜか理由はわからないけど、とにかく恥ずかしい。
 
目を見て話すことなんて絶対に出来ないタイプだった。
 
中1ともなれば異性を意識する時期で、可愛いな、とかちょっと気になる、と思える女の子がいないわけでもなかったが、仲良くなるなんて到底無理な話だった。
 
別に、暗いわけではない。
 
男友達はたくさんいた。
 
剣道をやっていて、運動神経が悪いわけでもなかった。
 
まぁ、いわば平均的な男子生徒だった。
 
そんなどうしよもない僕だけど、成人して社会に出て、大人になった今、モテるようになった。
 
こんな女性恐怖症みたいだった僕がなぜモテるようになったのか。
 
韓国に言ってイケメン男子に整形をして生まれ変わったから、ではない。
 
残念だけど、ちゃんと顔の造形はそのままだ。
 
大学生の時だ。
 
僕は高校卒業後、福島の親元を離れ宮城の大学に進学した。
 
当然一人暮らし。
 
大学生ともなれば、飲み会や合コンがある。
 
誘われて参加することが何回かあったけど、そこでもダメっぷりは健在。
 
そんな僕にも転機がやってくる。
 
大学2年生のとき、コンビニのバイトに飽きて、他のバイト先を探していた。
 
偶然、ちょっとお洒落な居酒屋を発見した。
 
友達と行ってみたら、とっても美味しかった。
 
そしたら、その店はオープンしたばかりで、アルバイトを募集していた。
 
直感的に、僕はここでバイトしたい、と思った。
 
速攻でエンリトー。
 
面接を経て、雇ってもらえることになった。
 
その店の店長がすごかった。
 
当時30歳くらい。
 
この人、メチャイケメン。
 
店長目当てでお客さんがひっきりなしに来るほど。
 
僕は最初、みんなこの格好いい店長に会いに来てるんだな、って思った。
 
でも、違った。
 
何が違うかというと、格好いいからだけではないということ。
 
なぜなら、男性客も多いから。
 
よく観察してみると、うちの店長は天性の人たらしだった。
 
ユーモアがあって、教養もある、人の懐にスッと入っていける能力もある、真面目な話も砕けた話もこなせる、人に意見に流されない強い意志もあるし、ちゃんと人の話に耳を傾けられる器の大きさもあった、年齢性別に関係なく、人を惹きつける魅力を持っていた。
 
これだけ人格が優れていて、イケメン。
 
ずるくない!? って思った。
 
でも、そこから僕は、店長を観察することにした。
 
そして、真似することにした。
 
もちろん、顔面は似ても似つかない。
 
果てしなくほど遠い位置にいるから、そこは一旦置いておいて、会話の内容や立ち振る舞い、とにかく観察して真似するようにした。
 
イケメンの要素を取り入れてるんだから、俺もイケメン! とよくわからない持論を展開した。
 
そしたら、なんだか自分に自信がついていった。
 
お店に来るお客さんには当然女性も多くいる。
 
前までは恥ずかしくて接客するのが億劫だったけど、店長を真似するようになってからは楽しくて仕方なくなった。
 
ある時、常連さんに「なんだか、店長に似てきたね」と言われた。
 
最高の褒め言葉だった。
 
今まで女性が苦手だったのは、自分に自信がなかっただけなんだ。
 
でも、理想とする人、憧れる人を真似することでその人になりきってしまう。
 
そうすると、勇気や自信が湧いて来る。
 
不思議なもので、僕に対する周りの見方も変わって来た。
 
そこから、僕は女性とも楽しくおしゃべりすることができるようになり、何人かの女性とお付き合いもさせてもらった。
 
冒頭に僕はモテる、といったけど、実際にモテてるかどうかはわからない。
 
でも、俺はモテるんだ、って思い込むようにしてる。
 
だって、俺はモテないんだ、って思っている男に女性は魅力を感じないでしょ。
 
男女関係に限らず、何かで上手くいきたいと思ったら、真似することってすごく重要なんだと学生のときに学んだ。
 
僕はラッキーだった。
 
真似したいと憧れることができる店長と出会えたから。
 
そう、僕は運が良くて、モテ男なんだ!って思い込むことにしてる。
 
おめでたいでしょ。
 
でも、その方が楽しいから。
 
もし、同じように異性とのコミュニケーションが苦手だという人がいたら勇気もって一歩踏み出して欲しいと思う。
 
そう、あなたはモテ男だから。
 
 
 
 
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2019-12-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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