生粋の夢女子が乙女ゲームにハマらなかったワケ
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記事:渡邊千尋(ライティング・ゼミ日曜コース)
私は産まれたときから生粋の夢女子だった。
夢女子という言葉の定義は様々あるが、元来の意味としては「夢小説」を楽しむ女性を指していたものだと思われる。
夢小説とは。
架空のキャラクター(実在の芸能人なこともある)と自分が恋愛する様を描いた二次創作小説のことを指す。
本当なら自分がいるはずのない世界に、自分をそのまま投影することが出来て、さらにキャラクターは自分を認知して関わりを持ってくれるというもの。
夢小説にピンとこない人向けに例を出すならば、ワンピースの麦わら一味の新しいクルーとして、自分というキャラクターが登場するのである。
そこでどのキャラクターとどんな関係性を持ちたいかによって、読む小説を選ぶ。そんな感じだ。
ひと昔前の夢小説サイトでは、小説のページに飛ぶと自分の名前を入力するフォームが設置されており、そこに入れた名前の通りに小説内のキャラクターが自分を呼んでくれるのだ。
サイトによってはフルネームだけでなくあだ名を設定するフォームまで設置されていたりして、本当に愛着を持ってキャラクターたちが自分を呼んでくれているように思えて嬉しかったのを覚えている。
上記のような夢小説サイトを青春時代に一通り楽しんだ私は紛れもなく夢女子なのだが、こうした小説にハマりだしたのは中学生になり、インターネットに深くのめり込むようになってからだった。
しかし、その前から私は十二分に夢女子としての才覚を現していた。
そんな私の初めての夢女子的体験は、小学生の頃だった。
ファイナルファンタジーⅦがリリースされた年に小学生だった私は、父親のプレイ画面を横でじっと見ていた。
ゲームは自分でやるよりも見てる方が楽しくて好きだったので、毎晩父親がゲームを進めていく様子をワクワクしながら楽しんでいたのだ。
ゲームの中で生きるクラウドは格好良かったし、ティファは可愛くって私の憧れだった。
そのころのゲームは今とは違いダウンロード版などあるはずもなく、当たり前にディスクを買うタイプのものだった。
ディスクと一緒に入っている説明書の中に、キャラクターの立ち絵とプロフィールが書かれたキラキラのカードが一緒に封入されていた。
そういった小物に興味のなかった父親からそのカード一式をもらった私は、学習机の引き出しに大事にしまっては、毎日こっそり取り出して眺めるのを繰り返していた。
その数日後。
私は手近にあった真っ白な画用紙をそのカードと同じ大きさに切り取って、自分のプロフィールカードを作って一緒に並べていた。
そのカードに書かれた私ちゃんは、魔法が使えて、ティファの大親友で、クラウドとともに旅をする強すぎる女の子だった。
その架空の私ちゃんは、私の頭の中でクラウドやティファと一緒にゲームの世界を旅して、戦って、一緒に笑ったり泣いたりしていた。
決まったキャラクターと恋愛をするといった要素は無かったにせよ、今にして思えば、これはれっきとした夢女子誕生の瞬間だったと思う。
こんなザ・自己生産型の夢女子人間が、恋愛に夢を見る年頃に合わせてインターネットの恋愛系夢小説にハマらないわけはなく、中学・高校時代にどっぷりと浸かっていくことになるのだが。
私がちょうど高校を卒業するくらいの頃、世の中に乙女ゲームというものが流行り始めた。
乙女ゲームとは何か。
Wikipediaによると『女性向け恋愛ゲームのうち、主人公(プレーヤー)が女性のゲームの総称である。』だそうだ。
この説明を見る限り、「恋愛要素があり」「プレーヤーとして自分がその世界に存在し」「キャラクターと関係性をもてる」ことが想像でき、夢小説となんら大差がないように思える。
実際私も、乙女ゲームを手にするまでは夢小説の上位互換だと思っていた。
しかし私は、世の夢女子たちが乙女ゲームへと流れていく中、全く乙女ゲームにハマることなくここまでオタクとして生きてきてしまった。
乙女ゲームを全くプレイしていないわけではなく、有名タイトルのいくつかはきちんとプレイ済である。
だが、どっぷりそのキャラクターとの恋愛を自身で妄想したりまでは出来なかった。
それはどうしてなのか。夢小説と乙女ゲームでは、何が違うのか。
いくつかの要因の中で一番大きな理由は、「そこにいるのが私じゃなかった」からだと思う。
夢小説のいいところは、しっかりとした設定をもった世界観の中でも、自分という存在が自由に生きることが出来る部分だった。
自分はその世界の主役ではなく、その世界に存在する1キャラクターとして生きられるのだ。
夢小説の元となる漫画やアニメの世界にはすでに主人公が存在していて、自分はただの登場人物でいられるのである。
夢小説の中の自分=ヒロインは、自分の好きな自分であれるのだった。
一方、乙女ゲームのヒロインは「主人公ちゃん」と呼ばれるのが当たり前なくらい、その世界の主人公なのだ。
キャラクターたちが生きる世界や、キャラクターたち自身を救うための使命や任務を何かしら抱えていて、それを恋愛と同時に達成しなければならないという、まさに「主人公」なのである。
一言でいえば、「すごく重たい」が、私の乙女ゲームへの感想だった。
それだけの設定を抱えた主人公ちゃんを、私は自分自身と思うことがどうしても出来なかった。
お話にのめり込めば込むほど、気付けば主人公ちゃんという存在をひとつのキャラクターとして認識して第三者視点で楽しんでしまうのだ。
自分がその世界の主人公になれるかどうか。
そこが夢小説と乙女ゲームの大きな差であると私は思う。
私に主人公らしい器があれば、乙女ゲームもしっかり自分として楽しめたんだろう。
きっと、私のように思う夢女子は少なからずいると思う。
このご時世、夢女子だというと、どんな乙女ゲームが好きかと問われることが多い。
そんなときに、夢女子なのに乙女ゲームを楽しめないことを悩んだり、口に出せなくて困ったという人もいるだろう。
そんな人たちに、夢女子だからって乙女ゲームを好きじゃなきゃいけないことは無いと声を大にして言ってあげたい。
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