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ずる休みのすすめ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:村井 美月(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
私はカナヅチだ。
全く泳げない。
小学校の時、水泳の授業で無理やり計測された記録は3mだった。
その話を友人にすると、「3mなんて、どうやったらそんな記録出るの?」と言われるが、記録の出し方は簡単。よーいどん、で後ろの壁を足で蹴り、そのまま頭の先から足の先までピーンと伸ばしてすいーっといく。息ができなくなったところで立ち上がると、だいたい誰でも3mだ。
 
ところで、私は幼いころからとても心配性な子供だった。
 
私「お母さん、あいりちゃん(幼馴染)から聞いたんだけど、私ってお母さんのお尻から生まれたの?」
母「うーん、まあちょっと違うけどそうだよ。」
私「それって、絶対痛いよね?」
母「うん、すごく痛いよ。」
 
その日、まだたった10年も生きていないくせに「産みの苦しみ」が怖くて怖くて仕方なくなり、トイレでうずくまって「いつの日か子供を産むこと」を一日中悩んだ。
それぐらい、小さい頃から要らぬ心配ばかりしていた。
 
加えて、私はものすごく頑張り屋だった。
 
ちょっと話がそれるのだが、小学校のころ私は「県内で最も治安が悪い」と言われていた地域に住んでいた。通っていた小学校も荒れ放題。窓ガラスが割れたり、防災用ベルが鳴ったりするのは日常茶飯事。学級崩壊していたクラスもあり、担任の先生は入れ替わり立ち替わりといった感じだった。とはいえ当時はそれが日常だったので「治安が悪いなあ」なんて思っていない。
しかし小学5年生になった時、進学予定の公立中学校を見学する機会があり、そこでの光景に衝撃を受けた。もう時効なので暴露するが、授業中に生徒たちが教室で飲酒・喫煙をしていた! もう一度言うけれど、彼らは中学生! 通っていた小学校でも掟を破る同級生の姿はたくさん見てきたが、さすがにこんなに深い負のオーラに直面したことはなかった。
その帰り道、私たちを睨みながら安全ピンで唇にピアスの穴を開けている学生たちを横目に、私は決意した。
「お父さん、お母さん。私、中学受験する!」
 
私は当時その小学校の中では「優秀」と言われていたが、勉強をしている人はほとんどいない小学校だったので、全国レベルでみれば平均以下。受験なんてできる学力は到底無かった。そのため、毎日放課後にバスに乗って塾通い。22時ごろに帰宅し、そのあとも寝るまで勉強。学年で中学受験をする人は数人しかおらず、「放課後プリクラ取りに行こうよ。また塾? ノリ悪いなあ」と言われるのもとても辛かった。
でも、頑張り屋だった私は、模擬試験で一度も合格判定Aが出たことのない(というか9割型F判定だった)難関校を目指した。相当プレッシャーを感じていたのか、二日に一度は殺される夢を見ていた。その頃についた「歯ぎしり」の癖は未だに治らず、この歳になっても悩まされ続けている。
 
心配性と頑張り屋の性格が組み合わさるととても厄介だ。
というのも、何事も自分の持ち合わせたキャパ以上に頑張り過ぎてしまうからだ。
 
私の友達のうち、何人か心の病にかかった人がいる。
彼ら彼女らの共通点を挙げるならば、例外なく「心配性×頑張り屋」。
誰よりも頑張るので周りからの評価は非常に高く、実際にとても優秀だが、曰く、その張り詰めた糸がある時突然ぷつんと切れてしまうらしい。
先日、あの人気俳優が自ら命を絶ってしまったニュースを聞いて、真実はわからないが、彼もきっと同じだと直感的に思った。
 
私もそうなりかけていた。
しかしそうならなかった。
 
その後、私はなんと、その難関中学に合格することができた。
合格してとても嬉しかったが、不安は消えなかった。というより、新しい不安が芽生えた。優秀な人たちが集まるその中学で、周りについていけなくなることを想像して毎日心配で押しつぶされそうだった。
 
入学したその年の夏、私が何よりも苦手な水泳の授業の時間がやってきた。前日から嫌で嫌で仕方なく、普段は弱音を吐かないのだが、その時ばかりは母に言った。
「はぁ、明日水泳の授業嫌だなぁ」
 
すると母が言った。
「そんなに嫌なら、休んだら?」
 
今思えば、そのたった一言がその後の私の人生を変えた。
「……休んでいいんだ」
 
何事も全力で頑張ってきた私。
「頑張らない」という選択肢があることを、その時に初めて知った。
そして、弱音を吐いてもいいということを知った。
 
それから、私は中学、高校と一度も水泳の授業に出ていない。(今思えば、よくパスできていた)
おかげで私は未だに3m以上泳げないし、あの時のように完璧な人間ではなくなってしまったが、生きていく上で(私にとって)一番大切な選択肢を教えてくれた母に心から感謝している。
 
人間には得意不得意がある。全部で一番になろうとしなくたっていいし、全部が必要ではない。社会に出てから、泳げないせいで困ったことは一度もないのだ。私ももし自分に子供が生まれたら、時にはズルしていいのだと教えてあげたい。
 
でも、あの頃から変わらずやっぱり未だに「産みの苦しみ」が怖くて、授かる予定もないのに出産の心配ばかりしている。そろそろ年頃ではあるが、子供を育てるのはいつになることやら……。
 
 
 
 
***

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2020-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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