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引越しは「人生のたな卸し」 悪夢にうなされ知った大切なもの


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:さくらしおり(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
「すごい荷物、まだ全然片付いてないやん!」
 
私は、引越しの手伝いをするため、妹の家を訪れた。
とうに、大半の荷造りが終わっているかと思いきや、ほとんど終わっていない。
先が思いやられる……。
 
私自身も、何度か引越しを経験しているが、引越しとは本当に大変な作業だ。
最も気が重くなるのが荷造り。
 
大量の荷物を、色々なところから引っ張りだし、捨てるもの、捨てないものに分別していく。
そして、捨てないとジャッジされたものを、ひたすら、ただ、ひたすら梱包していく。
 
特に、作業開始時は、終わりが見えず、心底、うんざりしてしまう。
引越しをしたいと思っても、その作業を思うと、億劫になる。
 
私の過去の引越しで、最も大変だった引越し。
それは、実家を手放した時だった。
 
生まれた時から、祖父母と共に、3世代で暮らしてきた家。
幼い頃からの思い出が、いっぱい詰まった家。
笑い声が耐えず、賑やかで楽しかった家。
 
毎日、たくさんの人が出入りしていた。
とても、とても大好きな家だった。
 
けれども、祖父母が亡くなり、父も亡くなり、母が再婚し、妹が結婚し……。
皆いなくなってしまった。
 
そこで、私たち夫婦が、実家に入った。
けれども、色々な問題が重なって、その後、2人は別々の人生を歩むことになった。
 
フルタイムで仕事をしながら、田舎の付き合いを1人でこなすのは、容易ではない。
また、1人で暮らすには、広すぎて落ち着かない。
そして、何よりも、元旦那との辛い思い出が出来てしまった。
 
実家を手放したくはないけれど、住みたくもないという矛盾した気持ち。
 
とりあえず、わずかな荷物を運び出し、都会で暮らした。
その間も、庭の手入れや風通しなどを行うため、片道2時間かけて実家に通いながら、どうしたものかと悩んでいた。
 
家は、人が住まないと、すぐに駄目になってしまう。
昔はあれほど好きだった実家も、空き家にしているうちに、1人で入るのさえ怖いと思うようになっていた。
 
2年が経過した頃、「もし、売る気があるのなら、売って欲しい」という人が現れた。
空けているよりも、誰かが住んで、また活気のある家になった方が良いと思い、ようやく、実家を手放す決心をした。
私には、とても大きな決断だった。
 
しかし、そうと決まれば、その後は早かった。
妹は、私に全て任せると言うので、3世代の荷物を、私の判断で処分した。
1つずつ、ゆっくりと見ていては、いつまで経っても埒があかない。
どんどん処分しなければ、片付かない。
家を空けなければならない期日は迫っているし、新しい住居に持ち込める量には限りがある。
 
途中から、私の感覚は、完全に麻痺していた。
本当に大切と思う僅かなもの以外は、次々と処分した。
 
祖父の北海道土産の熊の置物、祖母の着物、昔ながらの箪笥、写真、掛け軸、日本人形やフランス人形、父の大量の仕事道具、母が結婚時に持参した鏡台、そして、多くの食器類……。
 
荷物の整理中に、古物商という人が、どこからともなく現れて、人形が欲しいと言われた。
どうせ処分するより他ないのだからと、多くの人形を持ち帰ってもらった。
 
後から冷静になると、
「あれは、捨てずに、残しておいた方が良かったかも?」
「必要な人がいれば、使ってもらえたかも?」
と思うものも多々あった。
 
しかし、当時は、そんな気力も、体力も、時間もなかった。
大きなトラックに何台分だろうか、驚くような量のものを処分した。
 
やっとのことで、無事に実家を売却することが出来た時には、もう精根尽きていた。
 
しかし、ほっとしたのも束の間。
その後、私は、何度も、同じような夢を見るようになった。
 
細かな設定は毎回違うが、新しい家主に隠れて、密かに実家に侵入する夢。
いつもヒヤヒヤとし、後味の悪い気持ちで目覚める。
現実であれば、不法侵入だ。
 
家族が大切にした家を自分の判断で手放してしまったという、罪悪感のようなものが、私の中にあったのだろうか。
 
久しぶりに会った幼馴染に、その話をすると、「さぞ、辛かっただろう」と、彼女が、私よりも先に泣き出した。
そして、私もつられるように泣き、人目もはばからず、2人で泣いた。
 
それ以降、その夢は一切見なくなった。
私は、辛く悲しい思いを、誰かと共有したかったのだと思う。
そして、それが叶って、私の心は少し癒された。
 
あれから10年……。
 
当時の私は、家を手放すこと、ものを捨てることは、それに纏わる思い出そのものを捨てることのように感じていた。
とても辛くて、悲しくて、夢にまでうなされた。
 
けれども、今はこう思う。
 
家は器。一番大切なのは、そこに住んでいる人だったのだと。
 
そして、ものは、思い出を思い出しやすくするアイテム。
本当に大切なものは、手元に置くと良いと思う。
しかし、ものは、思い出そのものではない。
 
私は、たくさんのものを捨ててきた。
けれども、思い出は、消えてなくならなかった。
今も変わらず、私の心にあり続けている。
辛く悲しい思い出は、時と共に薄れていき、楽しく幸せだった思い出が、より鮮明に思い出される。
 
私のように、引越しで、多くのものを分別、処分しなければならない人もいるだろう。
 
そんな時、一番大切なのは、家ではなく、ものでもなく、そこに住む人と、思い出そのものだと思えば、引越しという「人生のたな卸し」が、少しはスムーズに進むのではと思うのです。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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