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メディアグランプリ

青年たちは湘南の畑でαをつなぐ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:粘土団子(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
今の時代はカオスだ。ポストコロナで、私たちの生活は激変した。世界は新しい形をもとめて大きく動いている。経済の混乱が続くだろう。未来がどうなっていくか、誰にもわからない。
そんな、先の読めない不安定さの中で、最近私が出会った農業青年たちのことをお話ししたい。
就農や農業で企業を目指す青年らの目標、心意気、理想の中に、この時代を生きる私たちが必要とする「そういう生き方もいいかも」と思える、何かを感じたから。
 
はじまりはコロナだった。「この先、食糧価格は上昇する!」と日々不安に思っていた私は、できる範囲で食糧自給率をあげよう! 農業に関わってみよう! と思い立った。
 
そういうことで、農業に関心をもつようになった私は、近所で有機農業をやっているI農場さんのところで、援農ボランティアをはじめた。
 
藤沢市の北部は、里山がまだ残っていて、キジを見ることもある。田んぼが広がる、目久尻川の近くにIさんの農場がある。
Iさん宅の庭は広い。高い大きい木が何本かあって、ほぼ森だ。キャンプ場のような感じがする敷地内に山小屋のような、ミーティングの施設がある。
先日、青年がポツンと一人「山小屋」の前にたっていた。いつもは数名の友達と一緒に、ボランティア活動にくるのだが、コロナの影響で、その日は彼一人だった。
彼はバイクで、片道2時間かけてやってきたという。私は感心した。往復4時間かけて農作業をしにくるわけだ。
私は彼に聞いてみた。「すごいエネルギーですね。往復4時間。それで農作業、つまりと労働しにここへ来るわけでしょ?」
「そうですね、でも今食糧大変じゃないですか?日本の食糧自給率も低いし」
「40%くらいかな?」
「37%ですよ。そういうのを、僕らはもっと考えなくてはいけないと思うんですよね」
青年は調理師さんなので、食糧の安全も含めて、日本の食糧事情を憂いていた。そして仲間と一緒に、農業関連の企業を立ち上げることを考えているといっていた。
今時の若い子は偉い。「すごい、偉い、応援します!」と思わず言ってしまった。
 
Iさんは就農を希望する研修生も受け入れている。研修生は1年間の研修を終え、就農の資格を得る。年齢制限はないようだが、30代くらいの人が多い。
彼らは、今後農業で自立できるように、週3〜4日、1日8時間くらい、農業を勉強する。農作業終了後、山小屋でお茶をしながら、ボランティアが喋っている間も、研修生は黙々と、その日の仕事内容をノートに書き込んでいる。
研修生たちは、みんな仕事を持ちながら研修に来ている。県外や市外から来ているので、通うのは大変だと思う。農作業は、健康な人であればできることだが、楽な仕事ではない。よほど熱意がないとできないことだ。
 
研修生の青年たちは、目標があるからだろう、みんな「前を向いて生きています」感があって、穏やかだが、エネルギーは満たされているような感じがする。
研修生の30代の女性、Kさんは、以前企業につとめていたが、「心が折れてしまった」そうだ。でも研修で農作業をするうち、心が回復したといっていた。農業には、ヒーリング効果があるのかもしれない。
 
農家のIさんがよく話をされることがある。
「農地を持つというのは責任を負うことだ」というIさんのポリシーについて。(名義は農家のものであっても)農地は農作物を作り、良い食を皆さんに届けるために自分が預かっているものだから、自分が好き勝手にしてよいものではない、ということ。
農業は儲かる仕事ではない、けれどでもお金に換算できない価値もある、というIさんの農業への思い。
その他にも農業を取り巻く問題、農家の現実、食の安全性、そんな話をよくされる。
 
物事を損得で考える癖がついている私は、「農家さんって、私たちの食のことも考えてくれていたんですか?」とびっくりした。
研修生の皆さんも、農家のIさんの思いをつないでいってくれるとしたら、私たちにとってもありがたいことだと思う。
 
I農場での就農研修を観察していてわかったことだが、I農場での研修では、今の時代、絶滅しそうな「師弟関係」が機能しているように感じる。
普通何かを学ぶとき、たいてい私たちは「お客様」という立場になる。けれど研修生はお客様ではない、Iさんの弟子なのだ。
ある日、一緒に用水路で苗の箱を洗いながら、研修生のKさんがこんなことを話してくれた。
Kさんは自分の将来の方向性に悩みがあり、それを仲間に話したそうだ。そしたら、普段強面の研修生の先輩が「お前には俺たちがいる、だから頑張れ」と励ましてくれたそうだ。すごく嬉しかったとKさんはいっていた。
Oさんは、ママさん研修生。県外から何時間もかけて藤沢までやってくる頑張り屋の女性だ。Oさんは、農家のIさんのことを「お父さん」と呼んでいる。
農家のIさんにとっても研修生にとっても、お互いは、ゆるい身内なのかもしれない。
大人になってから、誰かと親密な関係を築くことは難しい。この殺伐とした現代の日本で、技術だけでなく、「人が人に育てられる関係、仲間同士が育ち合う関係」は、面倒くさいと思う人は多いかもしれないが、価値のあることかもしれない。
 
私の仕事は草を刈ること。畑の空気は気持ちいい。空の下、お日様の光で元気に生えた草をかる。草の匂いや土の匂いがする。頭の上にいたお日様が、終わるころには、傾いて、畑がオレンジ色の光と、紫色の影になる頃、農具を担いでみんなで一緒に「山小屋」に帰っていく。
労働の後の心地よさ、夕暮れの田舎道を歩きながら、エネルギーがチャージされるのを感じる。
Iさんは作業後に私たちに野菜をくれる。光と土、風、人の手、時間、そういうものが全部かかわってできた有機野菜だと思うと、食べるときの思いもまた違ってくる。
 
農業の現状は悲惨だ。ここ藤沢でも耕作放棄地だらけで、産廃業者のゴミ捨て場になってしまった畑もある。
それでも一方で、農業を始めたいと、新規に参入する青年たちも多いのだ。
彼らは新しい視点で、新しい農業を作っている。そこには今までの農業にない未知数の、なにか新しい価値のあるものが含まれているように私は思う。
実際、Iさんのところで研修を終えた研修生が、近所でNPOを立ち上げ市民農園をやっている。市民農園の他にも、食と教育とレジャーとそういうのを組み合わせたような、今までの農業の枠を超えた事業展開をしているようだ。
新しい風は、きっと吹いてきているんだろう。
 
 
 
 
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2020-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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