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生きることは、サービスだ。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:たる(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「生きることは、サービスだ」
 
ノートをパラパラと見返すと、この4か月間、わたしを優しく励ましながら、伴走してくれた言葉が、そこにあった。
 

 
「誰かの心に届く文章が書きたい」と以前から考えていたわたしは、少し仕事のペースが落ち着いた4月から、天狼院書店のライティング・ゼミを受講している。
 
その日の講義は「書くことは、サービスである」というテーマだった。
 
書き手の自己満足ではなく、読み手がどう受け取るかを常に意識して、読みやすくおもしろいと感じてもらえる文章を書こう、という内容は、わたしの心に深く残った。
 
書く、話す、作る。
 
書くことは読み手への、話すことは聞き手への、何かを作ることは鑑賞する人や愛用する人へ向けての、サービスだ。
 
それならこの社会には、他にも色んな形のサービスがあるのかもしれない。
 
わたしはそんな風に思った。
 
わたしが働く児童福祉の仕事は、こどもたちに楽しい遊びや居心地のいい空間というサービスを提供している、といえるだろう。
 
サービスは「相手を喜ばせること」と言い換えることも、できるかもしれない。
 
講義が終わると、わたしはワクワクした気分になった。
 
日々の生活の中で、周りにいてくれる大切な人たちに、ちょっとでも喜びや心のゆとりを感じてもらえるようなきっかけを贈れたら、なんて素敵なんだろう。
 
気がつけば、わたしはペンを走らせていた。
 
「生きることは、サービスだ」
 

 
サービスは相手がいて、初めて成立する。
 
そして、一方的に与えるだけのものではない、と教えてくれたのはこどもたちだった。
 
わたしは今、しょうがいや発達に特性のある小中高生が、放課後や夏休みに集まる、小さな事業所の代表をしている。
 
「たるさん(わたしのあだ名)、遊ぼー!」
 
今日も、こどもたちの明るい声が響く。
 
わたしたちは、個性豊かなこどもたちに喜んでもらえるように、さまざまな遊びや工作などの活動を準備して提案する。
 
その日の気分やタイミングによって、こどもの興味は移り変わるから、なかなか大変だ。
 
時には、用意していた活動とは、全く違うことをすることもある。
 
こどもたちとアイデアを出しあって、いっしょに創作することもあるし、家や学校での悩みや相談に、じっくり耳を傾けることもある。
 
そんな中でも、楽しく遊べた時、居心地よく過ごせた時、こどもたちは最高の贈り物をくれる。
 
「めっちゃおもろいやん! もっかい(もう1回)やろうよ」
 
「あぁ、ここにいると落ち着く。まだ帰りたくないなぁ」
 
言葉が話せない子も、表情や仕草で、わたしたちに喜びを伝えてくれる。
 
こどもたちは、お返しをしているつもりはないだろうが、誰かのためにしたことは、そうやって返ってくることもある。
 
それが今度は、わたしたちの喜びになり「また頑張ろう」と力が湧いてくるのだ。
 

 
そんな風に、お返しの笑顔や言葉が届いたら、もちろんすごく心が弾む。
 
でも、こどもたちはそこに存在しているだけで、わたしたちに、かけがえのない喜びを与えてくれている。
 
この時代に生まれ、さまざまな特性や背景を抱えながら成長し、わたしたちの事業所を選び、今日も通ってきてくれることに、心から感謝している。
 
もしかしたら、大人も含め、人は存在するだけで、誰かに喜びを与えているのかもしれない。
 
他人にとっては何でもない、ある人の何気ない一歩も、その家族や仲間にとっては、最高に嬉しい一歩なのかもしれない。
 

 
わたしの父は、進行性の病により長期療養中で、病院のベッドに寝たきり状態だ。
 
もう口から言葉を話せない彼だが、目線で挨拶をしてくれたり、右手をわずかに動かして意思表示をしてくれる。
 
ただ生きてくれていることが、わたしたち家族にとっての何よりの喜びだ。
 
「赤ちゃんを授かったよ」
 
今年の6月、そんな父に、妻が妊娠したことを伝えると、とても穏やかな表情で、わたしの目をじっと見つめてくれた。
 
「いっしょに生きような」
 
わたしがそう言うと、父は右手をゆっくり挙げた。
 
赤ちゃんの出産予定日は、12月24日。
 
その日まで父が生きているかは、誰にも分からない。
 
ひとつ確かなのは、まだこの世の光も浴びていない赤ちゃんの存在が、父の生きる希望になっていることだ。
 

 
「相手を喜ばせること」がサービスなら、父や赤ちゃんは生きていることで、わたしたち家族にサービスを贈ってくれている、ということができる。
 
そして、わたしが誰よりもサービスを贈りあっているのは、きっと最愛の妻だろう。
 
仕事で関わるこどもたちや仲間、友人や両親からの言葉にも、よく感動するわたしだが、1番心を温めてくれるのは、いつも妻の言葉だ。
 
「いっしょにいてくれて、ありがとう」
 
忘れ物が多く不器用なわたし、プロポーズの時、バッチリ決めたスーツのチャックを閉め忘れていたわたし、いきなり文章を書き始めたり、突飛な行動をとるわたし、そんな夫を笑顔で認めて、感謝の言葉まで贈ってくれる。
 
わたしの家族や友人も大切にしてくれること、料理がとても上手いこと、色んな記念日を忘れず、いっしょに祝ってくれること、妻のいいところを挙げればきりがない。
 
でも、わたしにとっては、彼女が隣にいてくれる、ただそれだけで、十分幸せだ。
 
「いつまでも側にいてください」
 
神聖な夜の教会で、ズボンのチャック全開男が投げかけた言葉に、笑って頷いてくれた人を大切にしないと、きっとバチがあたる。
 
ドライブやプレゼント、妻が笑ったり楽しんでくれそうなことを、色々考えて実行しているけど、それでも全然サービスが足りないだろうな。
 

 
誰かを喜ばせるためのサービスが、自分に返ってくることがある。
 
サービスがどんどん連鎖して、遠くにいる、名も知らない人を喜ばせることも、きっとあるだろう。
 
ただ生きていることが、誰かにとってのサービスになっているかもしれない。
 
時には、大切な人たちとゆっくり過ごす時間や、生き方をじっくり見つめるひと時のような、「自分へのサービス」も忘れずにいたい。
 

 
わたしたちは、生きてゆく。
 
目の前の人を喜ばせる方法に、試行錯誤しながら。
 
自分に何ができるかを、常に問いかけながら。
 
派手なことや、大それたことでなくても、小さなきっかけや、心づかいでいい。
 
大切な誰かに、喜びを贈り続けよう。
 
生きることは、サービスなのだから。
 
 
 
 
***

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2020-08-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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