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メディアグランプリ

「家族ごっこ」な休日の後は、いつも少しだけしんみりする。


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:島田佳奈(ライティング・ゼミ特講)
 
 
今の夫であるAくんと再婚したことにより、私には「息子みたいな存在」ができた。
私もAくんも再婚同士。ひとつだけ違うのは、私は子供がいなく、Aくんは元妻のところに息子がいることだ。
 
「たまに会う『息子』が認めてくれること」
それは当時、Aくんが再婚相手に望んでいた、唯一の条件だった。
そんな思いを抱いているとは知らず、Aくんと交際がスタートして数ヵ月が経った頃、私はAくんの息子と3人で会うことになった。
 
息子がいることは、初対面から聞いていた。ことあるごとに息子の話題を出すあたり、Aくんの息子に対する愛情の大きさがうかがえた。元妻とは離婚しても、息子と離れ離れになることは、身を引きちぎられるくらい辛かったのではないかと想像した。
 
人ではなく犬だが、私にも一応連れ子のような存在はいる。
息子同然に可愛がっている愛犬と恋人が不仲になってしまったら、私は男より家族である犬を選ぶだろう。だからこそ、犬が彼に懐いてくれるかは気になったし、息子と私が仲良くしてくれることを願うAくんの気持ちも、理解できた。
 
小学5年生の息子との「はじめまして」は、とある牧場だった。私の連れ子(愛犬)も同伴した。
動物好きの息子に対し、父であるAくんは「犬に会わせる」名目で私との対面を果たした。さしずめ私は「犬の飼い主」および「父ちゃんのお友達」として紹介されたわけだ。
 
何度目かの「親子対面への同伴」時、息子はそっと私に訊いてきた。
「父ちゃんとつき合ってんの?」
またあるときは、私がはめている指輪を指さし「それって父ちゃんとペア?」などとツッコんできた。
いずれも、父ちゃんがトイレなどで席を外したスキのことだ。
 
子供の前で体裁取り繕っても仕方がない。他の誰でもない、Aくんの息子だからこそ、嘘はつきたくない。私は正直に「イエス」と答えた。
 
「父ちゃんの友達」として紹介されていた私が「父ちゃんの新しい恋人」であることを、息子は初対面のときからうっすら認識していたようだ。
 
イマドキの小学5年生は、大人が思うよりずっと世の中をわかっている。同級生の中にも両親が離婚している家庭は少なくない。親に恋人ができたり再婚したりという「環境の変化」なども、現代の子供たちにとっては珍しくないのかもしれない。
 
子供にとって一番の不都合は、自分の生活が脅かされることだ。親の勝手で転校させられたり、生活レベルが著しく低下するなど、保護者の存在なしには生きられない未成年者である以上、否応なく振り回されてしまう。
 
だからといって、子供のために親自身の人生を棒に振ることが正義だとは思わない。子供の前で両親がケンカばかりするくらいなら、離婚してそれぞれが笑顔で子供に接するほうが、誰にとっても幸せだと思う。
 
その代わり、別れた後は、父と母、合わせて2倍の愛情のシャワーを子供に注げばいい。両親が揃っていない境遇を「帰れる家がふたつある」メリットくらいに捉えてくれれば、子供にとっても不幸ではないだろう。
 
私の勝手な持論だが、子供はできるだけ多くの大人に可愛がられ育てられるのがベストだと思っている。私自身、幼少の頃は父が工場を経営していた関係で、多くの従業員や住み込みの大人たちに可愛がられていた。
 
現在、息子には同居するママと祖父母、近くに住む叔父がいる。他に月イチくらいで会う父ちゃん、そこに便乗している私も、息子を可愛がる大人のひとりだ。
幸い、息子は私にも懐いてくれた。Aくんと同棲中の家に何度か泊まるうちに、少しずつ父親抜きで会話もするようになった。
 
美味しいものを食べたり、映画を観たり、野球観戦をしたり、これまで何度となく3人で楽しい時間を過ごしてきた。迷子にならないよう付き添ったり、家に泊まれば着替えを用意したり、布団の上げ下げを手伝わせたり……母親のような「世話」も、私にとってはすべて楽しい「家族ごっこ」だ。
 
Aくんと再婚してからも、3人の関係は変わらない。父から再婚のことは事前に報告(許可?)されているのだろうが、息子から私に対しては、何のリアクションもなかった。
 
息子は現在、中学3年生。初対面の頃から20センチ以上高くなり、私の身長を追い越した。子供特有のソプラノボイスも声変わりして、喋る話題も言葉遣いもぐっと大人に近づいてきた。
子供から少年へと成長した息子は、彼女ができたり部活に精を出したり、青春のど真ん中を駆けている。もともと穏やかな性格なので特に反抗期もなく、心も体も真っ直ぐに育っているようで微笑ましい。
 
子供は天使だ。一挙手一投足が愛おしい。血縁でなくても、父親の遺伝子を感じる息子は、可愛くてたまらない。
だがコロナ流行による緊急事態宣言中は、息子に会うことができなかった。たとえ血縁でも別居の家族との再会は、不要不急ではないので自粛した。
 
先日、久しぶりに泊まりに来た息子は、また背が伸びていた。だけど父親に甘えたり私にイタズラしたりするさまは、小学生の頃とぜんぜん変わらない(笑)
 
いつも息子が帰った後は、部屋がガランと広く感じる。使った布団を片づけたりしながら、楽しかった時間を思い出す。そして、少しだけしんみりする。きっと父ちゃん(Aくん)も同じ気持ちだろう。
 
私は息子と家族ではないが、大きなお友達としては一番、息子のことを愛していると自負している。
子供のいない私に子連れの家族気分を味わわせてくれるのは、父親の隣で生きることを、息子が受け入れてくれたからだ。
 
K(息子)くん、私と仲良くしてくれて、ありがとう。
「家族ごっこ」させてくれて、ありがとう。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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