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本はジャケ買い?

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:高岡恵子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「なぜその本を買いますか?」
星の数ほどあると思われる本の中から、本好きの皆さんが本を選ぶ基準はなんですか?
評判の本だから?
レビューの高い本だから?
新聞に載っている本の広告で購入することもよくある。
いいなと思った本が新刊かと思いきや結構前の本だったりする。
今まで見つけられなかったのがちょっと悔しいなんて思うことがよくある。
 
特に買う予定がなくて、本屋さんをぶらぶらするときに手にする本を選ぶ基準は?
私の場合、本の装丁のデザインで手にとる本を決めることが多い。
特に同じジャンルの本の場合は、とりあえず表紙に惹かれる方の本を選ぶ。
本を手にとる前段階で、表紙って当たり前だけど重要な役割だと思う。
 
「牧野千穂」 と言う人をご存じだろうか?
きっと知らないと答える人が多いと思う。
が、本が好きな人ならばほとんどの人が実は知っている=目にしているはずだ。
彼女は、本のカバー画を描いている画家さんである。
岡田准一さんが主演の映画「お・と・な・り」 や、沢尻エリカさん主演の「クローズドノート」 の原作本の表紙、「羊と鋼の森」 の表紙…などなど。
新⭐︎ハヤカワ・SF・シリーズや、「浅見光彦」 「信濃のコロンボ」 などで知られる内田康夫さんの推理もの本のカバー画も多い。
その数たるや、かなりのものである。
 
彼女が描く絵で使われる主な画材は、パステルである。
パステルとは小学校のとき使ったコンテのような見た目の粉を固めたもので、そのまま描いたり手でのばしたりして描く。
描き方によっては淡く水彩調になったり、油絵のように重厚になったりする。
ドガの踊り子やルドンの絵を思い浮かべていただけたらわかりやすい。
彼女の描き方はどちらかと言うと油絵のように重厚である。
何度も重ねてキャンバスに色を作る。
例えば普通赤いものを描こうとするとき、赤の同系色を使って色を表現しようとする。
が彼女の場合、まず紙に補色である緑をのせて描いているらしい。
そこに何度も何度も様々な色を重ねて重ねて、最終的に赤になる。
この複雑な色の重なりと陰が、様々なカラクリがうごめくミステリーの内容と相待って、ミステリー作品のカバー画が選ばれることが多いのかもしれない。
表面に見える色だけでは、その絵のもつ全てが見えてこないのだ。
過程が結果を導くものもある。
 
もうひとつ、パステルの特徴できっちりとした線の絵ではなく、境界線が少しあいまいなフワフワとした絵になる。
絵の主役が動物のものも多く、そのふわっとした動物が人間的な動きをする。
だから不思議な絵になる。
闇の中、向こうに何かが隠れて見えるような絵。
小説のカバー画の絵は、まるでその本の内容が一筋縄ではいかないのを暗示するような絵なのである。
 
カバー画だけでなく、絵本も描かれていて、知っている限りでは5冊出版されている。
不思議な空気感漂う「モカシン靴のシンデレラ」 ねこの子の冒険を描いた「うきわねこ」 深々とした雪景色が描かれている「ゆきがふる」 怪談絵本の「くうきにんげん」 最新はかわいいねこの「ちびねこチュチュと、スプーンのあかちゃん」
これは、カバー画とは違ってミステリアスな中にも可愛らしさがあるものも多い。
が、やっぱりどこか不思議な感覚。
絵本は、最初から最後まで彼女の絵を堪能できるので余計に彼女の世界観がよくわかる。
 
有名な作家や画家を、人はみんな好きかというと、そうではない。
有名だからではなく、自分の好みで好きなのだと思う。
ゴッホやピカソがミシュラン5つ星なら、彼女の絵は私の中ではミシュランビブグラマンだ。
手が届かないほどではないが、質は最高である。
 
年に一回くらい京都と東京で個展をされている。
京都の個展しか行ったことがないけれど、町屋の古風な会場で展示されている。
その場所では、モノクロの絵も展示されていて彼女の作風を知ることができる貴重な場所だ。
 
こんなにたくさん作品があるのに画集が出されていない。
それがとても残念なのである。
どうすれば、彼女の作品集が手に入るか?
どんなに好きだからと言っても、全ての作品をカバー画のためだけにジャケ買いするのも経済的にも無理である。
みんなに彼女のことを知ってもらいたい。
知ってもらって、ファンを増やして、たくさんの声が上がって画集が発売されることを切に願っているのである。
要は画集が欲しいのだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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