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捨てられないものが暴く現実


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:深田 千晴(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
何を隠そう、私は整理整頓が人一倍苦手である。
自分のものが管理できず、気がつくと収納スペースいっぱいに、ものを脈絡なく詰め込んでいる。
実家に住んでいた頃は、そんな私を見るに見かねて、母がよく声をかけてくれていた。
「お帰りなさい。……カバンは? 置きっぱなしはだめよ」
「文房具が戻せるように、ここラベル貼ったからね」
「今日はお休みだから、お部屋の整理を一緒にやりましょう」
それでも、30年間、すっきり綺麗な部屋の主にはなれず、ここまで来ている。
そんな私なので、一人暮らしをはじめたときにも実家の自室は片付けきれず、多くの私物が残されていた。
しかし、先日、実家を訪れたとき、話の流れで、数年ぶりに自室に足を踏み入れた。(子どもを必ず連れて行くので、実家では普段あまりゆっくりできずいつもリビングにしか滞在しない)そしてどういうわけか、8割がものの2時間で片付いてしまったのである。
部屋にあったものの6割くらいは、即断即決でゴミに出した。
母も驚いていた。8年も物置になっていた部屋が、すこしすっきりしているのだ。
「いつから、片付けられるようになったの?」
「本当だねえ、いつからだろう」
ゴミを分別し、まとめながら、私はぼんやりと考えていた。
なぜ、片付けられなかったのだろう……と。
 
捨てたものは多岐に渡る。
まず、ずっと昔の化粧品やアクセサリー。8年前のものは、さすがに使う気にはならない。次に、CD。据置きのオーディオで歌詞カードを見ながら聞いていた時代が懐かしい。しかし今ではそういう聞き方はしない。聞きたい音楽はサブスクなどで聴けるので、もういらない。
大学や高校の授業ノート、教科書なども捨てた。当時は、一生懸命勉強していて、受験やテストが終わってもまた見返したいと思っていたのだろう。けれども、実際、見返したことはなかった。
友達や同僚、お客様からのメッセージも沢山あった。使うことなくしまい込んだ小さなプレゼントもあった。捨てたら、もう取り返せないものなので悩んだけれど、結局これらもすべて捨てた。
今でもやりとりする人もいるが、もう会わなくなった人からのものがほとんどだ。こうして思いをやりとりした瞬間があったことをありがたいな、と感じた後、どこかで幸せにやっててくれたら、それで良いと自然に思われた。
 
「ものは残らなくても大丈夫だよなあ」
そういえば、昔はそういう風に考えなかった。
 
私はコンプレックスの多い子どもだった。だからこそ、拠り所が沢山必要だったのだろう。
お金を出して買ったものや、多少の努力をした成果が見えるもの、誰かから思われた証の手紙やプレゼント。
実家にいたころの私は、勉強は多少できたけれど、見た目もダサいし、面白いことも言えないので友達も少なく、かと言ってそれを巻き返すくらいの努力をすることもできなかった。まわりを見ては、自分はやっぱりダメなんだな、魅力がないんだなと、無意味な確認をする日々だった。本当は、誰もが憧れるような人になりたかったのに。
 
捨てられなかったものたちが暴いたのは、過去の私の弱みだった。
 
実家を出て8年が経つ。その間に、結婚して、子どもが生まれ、生活も付き合う人も着る服も大事なものもすべてが変わった。そうしたら、いつの間にか実家にいたころの自分とは、違う考えの人間になっていた。
違う考えで実家のものたちに向き合えたから、たくさんのものをあっさり捨てられたのだろう。
「あなた、成長したのね」
そう言った母が私を見る目は、娘というより、頼れる友人に対するようだった。
周りを見回すと、リビングや洗面所、押し入れなどにも、おそらく私が家を出てから、いや、子どもの頃以来使っていないようなものが、多く残されているようだ。母も、捨てられないものがあるのだろう。
 
ダンボール一箱分ほどの私物を、今の住まいに送った。子どもに読ませたい絵本、仕事で使えるダイバーズウォッチ、エコバッグ、鉛筆削り。これらは1年以内に、具体的な使い道を思いつくものだ。
そして、一番多く残ったものは、本だった。読みたい、読むべきだ、と思っているけどまだ開いていない本。読み終わったけれど、いずれ参照するかもしれない、と残している本。
もちろんそういう本は今の住まいにも沢山ある。
 
今の私が捨てられないものは、きっと本なのだろう。
確かに、勉強が足りないことが、コンプレックスだ。来年は復職するのに。
 
本たちを積み上げてみると、私の背丈を超えた。弱みは、ちょっと上から、私のことを見下ろしているようだ。
こいつを倒すためにも、少しずつ、学んでいくしかない。
人生はいつだって、これからだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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