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ネタ探しは命を助く


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:和田友紀(ライティング・ゼミ夏期集中コース)
 
 
2017年1月、人間ドックを受けた。
 
30歳からフリーランスで働くようになって、会社の健康診断は無くなり、仕事も忙しくて10年ほど、検診なんて受けたこともなかった。
 
乳がん検診は40歳で受けられるのだが、2014年に40歳で出産した私は、乳がん検診を受けられなかったのである。
授乳中もマンモグラフィーは受けられないので、出産から2年経って、話のタネに受けてみようと思った。
それに、市報で人間ドックを受けたら国民健康保険から2万4千円の補助が出ることを知ったのも受診を後押ししてくれた。
 
ネットで近くの日帰り人間ドッグを探し、予約する。
 
マンモグラフィーは噂通りだった。
「イタタタタ……、い、いたいってば!!! ちぎれるー!」
そんなに、あんなに、引っ張ってギューっと挟まないと診れないものなんだろうか?
「これは、ネタにできるぞ」と心のどこかで笑っていた。
 
バリウムも初体験。ドロッとした液体を飲み干し、検査台の上へ。グルングルンと検査台が回される。気持ち悪い。
「これもネタになるかな?」
 
いろいろ検査して、お昼ご飯のチケットもらっておしまい。
 
しばらくして、検査結果を聞きに行く。
 
「右胸に石灰化が見られます」
 
石灰化ってなーに???
<石灰化とは乳腺の中にカルシウムが沈着した状態。良性と悪性がある>
 
「念の為、がんセンターで針生検を受けてください」
 
「がんセンター? がんなの? 死ぬの?」
ネットで必死に情報を探す。その頃わたしが調べた情報だと20パーセントくらいが悪性で、80パーセントは良性だった。
 
姉に相談すると、「わたしも毎回引っかかるけど、大丈夫だよ。よくあることだよ」
他の友人なども、口を揃えて「よくあること」と言ってくれる。
 
「まぁ大丈夫でしょ。わたし運がいいし。まさか20パーセントには入らないでしょ」
この時はまだ、余裕があった。
 
がんセンターは駅からバスで10分ほどの高台にあり、隣には巨大な病院がそびえ立っている。「大きい病院だなぁ、私には縁がないとこだな。」そう思いながら入ったがんセンターは薄暗く居心地の悪い場所だった。
 
そして針生検というのを受けた。
結構な太い針が胸に刺されて、バチンという大きな音を響かせて、組織をとられた。
痛かった、怖かった。
「これもまぁあまり人が体験していないこと、ネタになる」
 
年が明けて針生検の結果を聞きに行った。
呼ばれてドアを開けると看護師さんが明らかに冴えない顔をしている。
「あぁ、ダメな方だったな」
 
案の定、医者に「初期の乳がんです」と言われた。
「詳しくは人間ドックを受けた病院で聞いてください」
 
「あーそうですか、ここではいろいろ教えてくれないんですね」
そう思いながら心にモヤモヤとした雲を抱えて帰宅した。
ショックというよりは、夢を見ているような、他人事のような、うわの空な気持ち。
 
その後人間ドックを受けた病院で、「非浸潤性乳管がん」と告げられる。
乳がんにも色々あって「非浸潤がん」は、乳腺の乳管などの管の中に見つかるがんで、管の中にある限り、転移はしない。
 
「超初期です、手術をすれば取り除けます」
 
ただ、その病院では手術できないので、がんセンターの横に巨大にそびえ立っていた病院を紹介された。
まさか縁がないところと思っていた病院に私が通うことになるとは!
 
巨大病院に初めて行ったのは2月末だった。
 
乳腺外科の担当医はイケメンで、「もう、これは先生に会うことを楽しみに通おう」密かに心に決めた。
 
それから検査をして全摘が決定した。それが3月半ばだった。
全摘が決定したけど、この病院には乳がん患者が埼玉、山梨、などからも来ていて、先生の手術予定が詰まっている。
手術日は6月22日になった。
 
3ヶ月も待つの? 不安を抱えたままの毎日。
テレビで連日報道される、元アナウンサーの乳がん闘病生活。
「普通に仕事してください」と言われたけど、きちんと片がつくまで中途半端に仕事もできない。
 
霧深い樹海に放り込まれたような日々だった。
 
手術は乳腺外科医と形成外科医の二人。乳房再建の準備を同時にするのだ。
 
麻酔を吸ったら、本当にほんの数秒で意識がなくなった。
まずは乳房摘出。
そして形成外科医が胸にエキスパンダーという皮膚を伸ばす装置を
入れて傷を縫ってくれた。
 
目が覚めて数日は動くこともできなかった。
入院中に、闘病中だった元アナウンサーが亡くなった。
私は初期だから大丈夫、と言い聞かせても不安が募った。
 
夫は毎日お見舞いに来てくれて、友達も来てくれて、食事も美味しくて、フリースペースで出会うおばさまとお友達になって、無事に退院の日を迎えた。
 
その後摘出した細胞を全て検査したところ、「浸潤がん」が見つかり、抗がん剤をやることが決まったが、その体験と乳房再建については、また今度書こうと思う。
 
それから3年経った、検査の結果は全く問題なくて良好。健康そのものである。
 
ネタを仕入れようと人間ドックに行ったら乳がんが見つかった。
あの時人間ドックを受けなければ、がんのステージが上がって胸が痛くなるまで気がつかなかったかもしれない。やっぱりわたしは運が良かった。早期発見できて助かった。
 
女性の皆様、ネタ探しに1年に1度は乳がん検診を受けましょう。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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