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ファイナルファンタジーI Iのおかげで、物理の偏差値が1年間で40上がった


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記事:タマひろし(ライティング・ゼミ夏期集中コース)
 
 
物理 0点 偏差値35。
高校3年生の冬、大手予備校の全国模試で、私は生まれて初めて0点を取った。
 
高校時代、私は勉強をせずにゲームばかりしていた。成績は転がるように落ちていった。3年生になっても、受験への切り替えができず、ひどい点を取り続けた。特に物理のできは酷かった。
 
理系に進もうと思っていた人間にとって、物理0点は致命的である。
受かるような大学もなく、私は両親に泣きついて浪人させてもらった。
 
「一年だけ」
私は両親から時間をもらった。
 
浪人が決まり、私は予備校のクラス分けテストを受けた。持てる力を出し切ったが、どの科目も惨憺たる結果だった。
 
物理は一番下のクラスだった。
当時、私が覚えていた物理の公式は運動方程式「F=ma」の一つしかなかった。武器が一つだけでは戦いようがない。当然の結果だった。
 
心機一転。この一年間をかけて、全ての教科を学び直すぞと決めた。
特に物理については、力を入れようと思った。
気合が漲っていた。
 
しかし、予備校の物理担当講師が講義の初めに言った言葉は、私の期待していたものとは違った。「この時点で、このクラスにいる生徒はまず1年では入学できない」と断言された。そのため、2カ年計画で講義を進めると宣言された。
 
現実的な言葉なのかもしれないが、私には受け入れられなかった。私には一年しか時間がなかった。
最初の講義を終えて、講師に相談に行った。なんとしてでも一年で合格できるだけに力をつけたいのだと伝えた。
 
講師は、とりあえず基本を身につけることが何より大事だと言った。
そういって、最初の講義で与えられた薄っぺらな基礎編の演習ドリルを繰り返しやるように促した。
 
言われた通り、基本を大事にした。テキストをよく読み、わからないことが無いようにした。そして、ドリルの問題を繰り返し解いた。他の科目も勉強しなくてはならなかったが、最低1時間は物理と時間と決め、毎日繰り返し解いた。やがて少しずつわかってきたような気がした。「F=ma」以外の公式も身についてくるのがわかった。
 
予備校では、毎週、全クラス共通の試験が行われていた。テストの結果はそれぞれ科目ごとに上位得点者の名前と点数が張り出されていた。予備校に入学して1ヶ月後、上位クラスの成績優秀者の名前が並ぶ中、最下位クラスの私の名前が載っていた。
この方法で間違いがない。私は確信した。
 
迷いはなくなっていた。予備校の講義をよく聞き、繰り返し問題を解いた。受験に必要な公式や定理を一つ一つ身につけていった。
入塾から3ヶ月後には真ん中のクラスに、さらに秋には最上位クラスに上がった。
 
私は毎日ドリルをやった。上位クラスに移っても、自分には基礎がないことを知っていので、油断せずに基礎編のドリルを繰り返しやった。基礎編を完全に身につけてから応用編のドリルに手を伸ばした。応用編の問題は、多少変化があったが難しいものではなかった。
 
大学受験において、物理というのは、公式や定理をいかに理解し、それを適切に使いこなせるかが問われる科目である。それほど多くはない公式や定理の使い方をいかに習熟するかが鍵なのである。
 
当時、このようなことも知らなかったが、私は数々の公式や定理を扱い方の習熟度を上げていった。習熟度を上げれば上げるほど問題が解けるようになるのが楽しかった。
物理の習熟度を上げながら、あるゲームを思い出した。
 
ファイナルファンタジーI I(F F2)である。
F F2は、1988年に発売されたファミコン用ロールプレイングゲーム(R P G)だ。
様々な挑戦的な仕掛けやシステムが導入されていたことで、当時話題になった。ゲームを開始して、いきなりパーティが全滅させられるという絶望的な始まり方と同じくらいに当時話題になったのが、キャラクターの成長システムだった。
当時も今も、武器の種類にかかわらず、武器の攻撃力の分だけキャラクターの攻撃力が上がるというシステムを使用しているものが多い。
つまり、槍の達人であるはずの戦士の武器を、槍から伝説の剣に替えた瞬間、攻撃力が上昇するのである。現実世界であれば、このようなことは起こらない。伝説の剣の切れ味がいかによくとも、剣の扱いに慣れていなければ、攻撃力は上がるはずもない。しかし、そのような夢のない面倒くさいシステムを導入するようなゲームはそれまで存在しなかった(し、今もほとんどない)。
 
この「夢のない面倒くさいシステム」を取り入れたのが、F F2である。
剣なら剣、槍なら槍。それぞれの武器をこれまでどれだけ使ったかによって、熟練度が上がるシステムだった。習熟度が高くなると、そのターンに攻撃できる回数が増えるのだ。伝説の剣を手に入れても、これまで剣を扱ったことのないキャラクターであれば、攻撃力が下がってしまう。剣による攻撃の威力を上げるためには、熟練度を上げなくてはならない。繰り返し、剣を振るわなくはならない。繰り返すことによって熟練度を上げることで強くなるのだった。
 
物理もF F2と一緒だったのだ。
公式や定理も使えば使うだけ熟練度が上がるのだ。私は、ゲームのキャラクターになりきって、各公式や定理を自由に使えるまでに繰り返し問題を解いて、熟練度を上げ続けた。
 
12月、大手予備校の全国模試を受けた。物理の偏差値は78まで上がっていた。
熟練度を上げたおかげで、物理は最も頼れる武器となり、大学受験というボスを打ち破ることができた。
 
これも、「熟練度を上げることで強くなること」を学んでいたからだ。
ありがとう、ファイナルファンタジーI I。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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