歯医者で罪と罰を考えた
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記事:武内大輔(ライティング・ゼミ通信限定コース)
罪を犯したら相応の罰を受ける。
自分の汚い部分を見つめなければならない。
それは、つらい。
お金で汚い部分を見なくていいならどうだろう。
それは、ラクだ。
でも、それで良いんだろうか。
「こんにちは〜」
地元の歯医者の先生は、今日もにこやか。
いつもあいさつしてくれる。
なんというかスマートな先生。
地元の歯科医院は治療用の椅子が3台ある。
決して大きくはないがいつも患者さんがいる。
自分は子どもの頃からここに通っていた。
虫歯の治療もしてきたし親知らずをここで2本抜いた。
歯医者が怖いとか痛いとかいうイメージはあまりなかった。
なぜか。地元のスマート先生が優しいからだ。
汚い部分をあまり患者に見せない先生だった。
「こんにちは〜」
「お口開けてくださいね〜」
「ではこの辺やっていきますね〜」
スマート先生はあまり詳しく説明しない。
気づいたら口の中に器具が入り治療が始まる。
顔にタオルをかけられるから口内で何が起こっているかは分からない。
院内のクラシックB G Mが耳に響くだけだ。
「終わりました〜」
「お口ゆすいでくださいね〜」
治療にどれくらい時間がかかるかも言わないから急に治療が終わる。
どこを治したんだろう。
分からないので歯科医院の駐車場で自分の口内を見てみた。
しかし車のミラーではあまり良く見えない。
「ちょっともやもやするけど、まあいいか」
そのような流れで週一回、2ヶ月くらい治療してもう来なくていいですよ。となる。
なんかよく分からないけど終わったからしばらく来なくていいんだな。
結局、どこが悪くてどのように治療したかはわからないままだった。
地元を出てしばらく経ち、スマート歯医者に通わなくなった。
でもさすがにそろそろ行かないと口内がヤバい気がしていた。
会社の保険で無料歯科検診が出来るから近場の歯医者に行った。
雑居ビルの一階を間借りした歯科医院で椅子は2台。
なんというか間に合わせで作ったような歯科医院である。
B G MはF Mラジオでちょっと騒々しい。
そして先生がおじいちゃん。
歯科助手と談笑する声は自分が待っている待合室にまで響いてきた。
「ここちょっと心配だな。おじいちゃんだし」
と思った。
治療が始まりおじいちゃんに口内を見せる。
「あーはいはい」
「これはちょっとめんどいな」
そういうこと患者の前で言わないでほしい。
「じゃあレントゲン撮ります」
言われるがまま撮影。
写真を見ながらおじいちゃんの解説が始まった。
「ココとココが治療必要だね」
「アソコはまだ大丈夫だと思う」
「抜いてない親知らずはそのままで大丈夫」
正直、驚いた。
歯医者ってちゃんと説明する所もあるんだ。
地元のスマート先生はここまで詳しくなかった。
おじいちゃんは全部正直に言う。
「今日はココやりますよ、黒くなってるでしょ」
事前にしっかり説明。
ある意味嫌だ。
いまからそこ痛くなるってわかるじゃん!
口内に器具が入る。
「うわー! 黒いところ削られてるー!」
説明してもらったから何が起きているかよくわかる。
歯を削る器具が虫歯にしみて痛い。
背中にじっとり汗をかく。
「はい、終わりました」
「ほらココに詰めものしたよ」
「はひ、はりはとうほさいまふ」
口を開けたままミラーで見せてくれるので気の抜けた返事しかできない。
しかし口内で何が起きているかはよくわかった。
スマート歯医者とおじいちゃん歯医者を比べて考えてみた。
スマート歯医者は知らなくて良いことは教えない。
あえて隠すことで患者は何が起こっているかわからない。
痛みを予告されないから患者としてはラクだった。
おじいちゃん歯医者は全部言う。
虫歯という汚い部分も全て患者に見せつける。
患者としてはおじいちゃん裁判官から判決を待つ被告の気分である。
「被告は歯を磨かない罪によって歯医者にて罰を受ける」
「具体的には黒くなっているココ。歯を削る精神的苦痛と治療費2000円」
「週一回通うように」
自分で犯した罪だから甘んじて受けるしかない。
虫歯は自業自得である。
歯を磨かない罪を重ね、歯医者で痛い思いをする。
スマート歯医者はあまり罪を責めなかった。
罪を認める前に治してくれていた。
スマート歯医者はある意味、お金で解決出来る。
そして汚い部分を見せない。
おじいちゃん歯医者は罪と向き合うことを促した。
おじいちゃん歯医者は裁判官だった。
何が罪で、どのように償うかを教えてくれた。
どちらの歯医者もいいと思う。
ただ、個人的には罪を知りたい。
虫歯という罪を知ることで、治療という罰を受け「もうしません」とけじめをつけることにつながる。
治療は痛いけど、素直に罪を認め罰を受けることが必要だと思う。
だから、またおじいちゃん歯医者に通おう。
***
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