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全力で中学生やったら青春映画みたいになった思い出

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全力で中学生やったら青春映画みたいになった思い出
 
記事:福田大輔(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
僕が中学2年生時のクラスで先生を泣かしてしまった出来事があった。
ここから翌日に掛けて起こったのは何の青春映画だ?! と思えるほどにドラマチックだった。
 
では、どうして先生を泣かせてしまったのか。
発端は数名のクラスメイトが家庭科の授業中にお菓子を食べているのがバレてしまったことだ。そこから余罪を追求されたところクラス全員がクロだった。
そして僕らに反省の色はない。だってやってはいけないなんて承知の上だから。
 
放課後のホームルームで先生は言った。
 
「あなた達は数学のK先生の授業ならそんなことはしないだろう。怒られたら怖いことを知っているから」
「どうせやるなら誰が相手だろうとやりなさい!」
 
「卑怯者!!」
泣きながら教壇を叩いて先生は教室を去っていった。
 
これが規則だからダメなんてことだけで怒られていたら僕らには何も響かなかっただろう。その言葉と涙には僕らに対しての悔しさと情けなさが痛いほどに読み取れた。
 
教室はしばらく静寂に包まれていた。
ホームルームは終っていたが誰も席を立とうとしなかった。
 
そんな中で誰かがポツリと呟いた。
 
「駅伝で優勝しよう」
「うん、優勝して名誉挽回しよう」
「優勝して先生に喜んでもらおう」
 
そう、明日は校内駅伝大会なのだ。
 
はっきり言って駅伝大会に向けてのクラスのモチベーションはバラバラで一体感とはほど遠い状態だった。
半数以上の女子は体育系のイベントに興味なし。イキってる男子の多くが全力で素直に取り組むことがダサいと思っている。こんな事がなければただの行事として終っていたはずだった。
 
そこから行事だから何となく走る駅伝大会が、名誉挽回するために優勝しようと意識が変わったのだ。
ただし、過去に2年生のクラスが優勝したことは一度もない。ずっと3年生のクラスが優勝しており、実は簡単な目標ではなかった。
 
だが優勝すると決めてからの行動力は凄まじかった。クラスを先導して一体感を作り出してくれたのは、駅伝にやる気がなかった女子だった。
 
まず、クラス全員でメッセージを書き込んだ横断幕と襷を作ることになった。みんな帰ろうとせず作業に没頭していた。僕もギリギリまで粘ってから部活へ行った。
 
そして部活が終わった後にバスケ部員としての罰も科せられた。バスケ部で同じクラスのT君とKさんと僕でコート100周を言い渡された。隣を見ると同じクラスのバレーボール部員も走っていた。
 
練習後の罰で追い込まれていつもよりクタクタになった。だけど行かなくてはいけない場所がある。
 
そう、クラス全員で神社に必勝祈願に行くことになっていたのだ。クタクタなのに。
 
おぉ、強制じゃないのにみんな来てる。こんなクラスじゃなかったぞ。おかしい、クラス史上一番まとまっている。
 
そして、土曜日の校内駅伝大会当日。
昨日作った横断幕を掲げてみんなで掛け声を出した。おかしいぐらいクラスがまとまっている。だけど一体感があるのは思いのほか楽しい。
 
いよいよ優勝して先生に喜んでもらうための駅伝がスタートした。3学年各5クラスが同時にスタートして同じコースを3周する。
 
僕らは1周目が終わった時点で3位だった。いい位置に付けている。
 
そのことを確認してから学校を出て、自分が走るコースのスタート地点に向かった。僕が走るのは最後の2キロ、つまりアンカーだ。
 
あとは自分が走る出番までひたすら待機。ここからは情報が何も入ってこない。みんなを信じるだけ。本当にそんな都合よく行くのか。いや、もしかするとじゃないか。
 
「そろそろ来るから準備してー」
 
胸がドキドキしてきた。期末テストの順位を見るなんて比にならないほど期待と不安が入り混じっている。
 
来い来い来い来い、1位で来い!
念じているとやがて人影が見えてきた。
 
おいおい、もしかしてるじゃん
 
遠くから見えてきたシルエットは僕のクラスの女子だった。ぶっちぎりで1位じゃん。後ろから追いかけて来る姿も見えない。必死に頑張って走ってる。
 
そのまま1位でしっかりと襷を受け取った。生まれて初めて襷に乗っかった想いを感じ取れた気がした。
 
もう後はただひたすら走るだけ、襷を届けるだけ。
 
終わらせちゃうのが何かもったいないな
 
先生喜んでくれるだろうか
 
みんなやれば出来るじゃん、まとまるじゃん
 
神社に行ったかいがあったかな
 
アンカー走らせてくれてありがとう
 
ゴールする時はどんなポーズにしようかな
 
あっという間に学校が見えてきた。あとは学校を外周したらゴールだ。
 
みんな、ありがとう。そしてごめんなさい。
1番オイシイ瞬間を頂きます。
 
その場にいる全員の注目を浴びながら片手を上げてガッツポーズしながらゴールした。
あぁ、ヤバい。
 
よっしゃぁーー!
叫びながら近くに見つけたクラスメイトに自然と両手でハイタッチしていた。
 
2キロを全力で走ったからフラフラだけど知ったこっちゃない。とにかくみんなの顔が見たい。めっちゃ笑ってる。めっちゃ嬉しそう。
 
それから放課後のホームルーム。先生は笑顔で教室に入ってきた。
「まさか本当に優勝するなんて思ってもなかった、凄いことしたね」
そう言って先生からまさかのご褒美が。クラス全員にケーキを買って来てくれたのだ。
 
先生に喜んでもらおうとして、僕らもしっかりと喜んでしまった。優勝したこと、先生が嬉しそうだったこと、あとケーキのおかげで。
 
以上が何となくで終わって薄い思い出になるはずだった駅伝大会。それが青春ドラマみたいになった中学の思い出。
 
あの時の僕らはクラスで一体となって、前のめりで学校行事に取り組んで、先生も含めたクラス全員で喜びを分かち合って全力で中学生をやっていた。
 
「全力でやるのって面倒くさい」
 
「他の人はやってるんだから私は別にいいじゃん」
 
「マジになっちゃって何かダサい」
 
そう思ったり感じたりするのはすごく分かる。僕も引いて物事を見れちゃうのでそういう感情になるのはすごく分かる。
 
でも、そういう感情のまま参加したり手を抜いて取り組むと薄い思い出しか残らないこともすごく知っている。それは学生だろうと大人だろうと変わらない不変の事実だ。
 
学校、サークル、会社とシチュエーションは様々あるが前のめりで取り組むことをお勧めしたい。前のめりが難しければ流れに身を委ねるでもいい。結果的に上手くいくいかないは関係ない。絶対に楽しくなることを僕は知っている。
 
全力は楽しいですよ。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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