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メディアグランプリ

「アウトプット」は「こころの処方箋」という話

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:五十嵐 浩志 (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
2年間、精神疾患で苦しんだことがある。一般的には「鬱病」と呼ばれる。
当時勤めていた会社の基幹システムに不具合が生じて、そこに接続していたクライアントにも不具合を与え、長い間迷惑をかけていた。そのために昼夜休日時間に関係なくクライアントからは緊急対処要請が入り、その対応を半年間担当していた私はついに睡眠障害に陥り、そのまま転がるように鬱病へ突入していった。
 
元来、長年仕事にやりがいを感じて生きてきた自分にとって、「鬱病」という言葉は自身のボキャブラリーには無縁と思っていた。そういったことを軽視していたのだ。が、しかしだ、こんなに辛い病気があったのかと初めて思い知らされた。自力で体を起こすことすらままならず、心療内科で処方される数々の薬は本来の効用を超えた副作用を身体に与え、睡眠導入剤と呼ばれる薬は、その名前の通り睡眠導入後は効果を継続せずに、覚醒を何度も招くものであった。
 
当然のことながら、まともに仕事を続けることも出来ずに休職せざるを得ない状況に陥った。こうなるとまさに負のスパイラルへまっしぐらだ。ネガティブなことばかりが頭の中を駆け巡り、一生このまま立ち直ることもないまま死んでいくものだと思っていた。家族や友人はこんな自分を心配して接してくれるものの、この病気には経験した者でないと解らない独特な虚無感がある。周りの親切心には申し訳なかったが、どれも助けにはならなかった。そんな中、ウェブの世界が一つの居場所を与えてくれた。同じ病気を経験してきた人たちが、「鬱病」をサブジェクトにしたブログを掲載していたのだ。加えて、「鬱病」にまでには至らないものの、こころの不安に関する題材を基に、相談者にアドバイスを提供するサイトは山のようにあった。自分と言えば、ほぼ自主的には活動しない脳ミソを抱えて、何もすることがない時間を過ごしながら、来る日も来る日もそんな鬱病ブログに目を通していた。そんな時ふと思った……何故この人たちはブログを書いているのだろうかと。しかもそれを人に読んでもらうために、自分の鬱病をウェブ上で公開しているのだ。SNS音痴の自分にとっては、健常な状態でもそんなことを考えていなかったせいか、目的がよく理解できなかった。
 
しばらくの間、そんな日々を過ごしながら少しずつではあるが外を出歩けるようになってきた。病気が回復基調に変わり始めたのだ。と言っても、普通の状態に戻るにはまだまだだ。主治医にも時間がかかるので焦ってはいけないと告げられていた。ある日の夕方、マックで100円コーヒーをすすりながら、いつものようにボーっとしながら鬱病ブログに目を落としていた。いったい自分は何を求めてこんなことをしているのかと考えた。病気でネガティブなことばかりを考え続けて、論理的な思考をしていなかった人間に鬱病ブログが気づきを与えてくれたのだ。なんでもいいから思いついたことをできるだけ論理的にアウトプットしてみろと。使っていなかったモレスキンの高価なハードカバーのノートを引っ張り出し、頭に浮かんだことを書き始めた。何もやる気が起きなかった人間が、不思議と書き始めるとアレコレ出てくる、出てくる。時には殴り書き状態で、論理的思考とはかけ離れた内容もあった。勿論、病気が治ったわけではないから、ネガティブなこともたくさん書き出していた。過去を後悔し、現状を嘆き、将来を悲観した。それでも正にこれは、アウトプットは、自分のこころの処方箋となっていたのだ。薬の服用も継続していたが、効用はアウトプットの方がはるかに優れていた。
 
今になってその頃のアウトプットを読み返すと、自分のこころの不安定な動きが良く分かった。たくさんの不安定さが収斂されて、一つの安定した考え方を導き出したりする。それを繰り返していると幾つかの安定した礎みたいなものが出来上がる。その後もアウトプットは大袈裟になり、自分の今後の生きるための指針まで作り上げようとしていた。自分で作った15の項目から成る指針は、自分のサラリーマン人生にもピリオドを打たせ、死生観までをも変えることになった。
 
自分の病気体験がアウトプット(書くこと)を誘発し、それが何か生きるための糧になってきたのは事実である。特に人に読んでもらうために書いたことはなかった。これからもあまりそれは考えていない。しかしながら、文章を書くスキルは身につけたいなと思っている。ただ単に自己満足のためである。カラオケ好きの人が、プロを目指すことはなくても上手く歌いたいのと同じようなものかもしれない。第一回目のライティング・ゼミによると、私は最も成長性が期待できない文系のオジサンである。それでも書き続けることには変わりはないと思う。4か月間続くゼミを楽しみながら、これからも勝手に書いていく。ただ、スキルは上げたい。
 
 
 
 
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2020-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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