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メディアグランプリ

ゆるく在ることが難しいジダイの、小さな悪あがき。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:エリイ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
好きな人ができました、ごめんね。
 
1ヶ月ぶりに「元気? おいしいもの食べよう!」と連絡した私に返ってきたメッセージ。
 
あれ、あたし好きって言ったっけ?
驚きとも悲しみとも悔しさとも分類できない、中途半端なもやもやため息がマスクの中に充満する。
 
彼とはいわゆるマッチングアプリで出会った。
両者の目標は「出会い」である。
 
初対面後、コロナの自粛要請が本格化し、直接会うことは控えていた。
それゆえ連絡は断続的。
それでもタイミングが合うときは、ソーシャルディスタンスを死守しながら散歩し、好きな映画や音楽、おすすめの本の話をした。
そして「あの映画を観たよ。面白かった〜」なんていうメッセージも後日交わした。
 
表面だけ見れば、恋愛のあれこれの進捗としては悪くなかったと思う。
 
でも、私は「これからの彼」としてはあんまり考えていなかった。
私には数年ぶりの恋人探しだったので、どうもその感覚が戻ってこない。
好きってなんだっけ? こじらせ30代のそれである。
 
彼とは話も趣味もそれなりに合うし、
彼も私自身に対して興味を持ってくれている。
何よりそんな遠くない場所に住んでいるから、コロナが落ち着いた頃には「ちょっと一杯飲みに行こうぜ」もできそうなご近所さん感覚だった。それ以上ではなかった。
だから、私は常に適度な礼儀正しさを保ち、
かわいらしくふふふと笑ったり、甘えた素振りを見せたりしなかった。
 
一方、彼のことを思うに、年齢的にも、そして過去の恋人とのことを聞いて想像するに、結婚相手を探していたはずだ。
そう、だから、これでいいのだ。
来るべき結末が、きっちり来たのだから、これでいいのである。
 
じゃあ、なんでこんな文章を書くまで自分の中での気になりゴトになっているのか考える。
蚊に刺された場所のように、掻きたくない! 忘れておこう! と思っているのにふとした瞬間に湧き上がるこのモヤモヤの理由について考えている。
 
最初に断るが、ゴールなき行動は、野蛮だし、非効率だと思っている。
目標の達成には、目標を定め、その状態をイメージし、逆算をしてから細かな達成に落とし込み、その達成を積み重ね、定期的に振り返りをし、進捗の状況によってきちんと微調整をかけていくことが大事だ。
新規営業を6年やった私は、実体験付きでこう思う。
 
目標とそれを叶えるための施策の意義や効果を上司に説明し承認を得た後は、行うこと一つひとつが進捗しているかしていないか、間違っているかいないかを判断し、行動する。
「楽しそうなんで、やりたいです。雰囲気で進めてます。いけそうです!」などと報告するもんなら、そりゃ叱られる。仕事では当たり前だ。
 
そういう社会生活での当たり前がある一方で、多くの人が自分のプライベートな空間や心はそれから解放されているはず。
 
面白そうだからこの映画が観たいな。
季節が変わったから、ウィンドウショッピングがしたいな。
おいしいスイーツが食べたいな。
目的も気兼ねもなく、友人と話したいな。
こういう望みを叶えることは、「意味がない。目測が甘い」などと咎められるものではない。
 
私が彼を「これからの彼」として、ターゲットにしなかった理由もきっとこんな感じ。
ゆるく、たまに連絡を取れる良い距離の仲で続いたらいいかな、としていた。
 
だから、ショックだったのだ。私の中では、拒否されない領域のものだったから。
男女としてこれからを考えられない対象とは、今後つながっていても意味ない。とある日突然ピシャリと言われたから。
 
一方で、冷静に考えるとマッチングアプリは、「結ばれる」というゴールに向けたある種の達成ゲームだ。
ログインをすると私に興味を持った人の数が可視化され、彼らにメッセージを送るように言われ、日々小さな達成を重ねなければいけない。当然結果が求められる場である。
 
あぁ、そうか。そもそも私みたいなゆるく人と繋がりたい感覚の人が使うことが間違っていたのだ。
 
春頃から自粛を要求される生活では、常に「不要不急かどうか」の判断に頭がいっぱいで、プライベートな空間や心まで、気ままな選択ができないようになっている。
 
仕事、恋愛ゲーム、趣味プライベート。
 
白黒決めなければいけないことの境界線が、どんどんプライベート空間を侵してきていて、なんだか疲れた。解放されたい。
そんな気持ちが、私が人間関係に求めるものにも影響していたのだ。
ゆるさが欲しかった、余白が欲しかった。
 
さて、彼にどう返事しようかと迷った。
友達の立場として、片思いが実るのを応援しているね! と言っても、スマホで送る文章じゃ、なんだか負け犬の遠吠えっぽい。
とはいえ、残念な気持ちを含んでいるような湿っぽい内容じゃ、それは全くもって真実ではない。これではオンナが廃る。
 
ちょっと考えて、
「素敵な報告ありがとう。暑いから日々が続くから体を大事にね〜」
少し経って、それにこう付け加えた。
「そういえば聞きそびれていたんだけど。在宅ワーク中におすすめのマウス、品名と型番なんだっけ?」
 
そして彼から「笑」スタンプ付きのありがとうと該当のマウスのURLが送られてきた。
 
これが最後のやりとりだった。
これが彼とゆるくつながりたいと望んだ私の、最後の悪あがきだった。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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