メディアグランプリ

アラフィフから始めた「デッサン」


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐竹隆(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私のコンプレックスは、絵が苦手、文字がきたないことである。
 
結婚式の芳名帳や冠婚葬祭の袋、会議室でのホワイトボードでの書記など、文字を書くことがある。隣にきれいな字があると、負けた気がしてつまらなくなる。
 
小学校の頃に、兄と一緒に習字教室に行った。社会人になってから、ペン字の通販教材を買った。どれも長く続かない。うまくならないまま、50歳を迎えようとしている。
 
昨年の12月に、自宅で1冊のデッサンの本を手にとった。家人が購入したものだが、数カ月間、本棚に置いてあるだけで、使っている形跡はない。
 
その本の序章には、「絵を描くのに、センスや努力はいりません。複雑に思える奥行や光と影といった表現には、どれも描くためのコツがあります。それがわかれば、誰でも簡単に絵が描けるようになります」と書いてあった。
 
なんか、嫌な感じを思い出した。
 
私は大学で建築を学んだ。絵が苦手の私は、パース図にも苦手意識があり、当時高価なコンピュータソフトのCADを使っての図面やパースを描いた。先端なソフトを使うことで、自分の苦手を気持ちも技もカバーしようとしていたことを。
 
絵が描けると、商品開発やアイデアを披露するときなど、「どんな形で、どんな場面で……」というのが雰囲気などもひと目で伝わる。文字は汚くても、絵でカバーできれば挽回できるのでないだろうか?
 
この本にしたがって、朝の10分間コーヒーを飲みながら、A4のコピー用紙と2Bの鉛筆と消しゴムを用意して、遊び半分で始めてみた。
 
まずは、線や丸三角四角の形の練習。対象物をよく観察して、球体、円すい、円柱、直方体を組合わせて描いてく。ものに構造があることを、改めて知る。建築をかじったことがある自分としては、恥ずかしい。
 
デッサンなので、鉛筆の濃さで明暗や遠近感も表現できる。鉛筆の硬さで、質感も表せる。見えたままを写すだけでなく、ロジックがあるということを知った。
いろいろわかると、楽しくなる。週に3日は、デッサンの時間を取れるようになっている。家族に見せるのも楽しい。
 
デッサンをしていて、4つの場面があることに気づいた。
 
頭の中が静かになって集中しているときと。2つ目は、他のことに気を奪われているとき。3つ目は、奪われていると気づくとき。4つ目は、集中に戻ろうとするとき。これがサイクルになっている。
 
このサイクルは、瞑想と同じだ。
 
私には、毎朝、5分間の瞑想の習慣がある。3日坊主でもよいからと、始めたものだが、鳥の鳴き声や自分の呼吸、背中の違和感などに意識が行くときもあれば、今日の午前中にメール送らなければならないとか仕事のことが浮かぶことも多い。これで悟りを開けると思ったこともない。前日飲み会で沢山のアルコールを摂取したときでも、朝の瞑想は気持ち良いこともあれば、座っているだけで吐き気もともない瞑想どころではないこともある。続けいていると、毎回瞑想の違いがわかる。違いがわかる男になれたことが、続ける力を与えてくれた。
 
子供が美大に入ったこともあり、先日、美術館にバウハウスの展示を見に行った。バウハウスは、大学の建築の授業で名前だけ知っていた程度で、造形教育の手法やロジックの教え方の展示などもあり、食い入るように見ていた。そのときは、なぜ、大学でもっとデザインの勉強をしなかったのか、と後悔と残念な気持ちになったが、その時は興味がなかったのだ。
 
月に1回は、3時間くらいのデッサンもするようになった。ものの形をとらえ、奥行き、明暗、質感、そして、光りと影を描いていく。流れがわかるとデッサンっぽく描けてきているような気がする。当然、3時間も集中できない。うまく書こうすると、終わったら何を飲もうかとか、いろいろ考えてしまう。そのことに気づいて、また、集中して形を見て描いていく。
 
こうしてなんとか、デッサンも8ヶ月以上続いている。特に人に見てもらうためにデッサンを描いていない。ただ、ものの見方が少し変わってきたように思える。
 
バウハウスの教育は、「既成概念や先入観を払拭し個々人の創造性を引き出すこと」を目的に設立されたという。
 
なぜ、50歳間近でデッサンを始めたのかと聞かれると、「自分の創造性を引き出したいために、デッサンをしている」とバウハウスの風にドヤ顔で応えようと思っている。
 
上手くはなれそうにないが、今朝もコーヒーを飲みながら、この丸みがイマイチ描けなかったと、家人に見せて、違いがわかる男を楽しんでいる。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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