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片思いだったランニングに見切りをつける


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記事:三浦加織(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
2年近く毎週欠かさずランニングをしてきた。
夏には暑い日中を避け、雨の日には隙間を縫うように、自分に課すように走って来た。走るのは大の苦手だった。だからこそ克服したくて、あきらめずにアプローチを続けて来た。
 
ランニングは、元はといえば、好きなロードバイクに乗る体力をつけるための手段だった。
本当はいつもロードバイクに乗れれば良かったのだ。ただ、乗るにはそれなりの整備、準備がいる。タイヤに空気を満タンに詰め、ライトの電源を確かめ、サイクルコンピューターが無事作動することを確かめ、水分・非常食の準備をし、万全の用意をする。それにかなりの方向音痴なので、情けないことに一人では長距離は走れない。だから一緒に走ってくれる友人を探し、一緒にプランを練って、という段取りがいる。それも叶わず一人の場合でも、勢いで乗るにはかように結構カロリーがかかることなのだ。
なので、たまにしか乗れないロードバイクの体力不足を解消するために、選択したのがランニングだった。
 
その点ランニングはロードバイクと違い、準備もそう要らず、ウェアに着替えたら思いついた時に走れるから、体力をつけるのには好都合だった。自分でもランニングは体力づくりの最良のチョイスだと思っていた。
「ランニングはいいよ、ヨガやフィットネススタジオのように決まった時間に行かなくったっていい。泳げるプールを探さなくてもいい。子育てをしながらでもちょっとした時間に出来る。それにお金もかからない。体力がつくし、そして痩せる、コスパがいいスポーツだよー」なんて周囲には偉そうに吹聴していた。実際にはそんなことを言えるようなカッコいいランナーなんかではなかったのに。
 
思い起こせば、子供の頃からランニングは大の苦手だった。校内のマラソン大会では、部活の後輩の痛々しい視線を今も鮮明に覚えているくらい、のろく不格好で悲惨な有様だった。
その苦手さは大人になった今でも変わらず、2年かけてやっと10km近く走れるようになったレベルである。それでも、ここまで走れるようになったこと自体が上出来だと思い、自分で自分をほめていた。ただ、距離はまだしも、せめてもう少し速くとかラクにはならないものかなあ、といつも首を傾げながら走って来た。
「継続していればそのうち速くラクに走れるようになるよ!」、とランニング好きの人たちは口を揃えて言ってくれた。だからいつかきっと颯爽と走れる日が来る、そう信じていたが、春夏秋冬走れども走れども、一向にラクになる気配がない。
 
2年近く走っているくせに、相変わらずペースは1km8分弱という遅さ。追い越されるのは当たり前で、追い越せるのはウォーキングのお年寄りだけという遅さ。私の知り合いのランナーでこんなに遅い人はいない。周りを見渡しても、顔をタコのように真っ赤にしながらヒーヒー走っているのは、私だけのような気がした。カラフルなウェアで颯爽と走る女性を背中に見ながら、なんで私はこうも遅くていつまで経ってもラクに思えないんだろう、おかしいなあ……と思っていた。
それで、少しでもラクになれれば、とマラソン教室を探したこともあったけれど、どれもタイミングが合わないので、その代わり、ランニングのコーチングをしてくれるアプリをダウンロードして、叱咤激励されながら走るプログラムもやってみた。それでも毎週ラクな気持ちで走れることはなく、相変わらず苦痛でならなかった。
 
それでも、私にはランニングしかなかった。それしかないと思い込んでいた。せっかく好きになろうと努力してるんだし、というもったいなさや悔しさもあったんだろうと今は思う。
せめて、好きになれなくても、何とか嫌いにならないように、思いつくアイデアは色々試してみた。ランニング雑誌を買ってフォームを研究してみたり、気を紛らわすために音楽を聴きながら、お笑いを聴きながら、友だちと話しながら、など努力はそれなりにしたつもりである。
それでも一向にランニングはこっちの好意にはなびいてくれない。
 
ある時「ランニングが全然楽しくない……」そう嘆く私に、「それってあなたが短距離選手だったからじゃない?」と知人に言われた時、「ああそうだった!」とバンバン膝を叩きたくなった。妙に合点がいったのである。
私は学生時代陸上部に所属していたが、コーチからも見放されるほど走りこめない、200m走も出来ない、100m走専門の選手だったのだ。
同僚によると、私は速筋優位タイプなのだろう、短距離選手だったのなら、きっと遅筋はあまり発達していないのだろうね、とのこと。なるほど、体質と同じように、筋肉の質によって得意不得意はあるのだそうだ。私は200mも走れないから、超速筋優位タイプ、とでもいおうか。そんな私にましてや長距離をや……。
 
一所懸命やっても相性が合わないことってあるのだった、例えスポーツでも。私の努力が足りないんじゃなくて私にはランニングは似合わなかっただけなのかもしれない。ということで、やっと2年間のモヤモヤに終止符を持てたような気がした。
 
じゃあ相思相愛になれそうな、相性が良さそうなスポーツはあるんだろうか……と考えあぐねいていた時、Twitterで、ある有名人の決まり文句が目に留まった。そこには「筋肉は裏切らない」と書いてあった。今までは何度も目にしたそのフレーズが、今回はしっかりと目に焼き付いた気がした。そうだ、そういえば知り合いのマッチョな人もそう言ってたっけ。筋肉はウソつかないって。
さては、これも何かの縁。私の次のマッチング相手は筋トレなのかい?
 
せっかく2年間も何とか仲良くなろうと試行錯誤してきたランニングをあきらめるのか、と少し後ろ髪を引かれる思いだったが、改めて思う。相性が合わなかったんだよ、こんなにアプローチしていたのに好かれなかったんだよ。未練がましくいるより、引き際良く、いい関係のまま終わらせた方がまたいつか別の形で仲良くなれるかもよ?
ということで、私はあっさりとランニングに見切りをつけ、筋トレに鞍替えすることにしたのである。
 
試しに早速近所の公営のジムに行き始めた。筋トレはいい。負荷を自分で決められるし顔を真っ赤にしてヒーヒー言うこともない。自分のペースで何回と決められるし、ジムのマシンもやめたければいつでもやめていい。のろまな自分を惨めに思うこともないのだ。
まだ始めて2か月も経ってないけれど、楽しいし体の肉付きが締まって来る手ごたえもある、体力も維持できてる。まだお試し期間だけれど、今度こそは好きになってもらうことは出来なくても、せめて友だちにはなってもらえそうな予感。これが相性が良かった相手なのかも? 信じていいの? こんにちは、筋トレ。
 
だから最後に、ありがとうランニング。残念ながら私の片思いだったみたい。君には振り向いてもらえなかった、だけど、この2年間、歳の割に体型を維持できているのは君のおかげだったよ!
 
そうして少しずつだけれど、友だちになれると信じて、今日も私は筋トレをする。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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