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子育ては自分再現ドラマか?


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:スミオク ミホ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私は現在、6歳と5歳の年子を育てている。
6歳の娘は平均より小柄、5歳の息子は顔大きめの平均児で2人のサイズ感が近いこと、顔が似ていることからよく双子に間違われる。
 
どちらにしても、背丈の似た幼児2人を連れて歩いていると「おかあさん大変ねぇ〜」と言われる。
「はい、大変です!」少し前まではそう答えていた。本当に大変だったから、笑って答えるようにはしていたけれど否定はしなかった。
常に息子がくっついていて、食事の準備など家事の最中はもちろん、トイレも1人で行けない有様。
2人ともお風呂は遊び場だと思っていて嫌がることなく入ってくれるタイプだったが、自分は見守りと遊びの付き合いに徹しているため、顔もロクに洗えず。つまり、洗顔料を使っている時間がないから化粧はできなかった。
ゆっくり買い物なんて、もちろん行けない。食品は宅配サービスに頼り、家と公園を往復する毎日。独身の頃に通った小洒落たカフェやショップからは遠ざかった。
育児に疲れた様子というのは自然に発生するのだなと、髪ボサボサ、どすっぴん、適当すぎる服の自分を見て気がつく……。
 
しかし私は在宅ワークをしていたため、子どもたちの睡眠時間が減ってくると仕事ができなくなってきて、甘えん坊たちを保育園に入園させることにした。
案の定2人は、登園時に毎日ギャン泣きした。娘は半年、息子は2年半ほど毎朝グズっていた。家に帰ってから、園でのことを聞いてみてもモゴモゴと口籠ってしまう。
 
甘えん坊ってこともあるけれど、これは私に似て、おとなしくて恥ずかしがりのタイプかな……特に娘に対しては同性なこともあって、似た性格なのだと思っていた。運動は苦手でお絵かきばかりしているところもそっくり。
 
小さい頃の自分のおとなしい性格は好きではなかった。言いたいことがあっても声に出して言えなかったし、何事にも自信なく、遠慮して生きていたように思う。成長していく過程で発言などはできるようになったけれど、根本は変わっていないため、常に自分の自信のなさと向き合っていて、時々どうしようもなくただただ落ち込むことがある。
 
娘もそうなのかもしれないな。そうだったら申し訳ないな……。そんな風に思っていた頃、事件は起きた。
 
入園して1年以上が過ぎた夏。娘は朝泣くこともなくなって、毎日楽しそうにしていた。夏は保育園でもプールの時間がある。運動音痴の娘もプールは大好き。
「今日はいい天気だから入れるよ!」と登園させたその日、娘に保育園用プールバッグを持たせるのを忘れてしまっていた……。水着やタオルが一式入っているプールバッグがなかったら、プールに入れない!
 
その日の朝、息子の機嫌が悪かった。前日も着ていたお気に入りの仮面ライダーTシャツを、今日も着ると言って聞かないのだ。(当時2歳11ヶ月で自由服で登園していた)
それは洗濯したばかりでびしょ濡れでハンガーにかかっていた。濡れていて着れないということを暴れる息子に理解させる時間と気力はなかった。仕方がないので、ドライヤーで乾かすという手段を取る。その間にも朝食を食べる食べないで揉め、いつもの時間より大幅に遅れてようやく登園。
 
そんなドタバタ劇の直後に、娘のプールバッグを忘れていったことに気がついたのだ。
慌てて保育園に電話するも「(娘の組は)もう準備して今からプールに入るので、娘さんは見学です」と無情なお知らせ……。
 
自分が保育園児だった頃、水着を持っていくのを忘れて、1人だけプールに入れずポツンと寂しく待っていた記憶がある。なにかの映像作品のようにセピア色の情景で、正直「記憶」なのかは定かではないけれど。(保育園児を1人ポツンと待たせるというのも問題があるし)登園が嫌で、寂しくて切ない気持ちを抱いていた象徴なのかもしれないけれど。
 
とにかく、寂しくて切ない気持ちを猛烈に思い出してしまい、自分と娘を重ね合わせて、娘もプールに入れなくてきっと泣いているだろうと思ったらいたたまれなくて辛くなってしまった……。
 
お迎えに行ったら、めっちゃ謝ろう……。もう二度とプールバッグ忘れないぞ!! 気もそぞろに仕事を終え、娘のテンション下がってるかも、顔見たら責められるかも、そんな暗い想像をしながら保育園へお迎えに行った。
 
部屋の入り口で目が合う。
「あ、ママ〜!」
あれ、いつも通りニコニコの娘だ。娘が先に言う。
「プールバッグ忘れてたぁ!!」
「うん、ごめんね……」
低姿勢な母の言葉に、娘はニコニコと「うん!」とだけ言い放つと、すぐに一緒に帰る弟と遊び始めた。帰りの車中も姉弟でずっとご機嫌。娘は保育園で特に泣くこともなく、プールに入れなかったお友達が他にもいて、部屋で仲良く過ごしていたらしい。
 
母は娘の状況を自分の再現ドラマと勘違いしていたけれど、全部勝手な妄想だった。
「私じゃなかった、娘は娘だ。違う人間だ」
自分の性格が娘に遺伝してるんじゃないかと思っていたけど違うようだし、自分の小さい頃なんて娘にはまったく関係のないことだった。慣れない子育てで脳内ががんじがらめになって、いつの間にか娘=自分のように思い込んでいたかもしれない。
息子のワガママから始まった事件は、大きな気付きを残してハッピーエンドとなった。
 
娘は今、自分が大好きで、お絵かきも大好きで、みんなに上手と褒められて自信満々である。確かに大勢がいるところでは恥ずかしがるし、おとなしいタイプだけれど、私よりもずっと明るく朗らかに生きている。
 
「大変」しかないような年子の育児も、息子が4歳半を過ぎてから、随分ラクになってきた。自分たちでできることが増え、自分たちだけで遊ぶ時間も増えた。
とはいえ、2人ともまだ幼児。まだまだこれからも事件は起きるだろう。だけれども、プールバッグ事件のおかげで子どものことを「1人の自立した人間」と思えているから、子どもを信じて乗り越えられるはずだ。
 
自分の過去の再現をやめて、前を向いていれば、自信も少しずつ付いてくるものなのだろう。ようやく親7年目の私は、子どもが生まれる前よりもずっと自分のことが好きだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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