メディアグランプリ

声を鏡として使う


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:二村 佳子(ライティング・ゼミ夏期集中コース)
 
 
「あれ、なんか疲れてる?」
「もしかして、怒ってる?」
 
こんな言葉をかけられた経験はないだろうか。
 
気遣って言われているのは分かっている。なぜなら、自分も誰かを心配して、同じように声をかけるから。
でも、不思議なもので、言われたらなぜか反射的にイラっとしてしまう。
 
その原因はおそらく、声をかけられた時、ほとんど場合は無自覚だから。
疲れているつもりはなかったのに、負のオーラを出していたなら申し訳なくなる。
 
もしくは、いちいち確認されたくないこともある。
疲れてるけど、やらなきゃいけないことがある時。
分かっているなら、聞く前に手伝ってくれない? と何度言いたくなったことか。
心配して声をかけた方も、気遣いを感じ取っている方も、お互いの思いやりは分かっているのに、それが伝わっていないのがもったいない、と常々感じていた。
 
疲れや不機嫌を表に出さないのは不可能なので、せめて自分のコンディションに上手に気づく方法はないか。
このことについて、記事にまとめようと思う。
 
第三者なら、相手の様子に気が付くのは簡単なのだ。
飲食店のスタッフの表情が暗かったり、役所や病院の窓口担当者が淡々とした口調だと、「この人、なんか怖い。機嫌が悪いのかな」と感じ取る。
もう少し笑顔があればな、と勝手に相手に求めてしまうこともある。
 
そう、笑顔。
私たちは相手の様子を推し量る際、表情などの見た目が大部分を占める。
 
私はサービス業に就いていた時、「笑顔になれないコンディションなら、売り場に立つな」と言われてきた。
サービス業でなくても、人間関係において笑顔が大事なのは、おそらく耳にタコができるほど聞いたことがあるだろう。
 
だが、自然な笑顔を作り、保ち続けるのは案外難しい。写真を撮る時だけニッコリするのとはわけが違う。
 
自分が笑っているかどうか、いい表情でいるかどうかなんて、鏡が近くになければわからない。
新しい生活様式では、画面越しの通話が増え、自分の顔を目にする機会が増えた。
だからといって、私は話している顔を恥ずかしくて注視できず、実のところよくわからない。
 
自分のコンディションを客観的に察知したい。恥ずかしくなく、簡単な方法で。
そう考えた時、一つ閃いた。
 
声にもっと敏感になってみるのは、どうだろうか。
 
大手企業のコールセンターの方と話すたびに、ほれぼれとするのだが、音声しか聞いていないのに、笑顔で話してくれているんだな、と感じることがある。
反対に、私は自分の口からでた声にぎょっとした経験がある。
何を言われたのか細かいことは忘れてしまったが、それは、夫からの冗談交じりの提案だった。
 
「そんなの、しないよ」
声は、短く低く平坦だった。
 
料理をしながらという状況を差し引いても、自分でも思っていた以上に冷たい返事をしてしまって、その場で謝った覚えがある。
イラついた気持ちが、声に現れていた。鏡で見たら、きっと夫に突き刺さるような視線を投げていたに違いない。
 
この冷たい声事件のことは、娘がイヤイヤ期に入ったことにより思い出した。
(イヤイヤ期とは、2~3歳の子供が何でもイヤイヤと主張する時期のこと)
娘のイヤを繰り返し聞くうちに、たった数分で私の機嫌は急降下。ちょっとしたことで、冷たく当たってしまうことが増えたのだ。
冷たくあしらっても、泣きながら抱っこを求める娘は健気だった。さすがに申し訳なく思い、なんとか自分の気持ちをいい状態で長続きできないか、と模索していた。
 
そこで、改善してみたのが話しかける声だった。
まずいな、なんだかヒートアップしてるぞ、と気が付けたときは、わざと間をとって話すスピードを遅くする。絵本の読み聞かせを意識すると、ゆっくり話すことができた。
時には「お母さんもイ~ヤ~で~す~」と、わざとおどけた返事をする。すると、気のせいかもしれないが、なんとなく表情筋の動きを感じる。怖い顔にはなってないはずだ。

余裕があると、こうやって修正できる。
声を調整することで、笑顔までには戻せなくても、怒りのデッドラインを越えることは少なくなった。

怒らないようにしよう、と感情面からコントロールするのは、一度スイッチがはいるとなかなかブレーキが効かない。
声の調整をする方が、私には簡単だった。元々、サービス業で働いていた経験があったおかげかもしれない。
お客さんが来店されると「いらっしゃいませ!」と、ワントーン高い声と営業スマイルが発動していたから。
口角をあげると、楽しい気持ちじゃなかったとしても、笑顔につられて気分が高揚するように、声にも気持ちに作用する働きがある、と私は思っている。

今日の声の張りはどうですか。
笑っている声ですか。

ほんの少し、音程を高くしてみませんか。

日々を一生懸命すごしていても、声にアンテナを張る余裕は持っていたい。

***

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2020-08-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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