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名前は私を安心させる


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:高橋拓希(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
いつもみたく、目を覆い隠して、逃げるようにその場を離れた。
 
10分か20分か定かではないが、おそらくもう大丈夫であろうか、というタイミングで2階の部屋からリビングに戻って何事もなかったようにテレビに目を向け、途切れ途切れになったストーリーをパズルのように頭の中で繋ぎ合わせる。
 
いつもいつもこんな調子なものだから、見逃したシーンは数知れず。
 
「今いいところやのになんで変えんねん」
テレビを見ていると、急にチャンネルと変える私に対する母の言葉に、何も言えず、その場を立ち去る自分が嫌だった。
 
「今の場面見た?」
「見てへん」
「せっかくいいところやったのに〜 もったいな」
 
友人と一緒に映画を見ている時に言われる悪気のない言葉に、反論なく傷ついた。
 
ただシンプルに、困難な出来事、ものがたりの起点となる出来事に目を向けられない弱い人間だという、自分自身に対する認識が頭を悩ませる。
 
私の場合、観たい気持ちはあるのだが、友人のYoutubeチャンネル(はいどーも的なあいさつの部分)、映画、ドラマの告白シーンや怒られているシーン、ドラマの主人公が家族や親友にきつく当たり冷たく接するシーン、芸人の方以外が、ボケてすべっているシーンが映し出されそうだと、頭の中のアンテナが瞬時に察知し、その場を離れる、またはテレビのチャンネルを変えるなどして、これらの場面を意図的に避ける。
 
登場人物に憑依し、自分が怒られている、恥をかいていると錯覚してしまうのだ。
 
例えば、スパイダーマンの主人公ピーターパーカーとベンおじさんが言い合いをして暴言を浴びせるような場面がある。
 
「父親ぶらないでよ!」とピーターパーカー。
 
「……」と打ちひしがれるベンおじさん。
 
本当は思っていない暴言を浴びせられたベンおじさん側のことを思うと不憫に思い、そのシーンから目を背けてしまう。
 
怒られている人や辛いことがある人のことを考えると、なぜか、いたたまれなくなる。全くの赤の他人なのに。
 
しかし、この言いようのないモヤモヤは、たった五文字の言葉によって払拭される。
 
どうやら私は「共感性羞恥」という特徴を持っているようだ。
 
この言葉を聞き慣れないという方もいらっしゃるのではないだろうか。
 
「共感性羞恥」とは、自分以外の誰かが、叱られたり、恥をかく場面を目の当たりにすると、まるで、自分自身が怒られたり、恥をかいているように感じる心理現象のことを言う。
 
今まさに、私を取り巻く現実世界で起こっている場面だけでなく、テレビのバラエティ番組、映画やドラマなどフィクションも例外ではない。
 
正確に言うと医学的にはまだ解明されていないようだが、数年前に有名テレビ番組で取り上げられたことにより、以前より認知されるようになった。
 
私が「共感性羞恥」という言葉を知ったのは、2年ほど前だった。ふと友人と話をしていると、一寸の狂いもなく同じ経験をしている人がいると知り、「まじか!」と声がうわずったのをよく覚えている。
 
この言葉を知るまでの私は、この心理現象を自分の弱点としか捉えられていなかったが、「共感性羞恥」という言葉は、長く暗いトンネルに見えた出口のような輝きを放っていた。
 
「あぁ、同じような感覚を持っている人がいるんだ」
 
10人に1人ほどの割合でいるようで、私一人ではないという安心感もさることながら、それ以上に、
 
「名前があるんだ」
 
という安心感の方が圧倒的に強かった。
 
名前があるだけで、肩の荷が降りた気分になり、説得力が増し増しになる。
 
知ったその瞬間から、その現象を、自分の一種のアイデンティティとして受け入れられ、ネガティブな感情からポジティブな感情に変化した。
 
名前がない期間は、ダメ人間として、自己肯定感を削ぎ落としながら生きていたが、名前があることでホッと胸を撫でおろし、「そんなに気にすることではなくね」と考えれるようになった。
 
医療に関しても同じのような感覚だろう。
 
なんだか、気分が悪い、違和感がある、という状況に対して、お医者さんに、
 
「原因不明です」
 
と不安を煽るように言われるよりも、
 
「〇〇症候群です」
 
とはっきりとした名前がある方が、気持ちが楽になると思う。
 
漠然とした不安が目の前に形を持って現れ、それとと共にどのように生きていくのか、または、どんな対策ができるのか考えられる。
 
これで、チャンネルを変えたとき
 
「なんでチャンネル変えるねん」
「共感性羞恥やからや!」
 
と、自信を持って伝えられる。
 
「何それ」という分かりきった疑問に対しても
「病気ではないんやけどな、かくかくしかじか、こんな特徴やねん」
 
と説明し、説得させることができる。
 
名前は認識であり、物事を認識することによって、同じものでも違った視点で考えることできるのではないだろうか。
 
自分が生きていく上で、不安をいかに取り除き、安心感を増やすためには、関わる物事の量を増やすのではなく、今持っている不安がどのようにすれば、安心に変わるのかを考える必要があると思う。
 
「ないものねだり」ではなく、「あるものいかし」を常に考え、自分の特徴や感情を排除することなく向き合っていきたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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