東北自動車道の終点にある看板を見に行く旅
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記事:武内大輔(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
「東北自動車道
TOHOKU EXPWY
全長 680km
終点
おつかれさまでした」
この看板が見たくて走り始めた。
ドライブが好きだ。
高校生の頃に見たスズキのスイフトに乗りたかった。
収納は少々悪いが、走りは良い。
働き始めて5年ほど、お金を貯めてスイフトを新車で買った。
スイフトと一緒に色々な場所へ行った。
目的地はあまり明確に決めなかった。
「あれを食べたい」とか「あれを体験したい」とかいう思いはなく、
「遠くに行きたい」という思いがあった。
仕事や人間関係に特別大きな不満があるわけではない。
だけど、たまに1人で遠くへ行きたくなる時がある。
そういう性分なんだと思う。
遠くに行く時は高速道路を選ぶ。
どれだけ遠くに行けたか分かりやすいからだ。
今回は終点の看板も見たいので東北自動車道を選んだ。
全長は680km。
日本最長の高速道路だ。
遠くに行きたい欲望は十分に満たせる。
東北自動車道の始点は川口ジャンクションのあたり。
ちゃんと走破したいので川口ジャンクションの近くに前泊した。
ドライブでは基本的にラジオをつける。
東京近辺では大手の放送局が拾えるからそれを聞く。
「忘れられない夏の恋」を投稿するコーナーが流れる。
投稿の合間にindigo la Endの曲が流れ痛く感動した。
でも、どんな話だったか、どんな曲だったかは思い出せない。
ラジオは一期一会なところがあると思う。
首都圏を離れると地方色が出てくる。
青森県周辺では「りんご情報」が流れた。
りんご農家にりんご生育の注意点を教えるものだ。
青森県はりんごに対する気合の入れ方が違う。
ある地方ではリスナーが修復不可能な親戚関係の問題を相談していた。
それもパーソナリティに直接、生電話で。
こんな話、公共の電波に流していいんだろうか。
ラジオを聞くとそこに住む人たちの生活が見えて、面白い。
ドライブくらいの速度感がちょうどいい。
飛行機とか新幹線だと、通過するスピードが早すぎる。
道路脇の看板も変わっていく。
東京にいると、「宇都宮まで〜km」
宇都宮にいると、「郡山まで〜km」
郡山にいると、「仙台まで〜km」
仙台にいると、「盛岡まで〜km」
680kmは長いけど走っていれば少しずつ進む。
目標としていた地点がいつのまにかやってきて、過去のものになる。
1つの目標を終えると、次の目標が現れる。
長いように見えて、確実に終わりが近づいている。
自分に置き換えるとどうだろう。
「今どこに向かって走っているのか」
「終わりまではどれくらいか」
「いまは分岐点なのか」
「そもそも今どこにいるのか」
色々なことがわからない。
だから、居場所が把握できる高速道路は安心できるのかもしれない。
1日目に川口から走り続けたら日が暮れる前に盛岡に着いた。
いつの間にか半分以上走っていた。
日が落ちると知らない道路を走るのは怖いので、盛岡に泊まることにした。
2日目は盛岡からスタート。
2日目で終点まで行けそうだ。
暑かった1日目に比べ、2日目はさわやかな日だった。
快調に北上する。
残りが100kmを切った。
この旅も終わってしまう。
終わりが近づくとちょっと寂しい。
時間に余裕もあるし、速度を落とす。
それでも終点までの距離は縮まっていく。
あんなに長いと思っていたのになあ。
終わってみると何事も短い。
ついに終点まで来た!
青森インターを出るとあの看板が迎えてくれた。
「東北自動車道
TOHOKU EXPWY
全長 680km
終点
おつかれさまでした」
終わった。
せっかくなので看板が見える橋上に行って記念撮影する。
周りには誰もいない。
我ながら変な趣味だと思う。
ちなみに終点の看板があるが高速道路はまだ先に続いていた。
東北自動車道の次には青森自動車道があったのだ!
しかし看板を見ることが出来たのでひとまず今回の旅は終えることにした。
680kmの東北道、長いと思っていたら2日で完走してしまった。
でもその先には新たな道があった。
終わりはいつかやって来るが、新しくやって来るものもある。
終点まで来て2つのことに気づいた。
1つ目は、長くても何事にも終わりがあるということ。
680kmが長く感じても走っているといずれ終わる。
頑張っても、手を抜いても、達成しても、挫折してもいずれ終わる。
2つ目は、終わっても次があるということ。
680kmの先にも道はあった。その道もどこかにつながっている。
自分の人生が680kmあるとして、今どのあたりだろう。
自分の人生、いつ終わるかは分からない。
だから、忘れがちだけど、今日を大切にしよう。
自分の人生、どこにつながっているかは分からない。
だけど、進んでみたらどこかにつながっていると信じてみよう。
また、ドライブに行きたいなあ。
***
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