生きることは宝もの探しに似ているという話
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:北林健児(ライティング・ゼミ日曜コース)
最近、友人がフェラーリを買った。
プラモデルを組み立てて遊んだ少年期からの憧れをがむしゃらに働いて叶えた。
彼にとってフェラーリは、人生を捧げた宝ものであるに違いない。
ひるがえって私はといえば、コロナで「仕事」を失った。
いや、実のところ「仕事」というのは正確ではないのだ。
「仕事」を「他者に何らかの貢献をした対価として生活の糧を得る行為」と
定義すると、私は「仕事」以上のものを失った。
しかし、そんな状況においても、私は特に悲観していない。
なぜかというと、こんな状況におかれて、私は、
人生とは宝もの探しのようなものだと、ふと気がついたからだ。
サラリーマンを辞めて「この活動」を始めてから私は「プロの遊び人」を自称している。
「この活動」とは、有り体に言えば訪日外国人向けのガイドである。
ただ、観光ガイドと言ってしまうと、この言葉からこぼれ落ちてしまう
ものがたくさんある。そこで、遊び人を自称するようになった。
単なるガイドは、史跡に行っては暗記した教科書の内容をしたり顔で先生然として話し、
タイムキーパーとしておきまりの観光コースで時間をすごす。
場所によっては右から左への通訳をこなす。
しかし、プロの遊び人は、これらの全てでありながら
同時に、身振り手振りで笑いを取りに行くエンターテイナーであり
顔の見える距離で一人一人に寄り添ってその要望を聞く存在である。
たとえば、桜の時期は、日本人がやるピクニックスタイルのお花見が
とても喜ばれて、毎日のように満開の桜がさく名所で過ごした。
夜はフードツアーにでかけ、美味しいものを紹介した。
そこで家族の話、政治・経済・伝統文化の話で日本をよりよく知ってもらう。
彼らと一緒になって遊び、食事を楽しみ、語らうことで
お金をもらうので、私はタダの遊び人ではなく、プロの遊び人である。
ハネムーンで訪日する欧米の富裕層が多く、
彼らが満足して帰ると、生まれた子供の写真を送ってくる。
そういう情緒的なつながりができると、
次に訪日する予定の現地の友人たちを紹介してくれる。
いつしか私のインスタは、そんなゲストたちとの写真であふれるようになった。
そういった写真であるとか、物語の蓄積であるとか、
世界中にちらばるお客さんとの思い出は、私にとって宝ものとなった。
お客さんの喜びが自分の喜びになる。
それを深く実感して、プロの遊び人にますますのめり込むようになった。
そして人生とは、宝探しのようなものだと思えるようになった。
フリーランスとして独立する前の私はそうではなかった。
仕事の義務と責任に押し潰されそうになり、
元旦を職場で迎えたこともあった。
パワハラをうけて体を壊したこともあった。
そうまでして、サラリーマン生活で手に入れたいものが
はっきりとしないまま、毎日に流されて過ごしていた。
けれども、意義ある人生を過ごしたい。
それだけはどうしても諦められなかった。
そんな紆余曲折を経て手に入れた、プロの遊び人というあり方。
コロナでお客さんが一切こなくなってしまった。
人生を捧げようと思った矢先のことである。
旧知の仲間から
「世界中が鎖国になってしまって大変ですね」と
いわれれば、
「プロの遊び人は、お客さんいてもいなくても遊び人ですから」
と強がって笑ってみせた。
その理由の一つには、ふだんから笑顔を絶やさないほうが
チャンスがやってくると信じているから。
さらにいえば、私が楽観的でいられるのは、古今東西の宝もの探し物語では、
どこかで足止めをくらうことはお決まりだからということもある。
たとえば歴史の教科書をひもといてみれば、
奈良に唐招提寺を建立した鑑真は、何度も船が難破したため、
唐から日本に渡るまで10年以上の年月を要したと言われる。
日本に着く頃には盲目になっていた。
仏の教えを広める先としての日本に赴くことは
私には、一種の宝ものさがしの物語に思える。
鑑真は目的を達するまでに何度も足止めをくらった。
ふつう、宝もの探しには道具が必要だ。
それは洞窟を歩くためのたいまつかもしれないし
ジャングルを切り開くための手斧かもしれない。
そして、宝もの探しで足止めをくらったときはチャンスである。
己の刃を研ぐことができるからだ。
新しい道具を手に入れてもいいし
これまで使っていた道具を手入れするいい機会かもしれない。
そういうふうに考えると、有意義な時間の過ごし方が見えてくる。
人生の目的とか意義とかを真剣に考え始めると
深刻になりがちな一方で、宝もの探しゲームと思えば気が楽になる。
ピンチにあってもあまり深刻になりすぎず、
かろやかにものごとに当たっていく自分でありたい。
この足止めは、どうやら長くつづきそうな気配である。
だけれども、私は決してあきらめない。
なぜなら、足止めくらうことは宝もの探しでは当たり前のことなのだから。
***
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