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メディアグランプリ

逃げるより、あえて立ち向かっていくと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:菊川美咲(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
検索して、ようやく「ああこれかな」というキーワードにたどり着いた。
「上の子かわいくない症候群」という。
記事を読むと確かにそうだし、「どのお母さんにも起こることで、一時的なもの。自分を責める必要はない」と書かれていることにも安心する。
ただ、今の私の状況とぴったりというわけでもないのだけれど。
というのも、私が悩んでいるのは「長男からハグをせがまれるのが苦手」という一点のみだからだ。
 
私には二人の息子がいる。
小学2年生の長男と、年長さんの次男。
年齢が3学年離れているというだけで、おしゃべりなところも仮面ライダーが好きなのも一緒という、似た者兄弟だ。
 
次男が私にくっついてくると、ひょいと抱っこできる。ぎゅっと抱きしめて、かわいいなあと思う。
ところが長男はそうはいかない。
もうサイズ感が「ひょい」とはいかなくなった。
2年生で身長が135cmくらいで、クラスでも一番背が高いらしい。
見た目がもう大きいのだから、中身も成長しているのかといえば、そうではない。
まだまだ甘えたいようで、「お母さーん」とはにかみながら両手を広げてやってくる。
ハグしてほしいということだが、私はどうしてもこれが苦手なのだ。
 
この苦手意識の原因を考えてみる。
背が伸びて大人っぽくなり、息子というより「男の人」を感じてしまっているのかもしれない。
それと、両手を広げて近寄って来る時の雰囲気が、なんというか「ヌメヌメしている」というか、なんだか粘着質な様子が気持ち悪いと思ってしまう。
 
それをなんとか「拳法ごっこ」として、わざと手を振り払ったり、くるっと回転させてかわしたりして避けていた。
そして最後にちょっとだけギュッとして終わり、と誤魔化していた。だが、これだとやっぱり満足感はないようで「拳法ごっこじゃなくて、ちゃんとハグして!」「まだ足りなーい!」と言われてしまう。
 
ある日たまらなくなって、とうとう長男本人に「ヌメッとしていて、いやだ」と言ってしまった。
さすがに悲しそうに落ち込んで、部屋の片隅に行って膝を抱えてシクシク泣いていた。
あー、わざと私に見えるところで拗ねているなと思いつつ、しかし私の罪悪感はばっちり刺激された。それでもまた次の日には両手を広げて近寄ってくる。
懲りないというか、打たれ強いというか、その点は尊敬する。
 
これまで息子たちには、言いたいこと、思ったことはちゃんと言葉にして言うようにと教えてきた。
相手に伝わるように話しなさい、と。
だから「お母さん、ハグしてー」と言える長男は素晴らしいと思う。
甘えたいときに、ちゃんと甘えたいと表現できること。
これはかつての私が欲しかったスキルだ。
では、ちゃんと伝えてくれている長男に対して、私はどうする? このままでいいのか?
 
今の私、逃げているなと思って、はっと思い出したことがある。
 
追われるから、逃げたくなる。
逃げるから、また追われる。
 
以前にもこのループにはまっていたことがあった。
私が逃げ回っていたものの正体は「コミュニケーション」。
しかも「できません」「間に合いません」「教えてください」「助けてください」といった、自分の至らなさをさらけ出して誰かに助けてもらわないといけない状況で、SOSのメッセージを出すことが全くできなかった。
助けてと言うことから逃げているから、また苦しい状況が追いかけてくる。
結局、一人で抱え込んで、一人で撃沈して、仕事を辞めた。
次の職場でも、初めはやっぱり同じループにはまったが、おそるおそる「手伝ってもらえませんか」と周りにお願いしてみると、皆さん快く助けてくれた。
きっと前職でも、私が「助けてください」と言えば周りの先輩たちはいつでも手を貸してくれたはずだ、と気づいたのもこの頃だった。
 
そして、「もう無理―! 助けてー!」と遠慮なく言えるようになったのは、結婚してすぐに妊娠し、長男を出産してからだった。
妊娠も出産も、初めては出来ないこと分からないことだらけ。
寝るのが上手でなかった長男を抱えて、いつも寝不足でフラフラだった。
育児のことも、経済的な面でも、実家と義両親にかなり助けてもらった。
 
そうだった。
「できない自分、情けない自分を認めること」は、辛くて苦しくて恥ずかしい。
ちっぽけなプライドにしがみついて「できる人」風を装う方がまだマシだと思いがちだ。
しかし、恥ずかしさや情けなさから逃げずに「SOSを出すこと」に勇気を持って立ち向かっていったら、あのループから抜け出すことができた。
それをはっきりと気付かせてくれたのは、私のもとに生まれてきてくれた長男だったのだ。
それならば。
 
この数日、やってみたことがある。
私の方からぎゅーっと抱きしめるのだ。
長男が寄ってくるたびに、ぎゅーっ。
ぎゅーっとすると「本当に大きくなったなあ」としみじみ思う。
そしてヌメヌメという嫌悪感はない。
愛おしささえ感じられる。
 
スマホのカメラロールをたどれば、子供たちの写真ばかりだ。
今は背も伸びてシュッとしているが、赤ちゃんの頃はほっぺがふくふくしていて、おもちゃでもなんでも口に入れて、車や電車が大好きだった長男。
うんうん、やっぱりかわいいじゃないか。
弟が生まれた時も赤ちゃん返りもほとんどなく、お兄ちゃんとして優しく面倒を見てくれている。
優しすぎて、いまでは弟とのおもちゃの取り合いに負けてしまうくらいだ。
そういうところもいじらしくてかわいい。
 
私からぎゅーっとするようになって、長男はこう言った。
「拳法ごっこ、しようよ」
おや、どうやら立場が逆転したらしい。
 
私の「上の子かわいくない症候群」は、自分からぎゅーっとすることで解消することができた。
 
そしてもし今後、何かに追われて逃げたくなるようなことに出会ったら、その時はあえて自分から立ち向かっていこうと思う。
その方がきっとループから早く脱出できるはずだから。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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