メディアグランプリ

つらい自分に突きつけられたビジネスコーチの問い


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:木内文昭(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
「責任あるマネージャーというポジションから降りても良いんですよ」
ビジネスコーチからそう言われたとき、ハッとした。
僕は「マネージャー」として歯を食いしばって踏みとどまるか、
「プレイヤー」として力を発揮するか、その岐路に立たされていた。
 
転職をして一年が経ち、マネージャーに昇進した。
そこから1年ほどは順風満帆だった。
当時、僕は2つのチームを管轄していて、10数名のメンバーをマネジメントする立場にいた。
チームが発揮すべき提供価値を改めて言語化し直し、定期的に勉強会を開いたりして、
メンバーの皆とお互い良い刺激を与え合い、良い仕事が出来ていた。
 
それからしばらくして、一歩ずつ階段を降りる様に少しずつその良好な関係性にヒビが入っていっていたことに僕自身、全く気づけていなかった。
 
その大きな理由は、自分の傲慢さと甘えだった。
 
「リーダーが素直で謙虚でなければメンバーはついてこない」と頭では分かっていた。
行動でも、メンバーとの対話でも、その意識は強く持っていたつもりだった。
 
けれども、日々の忙しさを言い訳に、自分自身の”弱さ”が表に出てしまっていた。
 
僕のスケジュールは朝から晩まで埋まっていて、朝早くから毎晩遅くまで一生懸命働いていた。
その忙しい自分に酔っていたところもあるかもしれない。
メンバーは僕の時間を調整するのに手間とストレスがかかり、
やっととれた時間にはこれでもかというくらい、困っていることや要望をぶつけ、
僕は誰かと誰かの調整をする毎日になっていた。
 
僕は「頼まれたことを全て自分が対応しなければいけない」感覚に囚われ、
長時間働いてはいるものの、本当に自分がやるべきマネジメントの仕事ができておらず、
ある時点から自分の処理能力を超えていることに気がつけていなかった。
 
ある時メンバーが言った言葉に耳を疑った。
「木内さんは、もっとAさんの話を聞いた方がいいと思います」
本当に、聞き間違いだと思った。話を聞いてくれないのは私ではなく、Aさんだからだ。
 
「ええと、ちょっと待って。私は週に何度も、毎回1時間も2時間もAさんの話を聞いていると思うんだけど…… まさかそれでも話を聞いてないということ?」
 
「Aさんは木内さんは私の話を聞いてくれない、と言っていました。ただそれをお伝えしただけです」
 
頭が真っ白になった。
本当に、意味がわからなかった。
 
数日後、何名かで会議をしている最中にAさんと議論になった。
お互いの主張が平行線となり、僕は痺れを切らしてついカッとなり声を荒げてしまった。
その会議は時間切れもあり終了となったが、その日を境にメンバー達と自分の関係性が決定的に変わってしまった。
 
関係性が悪くなり、必要最低限のコミュニケーションだけになった。
僕は居た堪れなくなり、定例会議に出席するのをやめ、
必要があったときにだけ報告をもらうようにした。
その後は日を追うごとにチームメンバーとの関係性が悪化してしまい、
僕はどうしようもできず、無力だった。
 
やることなすことうまくいかず、僕は窮地に追い込まれていた。
とても辛かった。
 
そこで上司に期間限定でビジネスコーチと対話させてもらうお願いをし、許可を得た。
年上のビジネスコーチに、自分の置かれている状況や起こっている事、何に辛さを感じているか、など色々な振り返りや内省のやりとりをさせてもらった。
 
コーチングのセッションの何回目かで言われたことが
「責任あるマネージャーというポジションから降りても良いんですよ」
ということだった。
 
言われてハッとした。
自分はマネージャーになりたくてならせてもらった。
そして、その役職になりたくてもなれない人もいる。
そんな恵まれた環境に身を置いているにもかかわらず、
自分の視点でしか、物事を考えられていなかった。
 
直感的に、「マネージャーから降りたくない」と感じた。
上司に申し出て、降りたら楽になるのは間違いないとは思う。
だけど、そこでなんとか踏みとどまってマネージャーとして成果を出したいと、心から思った。
 
その日から、「自分がメンバーの役にどう立てるか」という視点で考え、行動することにした。
そうした視点の中で見えてきたことがあった。
 
結局、Aさんは「僕が本当の意味でAさんの話を聞いておらず、本当に伝えたいことを理解してくれない」から僕に何度も、何時間も話をしてくれていたことがわかった。
 
その後も自分なりに努力をし、改善を図ったが、うまくいかない日々が続いた。
結局、別の自分が管轄しているチームで休職者が出たことで、よりフォローする必要が発生し、僕は関係性が悪くなってしまったチームのマネージャーから外れることになった。
 
もう一方のチームに専念し、メンバーとの関係性構築に努めた。
メンバーの話に耳を傾け、誕生日を祝い、飲みにも誘った。
再度メンバーがじわじわと増えていく中で、そのチームを事業部にするということで、
僕はその事業部の責任者に任命された。
 
その際に、改めて思い出したことがある。
「まず先に自分がメンバーの理解に努めてから、その後自分のことが理解される」
という当時の痛い経験から学んだ教訓だった。
 
まだまだ至らないことはたくさんあるけれど、少なくともメンバーが「話を聞いてくれている」と感じてもらえるマネージャーになろうと、強く心に誓った自分がいた。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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