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中国人の優しさから学ぶ子育ての極意


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記事:いいだれいこ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
まさか中国で子育てすることになるなんて思ってもいなかった。
どうしよう。
事前に住居近辺は下見に行っていた。大体生活できそうだし、子育てに必要なものをどうやって手に入れるかも何となくわかったし、問題なさそうと思っていたのだが。
何か、漠然とした不安が心に残ったままだった。
 
我が家は夫の上海赴任が決まってから、子どもが1歳半になるまで離れ離れで暮らし、私は実家で暮らしていた。実家で暮らしていたときは、私の母が子育ての戦力になってくれたのでわりと楽をして子育てが出来ていたと思う。本当にありがたかった。そんな生温い生活をしていた私が、本来の家族だけで生活するために1才半になる子どもと2人で上海に乗り込んだ。
 
漠然とした不安とは、生温い生活から抜け出して自分でちゃんとあれやこれやこなさなければ! というプレッシャーから来ていたものなのかもしれない。
 
けど、そんな気持ちも杞憂に終わった。
1年間の中国生活をとおして、中国で、上海で子育てできてよかったと心底思えたからだ。いや、むしろ日本より子育てしやすいかも……とさえ思えてしまったのだ。
上海での子育てがよかったと思えたのには様々な理由があるのだが、今回はその中でも特に印象に残っていることについて書きたいと思う。
 
中国には子ども好きな人が多く、どんな場面においても子連れに親切だった。
そんな子ども好きな中国人から教えられたことが、子育てを見守る優しさだった。
 
道行く人たちが優しく見守って微笑んでくれるだけで、ママはどれだけ心強いことか。
そして、困っていたら手を差し伸べてくれる。それが当たり前に行われていた。
 
ある広東料理のお店に食事に行った時のことだ。
特に娘が泣いたり不機嫌な様子だったわけではなかったのだが、店員さんがすぐにやってきた。メニューを渡すのと同時に、白くて小さな可愛らしい小鳥の形をした小麦粉ねんどのようなものを娘にくれたのだ。きっと小籠包の皮になる生地で作ったものだろう。万が一子どもが口に入れても安心だ。
娘がそのおもちゃの小鳥に集中して遊んでくれたおかげで、食事のオーダーまでスムーズにできた。その後も時折テーブルに来ては、娘に話しかけたりして、笑顔でかまってくれたのだった。
当の娘はと言えば、途中騒ぐことがあったのだが、その店員さんが来て気をひいたおかげで、その後は比較的おとなしく過ごしてくれた。
まさに神対応である。なんて優しいの!
そこには、ママがつかの間のホッとできる時間があり、食事を楽しめる雰囲気があった。
 
子連れで外食する時は、周りに迷惑をかけないようにと気を遣うママは多いだろう。
食事中の笑顔の裏では、「どうか娘よ、このままいい子でいておくれ」などと、念仏のように心の中で唱えていたりする。もしも、子どもが泣いてしまったら早く泣き止ませなきゃと焦ってしまうし、泣き止まないと自信をなくしてしまいそうになる。それくらい母親は気が落ち着かないし、食事にも集中できないのだ。特に小さい子を持つママにはそれが普通なのだと思っていた。
 
だから、子どもに対する温かさや優しさを感じられたことがうれしくて、目頭が熱くなった。
 
もちろん、このお店に限らず多くのお店で、とにかく子どもをよく見てくれる。普通のことのように、あの手この手で子どもを喜ばせようとしてくれるのだ。
こんな出来事を重ねるうちに、それまで張りつめていたプレッシャーの糸がピンと音を立てるようにして切れていった。
「そうか、私は優しさで見守られているんだ」
 
そういえば、主人が前に言っていた事を思い出した。
「中国では家族の絆が日本より強いんだよ」
主人が勤める会社で現地採用された上海人S君は、裕福だけどよく働く優しい若者だったという。少し前に父親を亡くし、そのショックから母親の調子が悪くなってしまったそうだ。S君は「母親のそばにいてあげたい。母親もそれを希望しているので会社を辞めます」と言って会社を退職したのだ。
 
中国人の家族の絆の強さを見せつけられて、驚くと同時に妙に納得した自分がいた。
家族の絆が強いからこそ、子は宝という考えがより一層浸透しているのだろうと。だから、他人の子どもでも困っている母親がいれば手を差し伸べてくれる。
子育てを優しく見守ってくれているのだ。
 
その場をそっと見守って微笑んでくれる人がいるだけでも、ママの力になれる。
周囲の優しさを感じたママは何だか強くなれる気がするし、頑張れる気がしてくるのだ。
 
あれから2年が経ち、娘も大きくなりもうじき4歳だ。まだ手がかかるけれど、外出時に気を遣うことは以前に比べて少なくなった。
 
もしも隣の席で小さな子どもと一緒にいるママの顔が困っていたら、そっと微笑んで見守り、必要ならば手を差し伸べられる人でいたいと思う。
それが彼女の支えになると信じて。
 
中国人の優しさから教わった見守ることを日本でも実践していきたい。
 
優しさの輪が広がっていきますように。

<<終わり>>
 
 
 
 
***
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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