メディアグランプリ

私のことを嫌っている人は15.9%


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:鈴木彩友 (ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
 
 
子どもの頃から私は常に嫌われることに怯えていた。
 
今の時代と違い、私が子どもの頃の遊びといえば、室内でのゲームよりも屋外でカラダを動かすことが多かったが、私は臆病で不器用であるため何もできない子どもであった。
 
草野球ではいつも補欠で、缶けりなどの単純な遊びですら一人前としては扱ってもらえなかった。また、木に登って飛び降りるといったような遊びも、臆病であるため木に登ることもできなければ、高い場所から飛び降りることもできないため、一緒に遊ぶことができなかった。
 
このような状況であったため、私がその遊び仲間の中にいようが、いなかろうが大きな影響がない事を子ども心に理解していた。そのため、いつ仲間外れされないかと常に怯えており、人の機嫌ばかりを伺うような性格になってしまった。
 
その状況は大人になっても直ることは無かった。
 
不器用は改善されず、臆病な性格もそのまま……更に、バブル時代に30社以上の企業から不採用をもらい、結局就職浪人をしてしまったという経験が更に自信のない性格にしてしまった。
 
唯一の長所というべきということは「数学が得意」ということであった。野球やサッカーのようチームを組んで競うことがないため他人に迷惑をかけることもない。自分だけ上達できず周りをしらけさせる事もない。数学の問題はまるでパズルゲームを解くかのようであり、一人で楽しめるからだ。
 
一方、「数学の使い方」というものも私は知らなかった。やっとの思いで入社する事ができた金融会社で「数学的な思考」を教えてもらうまでは、私は数学の知識が社会で活かせるなんて考えもしなかったのである。
 
金融会社では色々なことを教えてもらった。その中の一つが「数学的思考」である。
 
数学的思考とは何か?
 
それは数字を真実のメッセージとして理解することである。
 
例えば、金融会社であるために企業の「決算書」を読む力を身につけなくてはいけない。なぜなら、経営者から会社の状況を聞こうと思っても都合の良いことしか返ってこず、都合の悪いことは分厚いオブラートに包まれてしまい正確な情報は中々手に入らないことが多いからである。
 
しかし、決算書などの数字はウソをつかない。いや、多くは「粉飾」をしているため「ウソ」なのであるが、そのウソですら「ウソ」とわかるほど、数字はウソをつかないのである。
 
上司からは、人から聞いた話は「数字」で考え、人に何かを伝えるときも「数字」を積極的に使うようにと指導された。なぜなら曖昧な感情的な表現方法よりも、感情の影響を受けない正確な数字の方が正しい内容を伝えられるからである。
 
その指導の中で印象に残っているのが「平均」と「偏差値」である。企業の評価は「平均」で判断はせず「偏差値」で判断しろと言われ続けた。
 
そして、この「平均」と「偏差値」は日々何かに怯えていた私に救いの手を差し伸べてくれたのだ。
 
子どもの頃から不器用で臆病で何もできなかった私。すべてが「平均以下」と私は考えていたし、事実そうだった。だから人並みに何かができるようになりたかったし、平均よりも上にいくことが私の目標でもあった。
 
しかし、平均ほど曖昧で当てにならないものはないのである。
 
例えば、1クラス4名の少人数の塾で、100点満点の資格テストで60点未満は不合格だとした場合、あるクラスでは4人全員が60点ならば平均は60点であり不合格者もいないのだが、別のクラスでは1人が100点満点で、他の3人が50点である場合は平均は62.5点と前者のクラスの平均よりも高いにもかかわらず、4名の内3人は不合格になっていまうのである。
 
つまり、平均にのみに注目をしてしまうと、正しい状況を見逃してしまう場合があるのである。
 
みな同じような能力なのか? それとも、わずかな人間だけズバ抜けているだけで、多くの人は低い能力なのか? もしくは能力の高い者と低い者との差が大きすぎるのか? 結局のところ、平均だけでは本当の状況などは分からないのだ。
 
私が不器用で臆病であるために、それまでもたらした結果は、ある環境では平均以下だったかもしれないが、他の環境であれば平均的かもしれないし、もっと別の環境であれば平均より上であったかもしれない。
 
そう。目の前の狭い視野の中で曖昧な結果に悩んでも意味がないのである。
 
更に、私は平均以下であると考えていたため人に嫌われないように常に人の機嫌を伺っていた。しかし、偏差値的に考えた場合、それが意味のないことに気づいた。
 
偏差値とは下記のようなものである。
 
偏差値70=上位3.4%
偏差値60=上位15.9%
偏差値50=中央値50%
偏差値40=下位15.9%
偏差値30=下位3.4%
 
ある統計をとった場合、おおむねこのような分布となるのが偏差値といわれるものである。
 
仮に、特定の人に対しての好感度を点数方式でアンケートを行った場合、「嫌い・大嫌い」との方に点数をつける人(偏差値40以下)は15.9%いる一方で、「好き・大好き」と点数をつける人(偏差値60以上)も15.9%いると統計学的に推測できるのである。
 
おそらく多くの人がこの説明が何を言っているのか分からないかと思う。しかし安心してほしい。偏差値の理屈を理解する必要はない。理解しなければいけないのはその結果である。
 
簡単に言えば、「どう頑張っても15.9%の人はあなたを嫌っている」ということである。
 
つまり、「人は必ず誰かに嫌われている」のだ。
 
この数字は私の心に衝撃を与えた。「嫌われたくない」それまで常にそう思っていたが、偏差値的に考えた場合、どう足掻いても私のことが嫌いな人は必ずいるのである。ならば、嫌われることを怯えていても仕方ないし、怯える必要もない。
 
一方で、偏差値的に考えれば「私の味方」も必ずいるのである。
 
私はその日から「怯える」ことが少なくなった。また、不器用である自分も受け入れられるようになった。弱点に目を背けるのではなく、受け入れることで「弱み」は無くなり、卑下することも弱気になることも少なくなった。
 
だからと言って、全てが上手くいくような人生にはならない。しかし、少なくても自分自身を否定するような惨めな人生からは抜け出せた。
 
「味方はたった1人だけかよ!」と思う人はそう思いばいい。なぜなら、偏差値的に言えば15.9%の人はこの考え方には賛同してもらえないのだ。
 
しかし、少なくても15.9%の人は、何かしらの共感を持ってもらえるはずである。だから、私はその15.9%の人に伝われば良いと思っている。
 
自分を卑下する必要はない。他人より劣ることに怯える必要もない。平均ほど曖昧で当てにならない値はないのだから。
 
そして、他人から嫌われないように八方美人になる必要もなければ、長いものに巻かれる必要もない。なぜなら15.9%の人はあなたを嫌う人間なのだから。
 
でも安心して欲しい。あなたの味方は15.9%もいるのである。そして、私もあなたの味方である15.9%の中の一人なのである。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事