地上最弱にお酒が弱い僕の願いを聞いてほしい
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記事:福田大輔(ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
僕はお酒が飲めない。下戸なのだ。
その弱さはもう地上最弱と言っていいだろう。一口でも体内に摂取したらすぐさま顔が赤くなる。遺伝子がアルコールを拒否しているのだ。
日本人における下戸の割合だが5%程度とのこと。何という希少人種。どうせなら運動能力とか知能指数とかの上位5%なら良かったのに、酒が飲めないことで希少人種に選ばれてしまった。
生まれてこの方酒が飲めなくて得したな、などと思えたことは1度もなかった。
休みの日に昼間から酒が飲める開放感。音楽フェスで大好きな音楽をお酒と楽しむ高揚感。キャンプで気持ちいい空気の中で飲むお酒。旅行でその土地の人々と飲んで語らって仲良くなったとか。これらは僕がこの先もずっと体験することがないし、分かち合えない。
羨ましいな。
お酒って歴史や文化があって想いが詰まっている。知れば知るほど奥深くて探究心がそそられてしまう。飲めないけど。
ビール工場見学や酒蔵見学とか飲めない僕が行ってもわくわくして感動してしまう。試飲や飲み比べとか出来たらもっと楽しいに違いない。
羨ましいな。
飲める人には「飲む」と「飲まない」の選択肢があるが、僕には「飲まない」選択肢しか与えられていない。不公平ぐらいに思っている。
思い返すと酒が飲めないというだけでこんなにも色々なことを言われたり、埋められない溝を感じてばかりだった。
ある人は言った。
「男の人なのに残念だね」
そっちは○○○のくせによくそんなこと言えたな。言い過ぎて泣かせてしまってごめんなさい。
ある人は言った。
「飲みすぎて記憶がない」
みんなの失言や失態をオレはしっかりと覚えているけどね。オレも死ぬまでに一度ぐらいそんなこと言ってみたいさ。
あるひとは言った
「最初の一杯は全員ビールで」
救急車呼ぶ覚悟があるならばそうしよう。あと、オレがコーラでと言った時の面倒くさそうな顔は忘れないからな。
ある人は言った。
「酔わないと本音で語れないし」
こっちはいつだってシラフで本音語ってるんだよ。ハートが弱すぎるだろ!
ある人は言った。
「飲まないと思って誘わなかった」
とりあえず誘っとこうよ。いらないよ、その気遣いはさ。
ある人は言った。
「オレの酒が飲めないのか」
あんたの酒じゃなくて酒が飲めねえんだよ!自分をどこに格付けしているんだよ。
ある人は言った。
「人生を半分損してるよね」
愚痴ばっか言っているあなたの人生はそんなに充実してのか?! オレもそう思っているし。
ある人は言った。
「一緒にお酒飲める人がいい」
遠回しに恋愛対象として無理と言われているのかな? 純粋にそういうこと? オレには分からんわ。
さらに社会人になってから頭を悩ませたのが会社や得意先との飲み会だ。特に上の世代のから飲むよな、の圧は煩わしくてしょうがなかった。生まれ持った特質だけで何を勘違いしてやがると思うほどに。
そして、お酒が飲めないことで僕を1番困らせているのが食事だ。食べるのが大好きなのにだ。仕事帰りに一人で居酒屋やBARだって行ってみたいし、レストランだってもっと開拓したい。地方に旅行へ出掛けたら、その土地だから食べられる料理を味わいたいのに。
世の飲食店はお酒を飲まない人に対して優しくない。お酒を飲まない客単価は低いからだろう。というか何で来てるの? ぐらいの扱いを受けたことさえある。1人で行くのが本当に嫌になってしまった。
加えてドリンクの選択肢が本当に少ない。酒を飲まない奴には烏龍茶かジンジャエールかコーラでも飲ませとけと言わんばかりに。逆にピッチャーでコーラを持って来いぐらい本気で思っている。
お酒が飲めなくても歓迎というお店が増えないのだろうか。どうしたら増やせるのだろうか。何かお酒に対する価値観の変化は起こせないのだろうか。
これは新しい価値観の予兆かもしれない!
そう思えるものがあった。
アメリカではミレニアル世代(20代前半から30代後半)を中心に、身体や精神の健康を保つために、あえてアルコールを飲まないことを選択する「ソーバーキュリアス」という新潮流が生まれているらしい。
ソーバーキュリアス!!
日本のミレニアル世代(20代前半から30代後半)でも来るんじゃないか?!
日本でも厚生労働省が出している統計資料では「ほとんど飲まない(飲めない)」の割合が2007年から2017年を比較して、男女の20代・30代で10%前後上昇している。下戸じゃないけどお酒を欲していない割合がそもそも高くなっていたのだ。
加えて最近の健康意識の高まりを考えるとソーバーキュリアスがこの先に起こりえる可能性が充分にありそうだ。ちなみに下戸で40歳手前の僕の健康診断はオールAの完全体だ。
ミレニアル世代(20代前半から30代後半)の特徴は色々あるが、その一つに合理性が高いことが挙げられる。お酒に対しても合理的に考えるなら
「お酒を飲まない」=「健康を得られる」
「お酒を飲まない」=「支出が抑えられる」
「お酒を飲まない」=「安定した生活リズムの維持」
総じて「お酒を飲まない」=「人生のメリットが高い」
これらは事実としてみんな知ってはいるが一つの価値観としては定着していない。人生のメリットを得るために敢えて飲まないことを選択する価値観だ。
もしもこの新しい考えが一つの価値観として定着してミレニアル世代に波及したら、飲食店も飲まない人に向けたサービスを本腰入れて考え出して実施するのではなかろうか。例えば美味しい肉や魚に合うノンアルコールをしっかりとセレクトして充実させるとか。下戸だけを取りこぼすのとはターゲットの割合が異なってくるはずだから。
そして新しい価値観が生まれ定着したら言われてみたいことがある。
「お酒飲まないんだ? かっこいいですね」
***
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