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長続きするカップルは「2人だけの楽しみ」を見つけることができている


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐藤純平 (ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
池袋の公園でぼーっとしていたら、変なカップルを見かけた。
2人で向かい合って、ニタニタしながら、何やら話をしている。
すごく仲が良さそう。
めっちゃいい感じ。
そう思ってチラ見しつつ、聞き耳を立てているとどうやら様子がおかしい。
 
「違う違う、そうじゃないって」
男性がニタニタしながらそう言っている。
「いや、わかるんだけど、怖い」
女性もニタニタしながら怖がっている……っぽい。
2人は手を繋いでなにやらしている。
イチャイチャしやがってと思ったけど、次の瞬間その考えは吹き飛んだ。
男性は握っていた女性の手をひねって、そのまま倒した。
「こう! わかった?」
女性は芝生の上に転がった。
スカートを履いてるし、まぁまぁおしゃれな格好をしてると思うのだが、そのまま転がった。
コロコロと転がっていた。
でもニタニタと笑っていた。
洋服をパンパンと叩きながら立ち上がると、今度は女性が男性の手を握ってひねった。
「こう?」
男性は、その場に倒れなかった。
「違う違う、こう……」
なにやら違うらしい。
そう言って女性の手をまたひねり返して、倒した。
女性はコロコロ転がる。
「こうして、こうすると、こうなるから、こうするんだよ……」
芝生の上を転がる女性に対して、男性は熱心に教えていた。
 
そんなやりとりがしばらく続いた。
女性は何度も何度も芝生に転がっていた。
男性は何度も何度も熱心に手のひねり方を教えていた。
お互いにニタニタしながら。
ぼくにはまったく理解できなかったけど、なにやら楽しそうだった。
 
たぶんだが、護身術を教えていたのだろう。
身を守る方法だ。
2人がどういう関係性なのかは本人たちに聞かないとわからないが、女性は身長が小さく、細身の人だったから、心配になった彼氏が彼女に対して護身術を教えていたのかもしれない。
正直めっちゃ羨ましかった。
公園にいたどのカップルよりも目についた。
ぼくは友達の男性と2人でビールを飲みながら、パソコンで仕事をしていた。
それはそれで充実してたと思うが、でも悔しいぐらい羨ましかった。
 
だって、めっちゃ仲良さそうだったから。
すげぇ楽しそうだったから。
めちゃくちゃニタニタしてたから。
「幸せ」というオーラみたいなのが2人を包んでいた。
正直「くそがっ!!」と思っていた。
それぐらいカップルとして良かった。
 
なんだ、なにが良かったんだ、あの2人の。
護身術を教え合うようなデートがしたいのかと言われれば、そんなことはない。
むしろごめんだ。
失礼な話だが、護身術には1mmも興味がない。
彼女と護身術をやっても盛り上がる気がまったくしない。
 
でもあの2人のようなデートがしてみたいと思った。
いや、デートではなく、あの2人のような関係性になりたいと思った。
なにが良かったかと言われると、たぶん、「2人にしかわからない楽しみ」を見つけていたのが良かったのだろう。
護身術をカップルでやるのは、一見変わったことかもしれない。
でもあの2人にとっては楽しい時間の過ごし方のひとつだったのだと思う。
護身術が護恋術だったのだろう。
「2人にしかわからない楽しみ」を見つけていると関係性は深まりやすいのかもしれない。
 
自分の恋愛遍歴をたどってみるが、「2人にしかわからない楽しみ」を見つけることができていたことはあまりない。
映画館や水族館、家でダラダラ……一般的なカップルが行くような場所に行き、一般的なカップルがするようなことをしていた。
誰が言い出したかもわからないような「カップルにおすすめの〇〇」を常になぞっていたと思う。
 
2人にしかわからない楽しみを見つけようとぼくはしなかった。
他の人がなんと言おうと、彼女と自分にとってこれは楽しいものだと自信を持って言えるものがなかった。
ただただ定番のことばかりしていた。
 
だからぼくは決まって、女性側から「友達みたい……」と言われることが多かった。
付き合う前と付き合った後で、関係性が変わらなかったのかもしれない。
深めることができなかったのかもしれない。
 
これはカップルに限ったことではないと思う。
家族や友達、仕事の仲間との関係性でも言えることかもしれない。
いわゆる内輪ネタだ。
その人との、そのグループとの関係性だからこそわかる楽しみ。
これがある人間関係は深まりやすいし、仲が続きやすいのだろう。
 
護身術を2人でひと通りやり終え、芝生の上にしばらく座って話をしていたカップルが立ち上がった。
「もう17時か、行こうか」
男性が言った。
「うん」
女性が小さくうなずき、2人は顔を合わせてまたニタニタと笑った。
 
あぁ、やっぱりいい。
くそがっ。悔しい。生温いビールを流しこむ。
「彼女と絶対に2人にしかわからない楽しみを見つけてやる」
そう心に誓った。
とりあえず、まずは彼女を作らねば……がんばろう。
 
≪終わり≫
 
 
 
 
***
 
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2020-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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