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ゴキブリを好きになる「逆転の発想」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:和田素春(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ひょっ!」
僕の口から、出たことのない声が出た。
 
僕は、台所で夕飯のカレーを作っていた。一人暮らし始めて、もう2年ほどが経った。しかし、あいつに出会ったのは、今回が初めてだった。「お散歩、お散歩」といわんばかりのスピードで、僕の足元をテクテク歩いていたのだ。
 
ゴキブリだ。Gだ。ついに、僕の家にもGが現れてしまったのだ。
 
僕は、スリッパを履いていることを確認した。そして、Gに向かって足を振り下ろした。
 
ほとんどの人間は、Gを嫌いだ。
今、これを読んでいるあなたもきっと大嫌いだと思う。
 
僕も例外でなくGのことは、嫌いだ。大大大嫌いというほどではないが、人並みに嫌いだ。
まず、ゴキブリという響きが気持ち悪い。
「ゴキ」という不吉な音に加えて、「ブリ」というカタカナ2文字史上、一番不快な音の組み合わせ。
そして、その上がりすぎたハードルを難なくクリアしてくる見た目。
全てが出来すぎている。フィクションでないとおかしい。
 
しかし、今はもう嫌いではない。むしろ愛おしく思っているくらいだ。
それは、Gへの考え方を変えたからだ。
 
そこのあなたも、この文章を読み終わった時、Gを愛おしく思っている自分に驚くだろう。
Gが好きになる「逆転の発想」を、これからあなたにも、お伝えしよう。
 
Gが僕の家に出たのは、1回だけではなかった。
 
初めて家でGを見た次の日に、もう1匹見たのだ。
僕は、部屋に座ってテレビでバラエティ番組を見ていた。すると、机の上を小さな虫が動いていることに気づいた。
最初はコバエかなにかだと思った。ティッシュでその虫を潰し、ふとその虫を見た。
 
それは、小さなGだった。僕は二日連続で出会ってしまったのだ。
 
そのGは、昨日のよりももっと小さく、まるで生まれたてのようだった。
 
そう思った瞬間、血の気が引いた。
 
すぐに検索サイトを開き、「ゴキブリ 子供」と調べた。
記事には「ゴキブリの子供を見かけたら、家に100匹はいます!」と書いてあった。
 
絶句した。
 
たしかに、どこかでそんなことを聞いたことはあった。しかし、自分の部屋でGを2匹見た上で、この言葉を見ると、全く違う意味に見えた。こんなにも恐ろしい言葉だったのだ。
 
僕は、その検索した指で通販サイトに向かい、ゴキジェットと毒餌を買った。
それで、少し安心はした。
しかし、僕の部屋にGが100匹いるという現状は変わっていなかった。
 
どれだけ、Gグッズが早く届こうと、すぐに現状は解決しないことは分かっていた。
 
だから僕は、Gへの考え方を変えることにした。変えざるを得なかった。
現状を打破する「逆転の発想」を手に入れなければならなかった。
 
そこで、まず第一に、Gはそこまで気持ち悪くないのではないか、よく見たら可愛いのではないかという考え方が浮かんだ。
ウォルト・ディズニーは、ねずみをミッキーマウスにした。
和田素春がゴキブリをゴッキーコクローチにすることも可能ではないか。
僕は「ゴキブリ 画像」で検索をかけた。
惨敗だった。ウォルト・ディズニーもお手上げだろう。
 
次に、Gをペットとして飼っているという発想を使った。ただケージに入れていないだけだ。放し飼いをしているんだと言い聞かせた。しかし、そのペットは僕がいなくても生きていけるし、そいつに癒されることは一生ない。
 
逆に、僕はGに飼われているとも考えたりした。これこそ「逆転の発想」だ。
しかし、家賃払っているのは僕だ。この考え方は無理があった。
 
僕は、途方に暮れた。
 
その時、ちょうどテレビで「借りぐらしのアリエッティ」というジブリ映画が放映されていた。
簡単に映画の説明をすると、人の家で物を借りながら隠れ暮らす小人の家族の話だ。その小人の娘の名前をアリエッティと言うのだ。
僕はその映画を見たことがなかったので、なんとなく見てみた。
 
結論から言うと、その映画をきっかけに僕のGへの考え方は変わった。
 
僕は、映画を見終わった後に、こう思ったのだ。
 
「アリエッティとゴキブリは何が違うのか……いや、同じだ」
 
アリエッティは、人間のティッシュや角砂糖を盗む。
Gも、台所の食べ物のかすや水滴を食べる。
 
アリエッティは、床下に家を作って、家族で暮らす。
Gも、床下に巣を作り、家族で暮らす。
 
アリエッティは、人間に見つからないように生活する。
Gも、人間に見つからない暗闇で、生活をする。
 
このように共通点は多くある。
しかし、どの共通点もアリエッティは「可愛い」に繋がって、Gは「気持ち悪い」に繋がるのだ。開けている扉は同じなのに、正反対の部屋にたどり着くのだ。
 
なぜこんなにも評価が変わってしまうのか。
もう気付いていると思うが、Gとアリエッティには、決定的に違う点がある。
 
見た目だ。
 
どう見ても、アリエッティは、「可愛い」見た目で、Gは「気持ち悪い」見た目だ。
ただそれだけだ。
ただそれだけなのに、その点は大きな壁なのだ。
 
しかし、僕たちは、人を見た目で判断するなと、小さいころから教わってきた。
そして、人を見た目で判断する人を浅はかな人間だと批判することもある。
それなのに、Gになると理屈が変わるっていうのか。そんな勝手な話、許されるわけがない。生きとし生けるものはいつだって見た目ではなく、中身が大事なのだ。
アリエッティのようなきれいな心がGの中に宿っている可能性もある。
 
僕は、見た目で区別しないという芯を生き物に対しても貫く。
貫くことを決めたのだ。
 
でも、どうしてもその芯を貫けない人もいるかもしれない。
そういう人は、アリエッティはGの真の姿だと考えてみてほしい。
アリエッティはなにかの呪いでGのような姿に変えられてしまったのだ。
 
これで、Gへの「逆転の発想」は完成だ。
 
もう、僕たちはゴキブリを恐がる必要はない。
仲良く暮らしていくことが出来るのだ。
 
今日もあいつらは、僕の家で借りぐらしの日々を過ごしている。
そして、今日も僕は100人のアリエッティと眠る。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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