染髪という破壊行動
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記事:万力勇之介(ライティング・ゼミ日曜コース)
自宅のエレベーターに取り付けられている鏡に映し出された自分の姿をふと見て、あるニュースを思い出した。
大阪の府立高校に通う女子生徒が、生まれつき茶髪の髪を黒く染めるよう強要され、不登校になってしまい、大阪地裁に提訴したというニュースだ。
よく読むと、生徒の母親は入学時、生徒の髪が生まれつき茶色いことを学校側に説明。黒染めを強要しないよう求めた。しかし、教諭らは、染色や脱色を禁じる「生徒心得」理由に、黒く染めるよう指導し、さらには「生来的に金髪の外国人留学生でも、規則では黒染めをさせることになる」とも述べたという。
約3年前、このニュースをテレビで知り、詳しく調べた時、私はどうしても他人事には思えなかった。なぜなら、私も生まれつき茶髪だからだ。
私の場合は、幸運なことに学校生活の中で、生活指導の先生などから黒染めを強要されたことはなかった。小学校、中学校、高校と進学していく中でその当時の先生方、もしくは母親が、「生まれつき茶髪なんです。」というようなコミュニケーションを図っていてくれたのかもしれない。当時は何も思わなかったが、現在は感謝している。そういった事がなければ、私も女子生徒のようにどこかのタイミングで、いじめにあったり不登校になってしまっていたかもしれない。
ただ、そんな私も人生において1度だけ黒染めをした事がある。それは、就活していた時だ。
大学を卒業してからも約半年間は就職先が見つからず、若者向けの就職支援事業のようなものに参加させて頂いている時だ。支援員の方に「その髪、黒に染めて来てください。就職したくないんですか?」と言われたので、私は生まれて初めて染髪した。
ドラッグストアでヘアカラーを購入して、母親に手伝ってもらい、言われたその日に染髪したのだが、頭は痒くなるし、ボロボロとフケのようなものも落ちてくるので「2度とやらない」と心の中で誓ったのを今でも覚えている。アイデンティティを完全否定された気もした。
その後、無事に就職し、転職も経験している。染髪もそれ以来1度もやっていないので、私の髪は現在でも光の加減によってはかなり茶色く見える。だが、髪の色についてとやかく言われることはなくなった。ひょっとしたら職種、業種的なこともあるのかもしれないが。
そういった経験をした後に、「黒染め強制」の話題をネットやS N Sなどで目にしたりすると、他人事には思えず、考えること、感じることがたくさんある。
現在でも日本の教育現場、特に高等学校ではファッション、オシャレを目的とした染髪を禁止している学校は多い。それは私も理解できる。学校にはそれぞれ校風というものがあり、それなりの理由があって染髪を禁止しているのだろうと思う。義務教育ではない、ましてや選択権がある高等学校という場では、染髪の禁止を校則に明記していない学校に進学するということは理論上可能だ。学力や経済的な話を抜きにするが、どうしても染髪をしたいというのであれば、そういった学校を進学先に選択すれば良いだけだと思う。
ただし、黒染めを強制するとなると話は変わってくる。私は髪を金色などの他の色に染めたかったという願望はなかったし、周りと同じ黒髪にしたいという願望もなかった。単純にそういうことに興味がなかったし、中学、高校時代は「別にこのままで良いよね。というか、カッコよくない?」というような感じで、別に髪の色に関してはどうでも良く思っていた。あくまでもその髪の色が自分の生まれ持った、母体から授けられた色なのだから、それで良いのであればそのままで良いと思っている。それを規則だからという理由で、同調圧力のような形で黒い髪に変えさせるのはどう考えても理解できないし、外国人にも同じことをさせたら、人権侵害であると感じる。
前述のように私は幸せなことにそのような理不尽な扱いを受けずに済んだが、一歩間違えれば、そういった理不尽な扱いを受けていた可能性は十分に考えられると思う。だから、今回、この大阪の府立高校に通う女子生徒の黒染め強要のニュースを見て、ひどく私も他人事のように思えず、傷ついた。
「別に茶髪になりたくてなったわけじゃないはずなのに、何でこんな酷い仕打ちを受けなければいけないの?」と。
平成、令和と時代が進む中で考え方や価値観が多種多様になったとは言え、まだ決められた枠から外れたものに対しては偏見の目で見られることが多い。そして、無理矢理にでもそういった枠の中に当て嵌めようとすることが横行している学校教育の現場、頭髪に限らず、外見でその人の内面の全てを決めつけてしまうような風潮。私もまだ、そういった見方が正義なのだと感じている時が多々ある。自分も下手したらそういう偏見の目で見られていたのかもしれないのに。私と同じような境遇の方々が精神、身体の破壊行動に映らないことを願いつつ、僅かに茶色い、鏡に写った自分の髪を見て大阪の女子生徒のことを思い出した。
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