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ドラえもんが非常袋に忍ばせたもの


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:晏藤滉子(ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
 
 
「あるよ♪」
かつての職場で「備えあれば憂いなし」を地でいっているような先輩がいた。
 
ねじ回し、ペンチ、軍手、何でも切れてしまうハサミ、特殊な文房具等々。
仕事中に「まさか持ってないですよね?」と話を振ると、必ずのように「あるよ♪」と何気にカバンから出してくれる。まるでドラえもんのような人だ。ドラえもんのポケットのように、先輩はバッグから色んなものを出してくれるのだ。
 
「だって、何かあるかもしれないでしょう」と先輩は当たり前のように言うが
毎日のことだ・・・・・・当たり前ではない。
 
私は興味深々で「一体何を持ち歩いているんですか?」と根掘り葉掘り聞いてみた。
 
先輩は「普通だよ♪」と笑いながら教えてくれたが、それらは全然普通ではなかった。ナイフ内蔵のサバイバルツール、救急用の三角巾、非常用ホイッスル、携帯ハンマー、ペンライトなどゾロゾロ出てくる。まるで非常持ち出し袋のマニュアルのようだと感心したものだ。
 
そして何より不思議な事は、先輩が持っているバッグはいたって普通のサイズ。
私だったら、日常の持ち物で丁度よいくらいの大きさだ。
そのバッグの何処にどうやって収めるのだろう?
 
「先輩はドラえもんみたいですね。ポケットから何でも出てくるし」
冗談めかして言ってみたものの、先輩のバッグは正に「ドラえもんのポケット」なのだ。
 
いつだったか、職場で災害時の備蓄の話題になったことがあった。
地震、台風、豪雨など日本に住んでいれば100%安全な場所はないだろう。
だから普段の備えは必須と言われている。ただ、この「備え」に関しては性格が出るものだ。正直、完璧を目指す事は難しい。
 
備蓄のマニュアルに沿って用意し季節や消費期限に応じてこまめに入れ替える
ことが理想だと頭では分かっている。でも、危機感が薄れた頃にはチェックを忘れ、非常食が「食べたら危険」になっている場合だってありがちだ。
 
水や食料、日用品、スマホの充電器など基本的なものは揃えていても、不十分な気になってしまう。考えれば考える程、あれもこれも必要とキリがない。
それに、自宅で被災するとは限らない。外出先の場合「丸腰状態」に近いものだ。備えは遠足や旅行の準備とは違い、当然ながら楽しい作業ではない。
公の備蓄マニュアルに目を通しても血の通った情報と感じられない。どこまで備えるのか・・・当時の私は落としどころが見つからなくなっていた。
 
そこで、ドラえもんポケットを持っている先輩に質問してみた。
「きっと、ご自宅の備えは完璧でしょうね。これはオススメというものありますか?」 ここでも「えー、普通だよ」と返されるが、いつも普通じゃないよねと私は心の内でツッコミをつい入れてしまった。
 
ドラえもん先輩曰く、食料はもちろん水は数か所に分けて、枕元にはスニーカーと非常袋、車の中にはハンマー等々、流石のラインナップだ。生きた情報は参考になる。
 
「それとね……トランプ♪」 それは意外な答えが返ってきた。
 
トランプですか……?
 
先輩曰く「だって、避難所とか普段と違う生活だと気持ちがピリピリムードになるじゃない。時間が経つのも遅く感じるだろうし。そんな時の為にトランプとか良いかなと思って」
 
本当に先輩はドラえもんのようだと思った。
 
備えというと食料や日用品などが定番だし、確かにそういうものだ。
でも、非常時こそ緊張を紛らわすようなものは必要に違いない。
 
物だけでなく心を落ち着かせるために。
 
平時の生活では、物質や環境によって気分を上げたりリラックスをもたらしたりするものだ。美味しいスイーツを自分のご褒美にしたり、気分転換に映画を観に行ったり、自然に癒されたり。人それぞれの手段を持っているものだ
 
それが出来なくなった時……。今年のコロナ禍においても、いつもの当たり前がそうでなくなる経験をしている。心が乾いてくるし、攻撃的にもなる。いつもの自分でなくなることだってあるだろう。
 
きっと、非常時こそメンタルの安定は必要だ。
少しでも気が紛れたら……そんなドラえもん先輩の配慮には感心しきりだ。
 
命を守る為、水や食料などの必需品はもちろん必要だけれど、もしもドラえもんがいたら防災袋の中にトランプをそっと忍ばせるような気がする。
どんな時ものび太君が、のび太君らしくいられるように願いながら。
 
大変な時に心が緩むように、文字通りの「備えあれば憂いなし」。
そこから我が家の非常袋に「トランプ」と「あやとりの紐」が仲間入りした。そして、如何にも非常食という類のものから「自分が普段から好きで保存できるもの」にタイミングをみて入れ替えをした。どんな時でも自分がホッとできるような物と触れ合えるように。そんなことを考えながら用意をしていると、血の通わないと決め込んでいた備蓄マニュアルに温かさを感じるようになる。
 
そうは言っても、いつどんな状態が起こるのかは分からないものだ。命が最優先になるのは間違いないこと。トランプは使われないことだってあるだろう。
でも、温かい思いを込めて忍ばせるトランプは、きっと心の支えになってくれるだろう。
 
「少しでも気が紛れるように……きっと大丈夫だよ♪」
ドラえもんからの「お守り」として、トランプは非常袋に忍ばせておきたいもののひとつとなったのだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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