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熟成は人生も美味くする。

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熟成は人生も美味くする。
 
記事:宮下 陽平(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
熟成と聞くととても美味しそうに感じる。最近では熟成肉が話題になったし、味噌は日本が世界に誇る発酵食品でもある。一晩寝かせたカレーはどうしてあんなに美味しいのだろうか。
 
私は新型コロナウイルス感染症による世界的な自粛期間での長期休みによって、以前より毎日の生活が楽になった。人生観が変わった結果だ。自分がいかにこれまで我慢していたかを思い知った。そして自分を見つめて、考え方を見直すことになった。
 
その中の一つに【もっと感覚を大切にして生きよう】 というのがある。
 
例えば、スーパー銭湯に行った時のこと。露天風呂に浸かった後に涼んでいると、体に風が当たる。心地よい。
サウナに入る。熱気を存分に堪能した後、水風呂で一気に体を冷ます。頭が真っ白になり、澄んだ空間になる。
自宅での夕食時、目の前に並んだ料理。おいしそうな刺身、サラダ、浅漬け。そしてコップに注がれたビール。まずは喉を鳴らしてビールを流し込む。習慣でサラダを先に食べる。そのあとは自由に舌触りや味覚を感じる。
不思議なことに感覚に集中しているときは、“今” しか感じていない。
未来の心配もしていないし、過去の反省もしていない。
ものすごく心地よくて幸せを感じる。
 
自粛以前の私は“思考偏重” だった。子供の頃を思い出す。
 
教室で先生が他の生徒を叱る。その光景を見ていると、まるで自分が叱られているような気持ちになった。自分はそんなことはしないように誓った。
できるだけ失敗しないように、できるだけ叱られないように。
それでも、子供だから、パッと思いついて行動したこともあった。
それがたまたま上手くいかなかった時がある。
 
「よく考えて行動しなさい!!」
「なんでそんなことをしたの?説明して?」
 
そんな時に言われた気がする。感覚、直感で行動したのだから、上手く説明できない。言葉にできない。けれど、何度も理由は?と問われる。強引に言葉にするけれど、しっくりこなくてごまかしているのだと思われる。
 
人に対して、うまく言葉にできないことは、ダメなことだと劣等感を持つ。自分がダメな気がしてくる。感じても徐々に無視するようになる。そうなると、気持ちが置いてきぼりをくらう。
 
大人になるにつれて、徐々に自分の感覚を信じられなくなった要因の一つだと思う。私の性格は、「石橋を叩いて渡る」 ではなく、「石橋を叩いて叩いてなおも叩く。そして渡るかどうか考える」 性格になっていたと思う。
 
結局、行動しなくなったのだ。ただし、どうしても挑戦や行動しなければならない時もある。そんな時は些細なことでも、それこそ「清水の舞台から飛び降りる」 ような勇気を持って臨んだ。
 
常に思考はフル回転、頭脳派みたいで格好良く思われるかもしれないが、何のことはない、単にぐるぐる回っているだけだ。何をするにしても、説明できるように理由を用意しておく。単純に責められるのが怖かっただけだ。
 
思考に偏って、今だけではなく過去の反省や未来の心配に労力を割いていった。お風呂に入っている時もご飯を食べている時も、思考は過去と未来を行ったり来たり、温かいお湯に包まれた時の気持ちよさも火照った体を冷ます時の気持ちよさも、ビールの喉越しもねっとりとした刺身の口当たりも、思考にかき消される。
 
感覚は、自分が今どんな状態なのか、疲れているのか元気なのか、リラックスしたいのか。また何が好きで何が嫌いなのか。どうしたいのか。本来の自分を知るためのサインだと思う。
 
対して思考はアイデアを具体化するには必要なものだと思う。PDCAサイクルのように、計画して実行して評価して改善するといった一連の流れを行うには欠かせない。
 
感覚と思考はどちらが欠けても物事が進まなくなる。どちらか欠けて偏ってもまっすぐ進まないし、傾いてまっすぐ立てなくなってしまう。
当時の私は、感覚を押さえ込んでしまった結果、あまり愉快ではない時を多く過ごしてきたと今になって実感する。
 
社会人として仕事をするようになってから顕著になったが、常に何かしらしていないと効率が悪いと考えるようになっていた。何もしていない時間に対して罪悪感すら感じるようになっていたから、休まざるをえない日々は、人生のターニングポイントになったのだと感じる。
 
何もない時間は貴重な時間だったと思う。たっぷり“寝かせて” もらった。私の人生は味わい深いものになった。熟成は人生も美味くする。それは私にとって確実なものになった。
 
今日の夕食ではネギのたっぷり入った味噌汁が飲みたくなってきた。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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