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最強おうちチャーハンへの道 ~チャーハンを、再発明する。~


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最強おうちチャーハンへの道 ~チャーハンを、再発明する。~
 
記事:フジタシン(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
私はチャーハンが好きだ。
特に、家で作る「おうちチャーハン」が好きである。
 
これまであくなき探究心をもって、おうちチャーハンを作り続けてきた。
その結果として、現時点での最強チャーハンに至った経緯をご紹介したい。
 
私のチャーハン作りの歴史は、貧乏一人暮らしの大学院生時代から始まる。
 
当時、バイトをするくらいならその時間を勉強や研究に充てたくて、収入は奨学金と実家からの仕送りだけで、なんとか生活をしていた。
毎月、実家からはダンボールが送られてきて、そこにはお米が5キロと、「チャーハンの素」が入っていたのだった。
 
永谷園の「チャーハンの素」は、たいそう便利な商品である。
当時、料理をほとんどしたことがなかった私にとって、大変ありがたいものだった。
 
フライパンに油を引いて、熱し、
溶き卵を流し込み、混ぜて、
米を投入し、混ぜて、
そこに「チャーハンの素」を入れて、混ぜて、
少し炒めれば、完成。
絶対に美味しくチャーハンを作れる魔法の素だった。
 
しかし、私は若かった。
止せばいいのに、そのチャーハンをよりおいしく改造する方法を研究しはじめてしまった。
この若気の至りから、私のチャーハン研究の道が始まった。
 
まず、よりジャンキーな味を目指して、ニンニク・豆板醤を多めに加えた「スタミナ・チャーハン」を考案した。
 
結果、大成功だった。
しかし、まだまだチャーハンの研究は止まらなかった。
 
ご飯と卵が上手く混ざらないのは、卵が足りないからだと考えた。
ご飯と混ぜて卵でひたひたになった濃ゆい卵かけご飯をつくってから、それを軽く炒める手法を思い付いた。
こうして「スタミナ・ドロドロ・チャーハン」が発明された。
チャーハンがパラパラご飯であるべきなんて、誰が言ったのだ?
 
さらに、焼肉のタレとニンニクチューブで味付けした豚バラ肉を加えてみた。
「超☆スタミナ・ドロドロ・チャーハン」の完成だ。
これは本当に旨かった。
 
西東京のアパートの一室で、チャーハンは訳の分からない進化を遂げたのだった。
当時は、これが最強のおうちチャーハンだと思っていた。
 
しかし、このチャーハンは恐竜のごとくある日突然絶滅へと追いやられてしまった。
それは「昼食にチャーハンをつくってほしい」と、妻に頼まれた時だった。
 
妻はニンニクが苦手だ。
しかも、当然パラパラなチャーハンが出てくると思っているだろう。
そこに「超☆スタミナ・ドロドロ・チャーハン」が出てきたら絶望してしまう。
 
そこで僕は、ニンニクを使わず、卵と肉を一般的な量まで減らしたチャーハンを作った。
なんの変哲のもない、なんとも素朴なチャーハンを作ってしまったものだと思った。
 
しかし、妻には大変好評だった。
「おいしい! ご飯と卵がうまく絡み合って……。どうやって作ったの?」
 
どうやら、「スタミナ・チャーハン」を「スタミナ・ドロドロ・チャーハン」に進化させる工程で、”卵とご飯を先に混ぜてから炒める”という手法を無意識に開発していたのだ。
後で知ったのだが、火力が低い家庭用コンロでは、卵とご飯は先に混ぜてから炒めるほうがパラパラに仕上がるのだという。
 
思いがけず褒められた僕は、調子に乗った。
これからは本格的なチャーハンを作れるように技術を磨いていこう。
チャーハンはパラパラの方がいいに決まっているではないか!
 
チャーハンの素は素晴らしい商品だが、卒業した。
具材は、ネギやベーコン、シーフードミックスなどを使い、味付けは塩・胡椒、中華出汁、醤油を基本とした、一般的な「おいしいチャーハン」作りを目指した。
 
火力は強めに、ときおりフライパンをあおりながらパラパラになるように炒めていく。具材は小さめに角切りにして最後のほうに混ぜる。ネギや葉物の野菜は1番最後に加えて少し炒めればよい。
 
時折、バターやウスターソースを使った変わり種チャーハンも作った。
 
妻は毎回褒めてくれた。
しかし、僕はだんだん自分の腕に限界を感じていた。
 
“このままでは、これ以上チャーハンを美味しくすることはできない……。”
 
そう思っていた矢先、日本テレビの朝の番組「スッキリ」を見た僕は、革命的なチャーハンの作り方を目の当たりにした。
 
番組の企画で、水卜アナウンサーが代々木上原の有名店「sio」のオーナーシェフである鳥羽周作さんにチャーハンの作り方を教わっていたのだが、それが私の考えるこれまでのおうちチャーハンの常識をまるっきり覆す方法だった。
 
それは「万能お米」を炊くというものだった。
 
「万能お米」とは、生米と鶏出汁、醤油、油を混ぜて炊飯器で炊いたものだ。
これで出汁と醤油の味が染みこみ、油でコーティングされたお米が炊き上がるのだ。炒める前から完璧なパラパラご飯が確定する。
 
僕は番組を見たその日の昼に、万能お米を炊き、チャーハンを作った。
すると、信じられないほどおいしいチャーハンがあっさりと完成したのだった。
 
これは本格的なチャーハンとしてお店に出してよいレベルだ。
遂に、おうちでできるチャーハンとして、最強レベルまで達したと感じた。
 
皆さんもぜひ、「万能お米」を使ったチャーハンに挑戦してみてほしい。
本当においしいから。
 
さて、そんな僕の最強おうちチャーハンへの道は、終わったのだろうか。
いや、そんなことは決してないはずだ。
 
我がおうちチャーハンはこれまで進化をつづけてきた。
これは、携帯電話のような歴史だ。
 
最強のチャーハンを目指し、味を足しまくっていたらいつの間にかガラバゴス化していた。
伸び悩んだところに「万能お米」という破壊的イノベーションが起こったことで、また一段階上の美味しいチャーハンになった。
万能お米は、携帯電話業界におけるスマホのようなものだ。
 
これまで、こんなにたくさんのチャーハンを作ってきたにも関わらず、なぜ「万能お米」を発明できなかったのだろうかと悔しい思いがある。
 
iPhoneを生み出せなかった日本企業のようではないか。
 
今度は、必ずや僕が「万能お米」を超える、革命的な何かを発明し、
おうちチャーハン界に次なるイノベーションを巻き起こすのだ。
 
「おうちチャーハンを、再発明する。」
 
キャッチコピーだけは先に作っておいたので、楽しみにしていてください。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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