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自粛期間中のマストアイテム 「鬼を滅する物語」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:北 花音(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
カラスが「かぁ、かぁ」と鳴けば、
「ほら、鳴いてる!」と思わず家族の誰かに言う。
あぁ、きっと、何かを私たちに伝えようとしてくれているな……。
 
新型コロナウィルスの影響が世界中に広がりを見せ始めた頃、流行に疎い我が家にもその波は突然にやってきた。
 
それはスピード感を持って日常に入り込み、私達家族を「不安」から守ってくれていた、と振り返って思う。
まるで、あっという間に社会全体のマストアイテムとなった「マスク」のように。
 
「コロナでしばらく休校になるって」
「家にいる時間長いし、あれ、買ってあげよう。この際全巻いっぺんにいっちゃおう!面白いらしいよ」
夫は娘と一緒に盛り上がり始めた。
 
仕事を辞めたばかりで、ふところ事情を心配し始めていた私。
「え!いきなり20巻もまとめて?贅沢!レンタルでよくない?」
虫の居所が悪かったのも重なり、噛みつくように反対した。
 
「じゃあ、とりあえず途中まで……」などと中途半端な購入となったが、
ついに、あの大ブームを起こしている「鬼を滅する物語」の漫画本が我が家にもやってきたのだった。
 
私は、と言えば、そのすったもんだがあったせいで素直に「読んでみようかな」と言い出せず、
夢中に読み進めている夫と娘を横目で見ていた……。
 
それが、なんと、わずか数週間後……!
他の誰でもない、私が、続きの巻を求めて3軒の書店をはしごしていた!
特設コーナーはもぬけの殻。入荷予定日を店員に確認し、予約を入れている、私。
 
ネットで注文する、という当たり前の選択肢を忘れるほどの勢いは、今思えば赤面ものだ。
「今すぐに手に入れたい」「あの書店にはあるかも」と鬼に取りつかれたかの如く車を走らせていたのだった。
 
夫、娘、私、長男、次男と次々に夢中になった。そして私の母、叔母にも貸し出された。
その漫画本はあっという間に折り目がつき、手になじむ代物となった。
 
先が見えない不安な社会情勢。長い休校生活。
緊急事態宣言という、かつて経験したことのない、社会と切り離されたような錯覚に陥ったこのコロナ渦。
21巻あるこの本が、いつも家のどこかでページを開かれ、誰かがその世界に入り浸っていた。
 
欲求不満になって激しさを増す兄弟げんか、外に出られず、仕方なくも陥るゲーム三昧の時間、
ストレス解消といえばユーチューブを見て皆で体操をするしか思い浮かばない……そんな日常の中、
この漫画本が優しく救いの手を差し伸べてくれていたと感じる。
ワクワク感とひと時の現実逃避の時間をくれ、皆で心通わせながら会話をするきっかけを作ってくれていた。
 
我が家にとって、まさにマスクのごとく、自粛期間中のマストアイテムだった。
 
我が家以外でもその感染は、当然のように広がっている。
日本中に、いや日本を飛び出して蔓延している。
 
時は、大正時代。大切な人の仇を打つために鬼をやっつける、という物語。
 
素質のある強い者たちが鍛錬を重ね、協力し合い、鬼という悪に立ち向かう。
魅力的な主人公はじめ、様々なキャラクターの生い立ちや生き様がとても丁寧に描写されている。
熱くなる場面も、コミカルな場面もほどよく織り込まれ、幼児から大人まで、幅広い読者の心にするりと入り込み、いつしか没頭させられている。
 
我々家族にも、それぞれにお気に入りのキャラクターがいる。そのどこが魅力なのかを話し合い、
「あの場面はこういう意味だよね」と自分なりの分析を披露している。それが楽しい。
 
また、各キャラクターが、自己決定し行動していく強さと共に、羨ましい程の自分らしさを持っている。
「自分のやるべきことを自分なりのやり方でやるのみ」と、迷いのない姿が尊く、魅了される。
まさしく王道といわれるストーリー展開だが、どこか懐かしいような感情が胸に去来し、それが心に染み入るように居座る。大人である私達も夢中になる。
 
最近ではアニメにも手を出した。
今日も、難解な漢字の羅列である、憧れの「技」の名前を、九九を覚えるがごとく暗記し、早口でまくし立てている弟達を横目に、長女は好きなキャラクターのイラストを描き始める。
その完成度の高さに「新たな才能の発現か?」と親バカは喜んでいる。
 
そして、気になってきたのがカラスだ。
物語の中で、鬼をやっつけに行く時の道しるべとなってくれる「カラス」に、現実でも目を向けている自分に気づき、新鮮な気持ちを味わっている。
時には鳴き声から、何かしろのメッセージを受け取ろうとし、独り言のようにカラスに話しかけている私は完全なるキメツ病患者だ。
 
電線の下にうっかり駐車すると、愛車にふんを落としていく、カラス。
生ごみをつついてひどい目に合わせる、カラス。
少し前まではただ、憎むだけの存在であったはずが、今ではこう思うようになった。
「カラスにも生きる理由がある。彼らなりのやり方で命を燃やしているのだろう」
 
私も自分なりのやり方で、命を、そして心を燃やして生きていくのみ、なのだ。
 
大好きなこの物語から、そして全くのわき役であるカラスから、得た教訓だ。
 
あ、また鳴いている!
 
「かぁ、かぁ、次の巻の発売日は10月某日。クライマックスに向かい、大きな山場!走れ!書店へ。かぁー」

《おわり》
 
 
 
 
***
 
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2020-09-13 | Posted in メディアグランプリ

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