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人はなぜ成功より失敗からより多くのことを学ぶのか


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人はなぜ成功より失敗からより多くのことを学ぶのか
記事:河内愛子(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
<以下本文>
 
「失敗は成功の母」という言葉がある。
人間は失敗を経験することによって思考や手法が洗練され、成功に近づくことができるという意味だ。
 
この言葉が使われるのは、おそらく自分自身を含む誰かが失敗をしてしまった時、それを慰めたり労ったり、次のトライを奮起させたりする場面が多いのではないだろうか。
しかし、ある意味フォローのようなこの言葉の使われ方に私は違和感を抱いている。何故なら、時に「失敗」には「成功」よりもはるかに有益な要素が含まれていると思うからだ。
 
太宰治「人間失格」の、「恥の多い生涯を送って来ました。」というモノローグはあまりにも有名だが、恥や失敗のない人生を送る人間はまずいない。(起こった事象を「恥」ないしは「失敗」と捉えるかどうかは各人の感覚に依存するのではないか、という意見があるだろうし、私もそれについては大いに賛同したいところだが、ひとまず「一般的な感覚」の話として読み進めていただきたい)
私も産まれてこのかた、大小問わず数限りない失敗を積み重ねてきた。
 
小学生だった頃のある日、ホットケーキを焼こうとしたことがあった。ホットケーキミックスの箱には「フライパンを熱したら一度火から下ろして濡れ布巾に当て、その後弱火にかけてたねを焼くこと」と書かれていた。
私は「早く作ってできあがりが見たい!」という気持ちが抑えられず、フライパンをガンガンに熱してさっさとたねを流し込んだ。しばらくすると表面にぷつぷつとした気泡が現れてきて、私は期待に胸を膨らませながらフライ返しでそれをひっくり返した。
そこには黒いフライパンの色が移染したかのような焦げた物体が、「当たり前だろ」とでも言いたそうに私の間抜け面を呆れた顔で眺めていた。
 
高校受験では「テストは設問1から解くのではなく、まずは簡単に解ける問題から手をつけよ」という鉄則を本番で見事に忘れ、時間配分を誤って第一志望校に落ちた。
人と議論になった時には、意見を異にする相手に対しことごとく正論で逃げ道を塞いでやり込めることにサディスティックな愉悦を覚え、その結果友達を失った。
……だんだん胸が苦しくなってきたのでこれ以上は割愛するが、過去40年以上にわたってまあ色々とやらかしてきた自覚はある。
 
しかし、これらの失敗は非常に多くの知識や経験を私にもたらした。
弱い火力で長い時間加熱すれば、具材の表面を焦がすことなく中まで火が通ること。ぬるま湯に長くつかると体の芯までよく温まることや、低温やけども同じ原理で起きるということ。
デッドラインを同じくする複数のタスクが与えられた場合、一度全てのものを洗い出し、こなしやすいものから優先順位をつけて片付けていくと作業効率が格段に上がるということ。
正論をそのままぶつけても相手の考えを変えられないどころか、むしろ禍根しか残さないということ。ひとたび損なわれた関係性を修復するのは至難の業であること。
 
もしホットケーキ作りや高校受験や人との議論がすべて「成功」に終わっていたら、こうした幅や奥行きのある気づきは得られなかっただろう。
言うなれば「成功」とは、望んだ結果に至るまでのプロセスのうちの一つを歩んだだけに過ぎない。そこには幅も奥行きもない、ただの一本道しかない。厄介なことに「成功」はそのことに気付きにくい。「成功」は「さらに良い成功」を隠してしまうからだ。
 
「失敗」のそもそもの良さは、嫌でも様々な面から向き合わざるを得ない点にある。
売上が悪ければ原因を考える。商品が良くないのか。価格が高いのか。店の立地が良くないのか。広告宣伝が足りていないのか。自分たちの会社だけでなく、ライバル社との比較もするだろう。顧客のニーズをもっと知らなくてはならないとも思うだろう。
しかし、売上が良い時にその理由を精緻に分析しようとする人はなかなかいない。「今現在うまくいっているのだから」という根拠のない自信に寄りかかり、一体何が良くて売上が上がっているか考えることをおろそかにしがちだ。するといざ売上に陰りが見えてきたという時にリカバリーができない。好調だった売上を再現する術を知らないからだ。
 
「失敗は成功の母」という言葉は、「人間万事塞翁が馬」のようなおとぎ話とは本質的に異なる。
何らかの意思を持って行動を起こしたものの、思い描いていた景色とは別の事態に対峙し、しかしそこから逃げることなく愚直に取り組んだ者にだけ与えられる大いなる実りなのだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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